#twnovel 今宵は酔いつぶれるまで酒を飲もう。そう言ったのは誰だったか。盃を鳴らせ笑い声をあげろ杯が壊れても飲み続けろ。ふと、冷たい風に気がつけば、そこはもう秋。目の前には朽ちた盃、徳利に、そしてつまみの代わりの赤紅葉。 pic.twitter.com/xamtvpTgEE
2015-11-27 22:43:43#twnovel 仇討ちを願い、旅に出たその男は仇の姿を待ちに待ち、気がつけば1つの石仏へと姿を変えた。苔蒸すその身に哀れを感じたか、彼の仇は紅葉に姿を変える。錆びた刀で一閃、斬られた紅葉の舞う赤の軌跡。初めて男は穏やかに微笑んだ。 pic.twitter.com/CDFZYJPNKg
2015-11-27 23:47:13#twnovel 夜になれば石仏たちがひどくざわめくのだという。覗き見れば、山の辺に造られた数千という石仏たちは夜な夜な目覚め語り騒ぎだす。それは神と彼らの約束事、昼には叶わぬ夜の紅葉狩り。朝日を浴びて彼らの魂はようやく天へと戻る。 pic.twitter.com/TfSzvxcI9x
2015-11-28 00:00:38#twnovel 死ぬ時は共にと誓った私と貴方。離れがたく狂った心は死んで後にも土に滲み季節を超えた。その思いに気がついた一人の陶工の手が優しく伸びる。そして二人が滲んだ土は仲むつまじい像となり、いつかのように貴方と私の紅葉狩り。 pic.twitter.com/U0aGLKtMMU
2015-11-27 22:47:57#twnovel 深夜、輝く光に目を覚ませば宿の庭に紅葉が数枚。秋の女神は道中の安全を祈願する幣帛の代わりに紅葉を差し出すという。明日、遠くへと流される私を思っての事だろうか。控えめな女の痛々しいほどの心を知って、私も涙を落とした。 pic.twitter.com/uTlKlp2Fqw
2015-11-15 23:06:44#twnovel 山辺に暮らす白猫は、秋にだけ姿を見せる。散り紅葉に身を隠し、人々を軽蔑の眼差しで見つめるのだ。「浮かれた秋の行楽なんぞお笑いぐさ。聞かせてやろう、私と秋の神との悲しい恋の物語を」やがて猫は自嘲めいた鳴き声を上げた。 pic.twitter.com/xfjHM9u96Z
2015-11-15 22:49:28#twnovel 行かないで愛おしい人、行かないで。叫ぶ女の声を振り払い、彼は凜と前へと向かう。男の僧衣を引くのは女の赤い袖。よくある別れの悲劇ではあるものの、よく眺めみればそれは石仏と一枚の紅葉であった。秋の風の見せた幻影である。 pic.twitter.com/EZrQFRZrI9
2015-11-15 20:38:04#twnovel 人里離れた山奥に妖が出ると噂に聞いた。金を寄越せと言われた者もある命を取ると脅された者もあるという。恐る恐る覗き見れば、そこにあったのはさても愛らしい2つの石仏。一枚、黄金の紅葉を差し出せば嬉しそうににこりと笑う。 pic.twitter.com/Vdu8O3c6gx
2015-11-15 21:54:52#twnovel 奥山で一枚の葉が儚く散った。奥山で一人散るのは美しい錦を着て夜歩くようなもの。哀れをこめて撫でてやればそれは途端に赤くそまる。見ればそれは美しき女の手であった。彼女が秋の女神であることを知ったのは随分先の話である。 pic.twitter.com/JtlCnPk7yU
2015-11-15 20:29:52#twnovel 空気が様々な色に輝いていた。赤に緑、黄色の錦織り糸。青の空に輝く紅葉は、秋の風を色彩豊かに染め上げる。宙に手を伸ばせば淡い香りが私を取り巻く。それは秋の神である竜田姫が、去る秋を惜しんで零した涙の残り香である。 pic.twitter.com/ZMSI4PUqVG
2015-11-15 22:30:34#twnovel 間も無く秋も深まる頃だというのに、寝坊助の子供は一人いつまでも布団にくるまる。秋風に吹かれ紅葉の赤色に照らされても、彼はいつまでも幸せな子供時代の夢を見る。 pic.twitter.com/mxpJh1tert
2015-11-14 22:56:36#twnovel 柔らかな桃色のスカートを楽しげに揺らし彼女は踊る。やがて散る運命とも知らず、彼女は嬉しそうに秋の空を見上げるのである。秋の桜とはよく言ったものだ。その薄い花弁や名残を落として散るその儚さは、桜の花によく似ている。 pic.twitter.com/VVbyhYTB7u
2015-10-25 20:11:27#花百姿 夏には青で栄えた木々もまた、最後の盛りの色を咲かせる。緑は紅の浸食を受け、境の色は黄金の輝き。濃い紅に染まった雲海は、秋特有の薄暗い明るさに捕らわれた。それはいずれも切ない秋の色である。 pic.twitter.com/bVJkYHUSg5
