花百姿まとめ

#花百姿で書いている、ツイノベ×花の写真の花小説のまとめです。
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みお @miobott

#twnovel 不気味な娘よとあざ笑われた女はある日燃えるような赤となった。体に毒を蓄え体は恨みの赤に染まる。しかし生きよと囁く天の声に彼女の瞼は明るく冴える。天に伸びた赤の手は仏の腰掛ける蓮の花に似て、いつか曼珠沙華の異名を得る。 pic.twitter.com/qpjDU3X2ik

2015-09-23 20:00:23
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みお @miobott

#twnovel その種に惹かれたら危ないよ。種売りの老婆は歯のない口で笑う。ならば何故売るのだと聞けば彼女は帽子を取り払う。女の頭に生えるのは、開花間近の青の花。「種に惹かれる娘を探してるんだよ」目前の種が私を見た。割れた種の奥、生え揃う美しい歯。見た途端、私は突如恋に落ちる。

2015-09-21 21:26:21
みお @miobott

#twnovel 愛していると私の中に声が響く。好きなのに君の血肉を求めずにいられない。成長を止められない。彼は泣き叫ぶ。私はそのたびにぞくぞくと嬉しくなってしまうのだ。「私も愛してる」彼は私に寄生した花の種。早く私を突き破って芽を出して。きっとこの世で一番美しい花になるだろう。

2015-09-21 21:42:16
みお @miobott

#twnovel 少女に寄生する花があると噂があった。少女の体内に入り込み養分とし、花を咲かせる。さながら冬虫夏草のようなものか。初めてその犠牲者を見つけた私は言葉を失った。そしてその少女を人知れず埋めた。被害彼女は余りにも優しく微笑み花は彼女を守るが如く咲き誇っていたのである。

2015-09-21 21:34:51
みお @miobott

#花百姿 夜に祭が行われるのはそこに神が降りたつからである。赤い鳥居に誘われて、ふわり舞い降りた神は悪戯心に熟した鬼灯を放り投げる。膨れた実は次々と本宮へ連なる提灯となり、やがて朱の道が完成した。「ゆるりおいでませ」狐面の神が笑う。 pic.twitter.com/VCpP65fnEB

2015-07-12 23:26:32
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みお @miobott

#花百姿 自らを鬼灯と名乗る女を手酷く捨てたのは確か夏の始まりの頃である。そのような事、すっかり忘れた数年目。新しくできた女を連れて、稲荷の祭りへ向かえば不意に朱の提灯が私に語りかける。「お見限りですね」それはかの女と同じ顔で笑った。 pic.twitter.com/pvEwVtxqHU

2015-07-12 22:09:01
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みお @miobott

#花百姿 花に付く水は甘露だと、男は笑って言った。その口がぱくりと割れて長い舌が宙を舐める、蠢く、やがて花に垂れた滴を舐める。「長生きの秘訣よ」そういって目を細めて笑う男は長い身体を揺らして花の隙間に消えた。成る程あれが蛇の神である。 pic.twitter.com/TE0XLJ7GPI

2015-07-08 23:38:37
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みお @miobott

#花百姿 桜に囚われた哀れな女の鬼よと男は女に刃を向けた。そんな男の顔には鋭い牙と額を割った二本の角。俺は狂うてなどいないのだと振るう刃は鬼の刀。裂けた女の体から桜の花弁が舞うを見て男ははじめて嗚咽をあげた。ただ、目前に残るのは立ち枯れた姥桜一本。果たしてどちらが鬼であったのか。

2015-03-27 21:34:16
みお @miobott

#花百姿 春呼びの甘い香りが私を誘う。堪らず口を寄せれば彼女は細い肢体を紅く染めた。尖った目紅の端に露を浮かべて恥ずかしげに顔を伏せる。「不細工でしょう私は」オカメなんて名前ですもの。と照れて揺れる彼女は春を待ちきれず咲くオカメ桜。呼ばれた私は目白。彼女の紅が私の緑羽に重なった。

2015-03-10 22:58:14
みお @miobott

#花百姿 光に透ける紅色淡い薄衣。一本の枝に寄り添い、そうっと蕾が綻ぶ所に暖かな光が差した。青空を好んで咲く河津桜は、ソメイヨシノに先立ち春を告げる花である。丸みを帯びた愛らしい花弁が風に揺れると、冬の終わる音がした。 pic.twitter.com/xniSGDUPqn

2015-03-11 00:18:24
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みお @miobott

#花百姿 梅の花は笑うのです。春が来た喜びに笑うのです。女がそんな風に言うものだから、私は思わず梅の花を凝視した。なるほど、春風にそっとほどけた姿はまるで童女の笑みのよう。しかし春を告げて微笑む梅は、桜の登場を待たずに早春の風に散って行く。そう思えば、なんとも悲しい笑みである。

2015-03-17 23:59:09
みお @miobott

#花百姿 白の肢体が春風をはらみ、膨らんだ花弁は青曇りの天へと手を差し伸べた。注ぐ日差しは熱を含んで暖かく柔肌を優しく撫でた。それは桜に先んじ花を付け桜を待たず散る哀れな花。木蓮と響くその花は、散る定めとも知らず無邪気に春を呼ぶのだ。 pic.twitter.com/mA8WZjjUFj

2015-03-21 21:28:32
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みお @miobott

