花百姿まとめ

#花百姿で書いている、ツイノベ×花の写真の花小説のまとめです。
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みお @miobott

#twnovel その伽藍の奥には明王様が鎮座してござる。伽藍前に植えられた白梅はどこの木より早く咲く。それは愛おしい明王様に一目でも早く会いたい梅の恋心。今年も雪と間違う白い花を綻ばせ「さあ愛でてくださいませ」と愛らしく笑うのだ。 pic.twitter.com/ZlNI61qLkM

2016-01-24 18:55:56
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みお @miobott

#twnovel その昔、手酷く捨てた娘は甘い香りを身に纏っていた。その香りに惹かれて遊び、捨てた。その記憶さえ薄れた晩年の私は曇天の山道で一人倒れる。上げた顔の向こうに見える一輪の紅梅。「見つけた」と、件の女の声で花が嗤った。 pic.twitter.com/EcQrBnfEgE

2016-01-24 22:10:54
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みお @miobott

#twnovel 私がかつて酷く捨てた女は梅花となり私の後を追いすがったものらしい。元々、梅の娘であったのかもしれない。梅は情の深い花である。死にかけた身にはその愛がいじらしくも切なく、優しく声をかければ彼女はぼうっと赤に染まった。 pic.twitter.com/Voa5UA7XyY

2016-01-24 22:35:43
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みお @miobott

#twnovel 彼女はある日、春の風に恋をした。彼女の纏う甘い香りをどこまでも届けてくれる暖かな風に恋をした。しかし、不意に吹いた春風に騙され花を開いてみれば、まだそこは冬の国。青ざめた梅の花は、恋の病にひとつぶ涙を零すのだ。 pic.twitter.com/S6uvYdbjoI

2016-01-30 20:10:48
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みお @miobott

#twnovel 道に惑った旅人はある日、白紬の娘に命を助けられた。けして振り返ってくれるなと送り出した娘に焦がれ、男が振り仰いでみればそこにあるのは一輪の梅の花。まるで見守るように頭上に揺れるその花は、哀れ晩冬の風に儚く散った。 pic.twitter.com/Uktcq7m2PG

2016-01-30 20:17:33
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みお @miobott

#twnovel 所詮春の恋は浮いた恋。梅の命は短いもので、桜の咲く前には散り落ちる。桜のように潔く散れず、情念が花の形となり縮ぢれ焼け焦げぼとりと落ちるのが梅の定めだ。「それでもお前を愛するよ」男は彼女を守る騎士のごとく起立した。 pic.twitter.com/WAYsOcwmNn

2016-01-30 20:37:56
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みお @miobott

#twnovel 赤いハイヒールが私の足先を踏みつける。甘い痛みに吐息を漏らせば開いた唇に薄い唇が重なった。赤い色から口移しで流れ込むのは朝露の味。「捕まえた」微笑む彼女の腕にはちくりと痛い棘が広がり私の腕を逃さない。微笑む彼女は薔薇の人。捕らわれた私は薔薇に焦がれる哀れな男。

2016-02-20 21:15:54
みお @miobott

#twnovel かの人を祀る神社は春ともなると梅が美しく咲き揃う。それはかつて梅を愛した主を慕いその美しさを競い合うのだ。白に桃色、春の風にひらひらと踊る花弁は祭殿を鮮やかに染めた。祭殿の前に植えられた花は誇らしげに花を綻ばせる。 pic.twitter.com/fbsez7CsFe

2016-02-21 22:58:07
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みお @miobott

#twnovel 「紫の色は、昔愛した人が好んだ色でした。近づきがたいほど匂い立つ色なのです」遠地に流され無念の死を迎えた恋人のことを思うのか、彼女は紫の色に影を落とす。影から薫った彼女の涙は、芳しいばかりの春の香りであった。 pic.twitter.com/nqsNdBnCRv

2016-02-27 21:26:11
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みお @miobott

#twnovel 視界が黄色に染まる。昼から夕暮れに代わる一歩手前の日差しは銀杏の黄色を美しく変化させる。「ねえ」燕の隣を歩く律子が楽しげに目を細めた。「オムライスが食べたいわ」彼女の手のひらの中、愛らしい銀杏の葉が一枚舞い落ちる。 pic.twitter.com/cJHoDG3utb

2015-12-05 22:29:37
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みお @miobott

#twnovel 木枯らしの吹く夕暮れ時に彼女は目覚めた。吹き付ける秋の風は、春と異なり遠慮の無い冷たさである。その風を受けてなお、彼女は透き通る薄玻璃の花弁を見事なまでに凜と咲かせた。秋に咲く桜は、覚悟のある桜である。 pic.twitter.com/jGCsPykgva

2015-12-05 21:48:07
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みお @miobott

#twnovel 愛した男が都から離れたとき、彼女は泣いて縋って春の嵐となった。それから幾年の日月が過ぎ去ったか。眠る男を彩るように彼女は今年も可憐な花を付ける。彼女のいじらしい恋心を知る牛は、梅の花の健気さを静かに見守るのである。 pic.twitter.com/0fGVCqk8y5

2016-02-27 21:33:12
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みお @miobott