2015-11-07 23:21:57#twnovel 「秋の風は白いので、風車が生む風も自然と白くなるのです。それが寂しいと風車が嘆く為、私達が風に色を付けるのです」「なにせ私達は風車に恋をしていますので」風車の風に揺れる秋桜は気高さの中に恥じらいを隠してそう呟いた。 pic.twitter.com/3QD2w6lfbT
2015-10-25 19:43:04#twnovel ここから先は通せぬと、赤い騎士が腕を張る。紅の騎士は凜と彼女の前を塞ぐ。「ここから先は風の神の領域」、「進まれるならば我らを越して行かれよ」そう声を張り上げる彼らの向こう側、巨大な風車が風の神を待ち焦がれている。 pic.twitter.com/1yMprRz52t
2015-10-25 19:58:16#twnovel 秋の空は高い。彼らは背を伸ばし、赤子のような手を目一杯広げて天を目指すのだ。ああ、私達をどうぞ、その青につれて行ってくださいと、赤や紅、白の花が叫ぶのだ。やがて花弁が一枚、一枚と天を目指し始める。秋の終わりも間近。 pic.twitter.com/BYYTFuxFqP
2015-10-25 20:01:17#花百姿 白の着物を身に纏った、ぞっとするほどに美しい女である。手を差し伸べて誘いかければ彼女は呆れたように笑うのだ。「どうせ私も枯れる身ですもの」顔を上げれば、朽ち果てた秋桜の群れの中、白い彼女だけが凜と咲き残っている。 pic.twitter.com/FbOcM9hqN1
2015-11-07 22:49:12#花百姿 秋風に乗って、冬は静かにやってくる。冬の訪れる音を耳にするたび、冬の風を受けるたび、彼女らの顔は赤くなるのだ。それが自らを枯らす風とも知らず、「愛おしい人」恍惚と彼女達は冬の風に手を伸ばすのである。 pic.twitter.com/s7kaN4VXPM
2015-11-07 22:53:17#花百姿 赤の色は樹の涙だ。去る季節を嘆いて赤い涙を落とすのである。そんな風に女は語る。「馬鹿なことを」振り返って笑えば、そこにあったのは一本の老木。確かにそれは彼女の声で嘆き、涙は赤い葉となり大地に散った。もう、冬が来る。 pic.twitter.com/FrhQZIHPBw
2015-11-07 22:59:11#花百姿 その道はまるで赤と黄色の饗宴だ。今が盛りの紅葉は楽しげにさんざめき、俺の上でふわふわ踊る。どうにも不気味だ早く通り過ぎようと駆けた瞬間、俺は何かに躓き転がった。目がさめれば俺の体は紅葉の海の中。「捕まえた」と誰かが笑う。 pic.twitter.com/E5D8f3Dx3J
2015-11-07 23:08:17#花百姿 やあ我こそは秋の使者なりと、向かい合うは赤と白。両者互いに引かず逃げずの戦いはもう数週間になろうとしている。そんな名乗りの声が聞こえない人間は、すすきと紅葉の何と風情のあることよ。と、小さな秋の訪れに足を留めるのである。 pic.twitter.com/M9m0JvAez1
2015-11-07 23:29:25#twnovel ここから先へは通さぬと、赤い腕がにょきりと伸びる。ここから先の木々は、ちょうど緑から赤へのお色直し中。色づきを変える妹たちの艶姿を見られてはなるものかと、先に散り落ちた兄は健気にもその身を張って人々の足を留める。 pic.twitter.com/eAa6qTUZrT
2015-11-14 22:20:58#twnovel 全ての色を無くした世界の中で彼女だけは挑むようにグレーの天へと手を伸ばすのだ。「陽が差せば、きっと貴方は驚くでしょうね」彼女はそうニヒルに笑った。「私の体は大層赤いものですから」見れば彼女の身に赤の滲みが見える。 pic.twitter.com/dc3qei1m34
2015-11-14 22:44:11#twnovel 藍色に染まるあの人に私は恋をした。好きだと言えば彼女は悲しげに顔を俯け首を振る。薄い衣に身を包む彼女の名は秋桜。赤を纏った私の名は彼岸花。秋の名を持つ私達の逢瀬はたった数日のこと。求愛はいつも秋の風に誤魔化される。 pic.twitter.com/iGatEiRo6X
2015-09-23 20:37:48#twnovel 彼岸花はいつの間にか咲いていつの間にか散っている。どこへ消えると思う? と、彼岸花は囁く。顔を上げれば彼岸花は黒に包まれていた。「彼岸に戻り一年の時を過ごすのだ」切ない彼らの泣き声を、優しく引っ張る仏の手が見えた。 pic.twitter.com/Ohd3j4fFoD
2015-09-23 20:12:21