#花百姿 線の細いあんな女がお好みでしょうか?どうぞ目を覚ましてくださいまし。私の方があんな女よりずっといい。早春の青空に映える赤の裳裾に甘く煙る香りの筋、きっと誰より美しい私の横顔。邪祓いの清廉たる枝を持つ、私の名を桃と申します。 pic.twitter.com/qINRjFkBbl

2015-03-21 22:15:05
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みお @miobott

#花百姿 「さようなら」薄曇りの春空に向かって、女は呟く。「さようなら」寂しげな横顔だ。雨神である私が雨を降らせば春が来る。何が悲しいのだ。問いかけ降らした小雨に触れて、儚い花弁が二枚三枚散って行く。嗚呼。彼女は名残の梅の女である。 pic.twitter.com/S1PxgdJXl6

2015-03-21 22:23:18
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みお @miobott

#花百姿 梅の散る様は桜と異なりずしりと重く、早春の雨に浚われるよう落ちていく。そんな梅を哀れといって泣いた女は、春先、流行病に浚われた。花が散るのは毎年のことであるのに、今年の春は香りが強いようだ。それは私の袖に染みついた祈祷の香が、梅の香と混じっていつまでも涙を誘うのである。

2015-03-21 23:36:43
みお @miobott

#花百姿 流行病で儚くなった私の前にも春は巡ります。散る梅の花は甘い香りをまき散らし、早春の青空を染めました。かつてはその様を哀れと泣いた私ですが、今年のそれはひどく綺麗に映るのです。ただ、私の為に泣く人のため香だけは残して参りましょう。恋しい時に私を思い出していただけるように。

2015-03-21 23:47:23
みお @miobott

#花百姿 まるで花弁の滝だ。早咲き枝垂れの桜の木は、ただ一本満開の花を付けた。早く花を付ける桜の木には女の情念が詰まっているのです。女の恨みを買った御仁は特にご用心。妖しい囁きに顔を上げれば花弁の向こうに手酷く捨てた女の笑みが見える。 pic.twitter.com/v63VeZqxYt

2015-03-21 23:57:35
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みお @miobott

#花百姿 私を呼ぶ声が日に日に増えて行く。暖かい日差しが私をゆするように撫でる。もう少し、もう少し眠っていたいのだけれど、呼びかける声が私の眠りを妨げる。「もうすぐね」跳ねるような少女の声に私は幸福の微睡みを諦め、固い蕾を少し開いた。 pic.twitter.com/ShrMw77rpA

2015-03-22 00:18:10
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みお @miobott

#花百姿 雨でも降り出しそうな曇天の下、不意に誰かが傘を差し出す。おや親切に、と顔を上げてみれば今が盛りの桜の一枝。「これは愛らしい傘であることだ」呟けば、花が照れたように花弁を朱色に染めた。 pic.twitter.com/69m6AnJqgA

2015-04-04 21:05:08
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みお @miobott

#花百姿 いつか桜の咲く頃にお会いしましょう。その約束は果たされる事のないまま幾年。待ちわびた私の身は儚く、気がつけば一羽の鳥になっておりました。今や春が訪れる都度桜の枝の上、ほろほろ鳴く私を見上げて人はさても春らしいと笑うのです。 pic.twitter.com/LzIv6KmmR5

2015-03-29 20:19:59
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みお @miobott

#花百姿 季節外れの白雪が降った。しかしよく見ればただの桜。そうだもう季節は春、雪など降らぬ、そう安堵し目を閉じる私の上に冷たいものが降り注ぐ。「私を忘れるなど薄情な方」それはかつて私が手酷く捨てた雪女。桜は白雪に変わり私に降り注ぐ。 pic.twitter.com/7hfMoxz9ec

2015-03-29 20:29:13
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みお @miobott

#花百姿 清らかな残り香を持つ彼女とは、いつもすれ違うばかりであった。今年こそ顔を見てやろうと一足早く早春の庭へ。待ち構えた私に驚くように彼女は一気に花開く。私は初夏、彼女は桜。けして触れ合えない私の前で、彼女は精一杯の花を付ける。 pic.twitter.com/GBKxw2njMy

2015-04-04 20:56:44
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みお @miobott

#花百姿 淡桃の着物に紅の裳裾、新緑色の羽織をまとうその娘は、朝にだけ姿を見せる。どこの娘と問うて見ても、彼女は顔を伏せ姿を消した。後に残るは写経の一文。のちに彼女が花の娘だと知った菩薩は、極楽浄土にその花をそっとお植えになった。 pic.twitter.com/Cgpnsav8cb

2015-07-05 21:45:22
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みお @miobott

#花百姿 放っておいても儚い命だというのに、今宵の雨は無粋にも私に酷く降り付けます。愛しの月は雨曇りに隠されてお会いする事さえ叶わずに、私はほろほろ涙を零します。零れた涙は桜の花弁となり、苔むした地面に散って春の終わりを告げるのです。 pic.twitter.com/0DsmUJUZgO

2015-04-04 22:08:15
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みお @miobott

#花百姿 藤の花が放つ甘い香りは人の腐る香りと似ているのだ。その女は悪い冗談を言ってその愛らしい口を押さえてほほと笑う。この綺麗な花のどこに人の死体があるものか。強がった私に不穏な風が吹く。振り返れば女は消えて、そこに巨大な藤の群生。 pic.twitter.com/cGOssLXqYR

2015-05-03 21:58:41
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