#twnovel 秋の終わり、紅葉を眺めに山へ足を運んだ私が見たのはすっかり枯れた樹であった。昨夜まで色づいていた葉は何処と探してみれば、彼女達は鮮やかなまま池に沈んでいる。凄惨なまでに水を赤に染めそれはさながら紅葉の為の風葬の地。 pic.twitter.com/970kxlq2Y9

2015-11-28 22:52:43
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みお @miobott

#twnovel 美しき紅葉、ほの赤き手のその艶やかさ。あいらし、あいらしと撫でて抱きしめた娘の手はやがて老い、無情な私は娘を捨てた。それから数年、死の淵を彷徨う私の真上に薄い闇。見上げれば黒の紅葉が「随分お見限りで」と妖艶に笑う。 pic.twitter.com/5aOGROGuT0

2015-11-28 22:12:49
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みお @miobott

#twnovel 今が盛りの娘姿。顔を隠さず、さあさ外に出て綺麗に咲き誇っておくれ。声をかけ、手を伸ばしても彼女は照れて緑の袖で顔を隠すばかり。何故かと問えば「私の名は牡丹。人見知りの花でございます」気がつけば目前に、一輪の赤い花。 pic.twitter.com/dFmkTsU0NI

2015-11-28 21:11:28
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みお @miobott

#twnovel 「とかくススキが悲しみの題材にされやすいのは哀れに白いその姿にあるのでしょう。だから貴方を暖かな色に染めるべく私は秋に色づいて貴方の上に降り注ぐのです」ススキの上に色づいた、楓の葉がそう言って切なげに溜息を漏らす。 pic.twitter.com/tUK9P2vduG

2015-11-28 21:05:13
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みお @miobott

#twnovel 緑滲む朱の色。日差しを受けて騒ぐ音も色鮮やかに青空さえも赤に染める紅葉の攻勢。かの色に憧れ、叶わず白の色しか持たない花は恥じ入るように顔を伏せる。しかしその色こそ秋の神の愛する色と知る紅葉達は意地悪気に酷く騒いだ。 pic.twitter.com/ZQWDJVDa9T

2015-11-28 21:32:48
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みお @miobott

#twnovel 山の奥もその家はあった。近づいてはならぬと童の頃より母に躾けられたその教え。それを裏切り私がかの家へ赴いたのは夏の終わり。家に眠るは秋の神。揺り起こせば辺り一面紅葉で色づく。夏の神である母は悲しげに秋雨の涙を零す。 pic.twitter.com/sIR7HbRVW4

2015-11-28 21:23:21
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みお @miobott

#twnovel 春なればこそ咲く桜が、秋に開く。何と嫋やかなその色。「こんな冷える日に酔狂な」気難しがり屋の紅葉が吐き捨てれば、彼女は「貴方に会いたい一心で、季節外れに咲きました」と儚く呟き、紅葉は季節らしい赤の色に染まった。 pic.twitter.com/5sB8ZnxJpi

2015-12-05 21:40:08
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みお @miobott

#twnovel 毎夜、女を訪ねる壮士の姿があった。朝には森へと消える男を不思議に思い後を付けてみれば、彼は一匹の鹿に姿を変えた。暮れる秋の日差しを受けて鹿は一声、別れの声で鳴く。秋に鹿が上げる声は、叶わなかった恋を思う嘆きの声だ。 pic.twitter.com/3ZWZiRn6gl

2015-11-28 22:01:21
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みお @miobott

#twnovel 人々を空より見守る飛天の観音は青空に自身の色を落としてしまった。娘がそれでは寂しかろうと言い出したのはどの樹だったか。今では秋ごとに木々が染まり彼女を紅葉に彩る。かの竜田姫のようだと褒める紅葉に彼女は仄かに照れた。 pic.twitter.com/s5D5aAYYx8

2015-11-27 20:36:21
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みお @miobott

#twnovel 妬心に狂った女は鐘に生まれ変わる。愛した僧の手で毎日撞かれるごと恨みの声は清らかな音となり彼女の身から妬心が消えた。ある朝、僧が鐘に手を伸ばすと周囲の木々が途端に色づく。それは彼女が最後に残した純たる愛の色だった。 pic.twitter.com/4W8aWlyeXj

2015-11-27 20:43:31
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みお @miobott

#twnovel 無縁でも弔ってくれる寺があると噂に聞いた。這って辿りついたのは風葬の地。私の身に降り注ぐは赤に黄色に緑の葉。仰げばそこに紅葉が一本。思えば秋の女神は旅行く者の安全を願い紅葉を降らすのだ。私は祝福の中眠りについた。 pic.twitter.com/1saBIj68Oo

2015-11-27 22:19:06
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みお @miobott

#twnovel 顔跡も覚束ないほど古い石仏である。その仏を毎日見守る女がある。なぜこの仏に尽くすのかと聞いてみれば「私の足下で行き倒れたものですから」と照れて言う彼女は紅葉の木。鮮やかな落ち葉に包まれたその仏を私は妬ましく思った。 pic.twitter.com/UOMbGhnWW2

2015-11-27 22:22:10
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みお @miobott

#twnovel 踊る舞う、足を鳴らし顎を上げ、首を傾げて軽々飛んでさえ見せる。あの人の優しい指の動きに従って、私はいかようにも舞う操り人形。あの人を慕う私の気持ちに気づいたように、紅葉だけがほのかに照れた。 pic.twitter.com/UY9NFRHAC7

2015-11-22 23:20:22
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