廃棄物日誌 LOG:11

廃棄物13号@カクヨム連載中 @eibis_splicer

「相変わらず遠征艦隊の捜索っス。ですが、オリョール近海で救難信号を発信しているブイを見つけたみたいっス」 ≪了解しました。エンター、くれぐれも棲鬼様の言う事は聞いてあげてくださいね≫ 「分かってるよ。じゃあ、ニーナ達に殺されないように頑張ってね。紛い物だけど」 #廃棄物日誌

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「…まダ、マダ行けマす！」起き上がる駆逐棲姫。 「あひゃっあはははははっ！！」呼応するように砲を構える夕立。 ≪ダメっスよ、駆逐棲姫。もう撤退っス。ゲームオーバーっス≫ その時、重巡リ級の声が響いた。沈みつつある駆逐艦の中からだ。 #廃棄物日誌

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「ナにを言うノ！ワたしはマダ、まだヤれるはずデす！」 ≪そうっス。棲姫はその程度では死なないっス。でももういいっス。得るものはないっスよ≫ 「お前の命を貰いに往くぅ！」「あアあァッ！！」リ級の制止を聞かず突撃する棲姫。 夕立もそれに応え突貫。取っ組み合った。 #廃棄物日誌

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「死ネっ！死んデ！沈ンでクダさい！」手にした連装砲で何度も殴れば 「あははっ！あひゃはははっ！」蹴りで退けられ単装速射砲の連撃を受ける。 それの繰り返しであった。他の者が加勢しようにも複雑に取っ組み合っているので下手をすると夕立に当たる恐れがあった。 #廃棄物日誌

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≪退けと言っているのが、分からないっスか？≫ 大きな声で、そしてやや苛立った感じでリ級が言う。 すると、駆逐棲姫が突然怯えるような素振りを見せると夕立から離れ そのまま撤退していった。 #廃棄物日誌

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………… 「…ふぅ、やっと引いてくれたっス。やっぱ前線指揮の方が気が楽っスね」 「前は、さっさと総旗艦なんて肩書きを捨てたいとか言ってなかったっけ」 「違うっスよ。前線指揮官に戻りたいだけっス」 ≪ノーザンプトン12≫「戦艦棲姫様、どうしたっス？」 #廃棄物日誌

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≪駆逐棲姫が泣きながら撤退してきた。またお前脅かしたな≫ 「血の気が盛ん過ぎていう事を聞かないから怖い戦艦のお姉さんが殺しに来るって言っただけっスよ」 「違うよワシントン。ノーザンはドスをきかせた声で撤退させたの」 「ドスって何スか！」 #廃棄物日誌

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≪…ふぅ、とても水雷戦隊総旗艦とは、キーパーとは思えないな≫ 「両方とも棲鬼様が勝手に名付けたんですよ。むしろ迷惑っス」 「そんな事よりもワシントン。いよいよニーナの艦隊ね」 ≪コピーモデルと聞いているからそんなに期待していないが…≫ #廃棄物日誌

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「きっと楽しめるよ。頑張ってね」 ≪お前が見込んでいるんだ。きっとかなりの手練れなのだろうな…≫ 「ワシントン02様とはえらい違いっスね。男っぽいというか」 「元々性別なんて、私達にはそんなに関係ないでしょ」 #廃棄物日誌

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「コピーモデルでこれほどまでの力を…！」 後ろの艤装が大破し、膝をつく。 その隙を見逃さず、愛宕が大剣を斜めに振り下ろす。 「しま…っ！」今まで攻撃を受け止めていた艤装が大破していたので、守る者はなかった。 そのまま着衣装甲を容易く切り裂いた。 #廃棄物日誌

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「ぐは…っ！」着衣装甲が砕け、そして血が噴き出る。 深海棲艦独特の、鮮やかすぎる赤。 「何て力だ…これがアイクが認める艦隊の力…！これなら、確かに戦争を終わらせる要因になりうるかもしれん…！」 艤装が緊急復帰プログラムで再起動する。 #廃棄物日誌

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「その島とそこにいた重巡洋艦はくれてやる…！どうせドイツに行けば幾らでもいるんだからな…次はオリジナルと戦いたいところだ…また遭おう…」 そういうと後ろを向き、高速で海域を離脱していった。 「ふう、どうにか倒したわね。正直あいつで最後であってほしいわ」 #廃棄物日誌

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「ムスカ・ワンダーより佐世保本部へ。敵主力艦隊を撃滅。これより帰還するわ。この先絶好何かあるけど、そこから先は提督の指示がないと行けないからね」 そう言うと叢雲は通信機を置いた。 #廃棄物日誌

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「やられたようだな」 «お前の言う通り…確かに強敵だったよ。これはオリジナルと戦うのが楽しみだ» 「そうか。所で遠征艦隊だが、見つかったぞ。オリョール海域でじっとしているそうだ」 #廃棄物日誌

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「今エンタープライズとノーザンプトンに救出に向かわせている。例の連中とここの有力鎮守府がぶつかってるらしいから、あの二人とバーネットを向かわせた。三人ならどうにかなるだろう」 «了解した。また何か報告する事があったら言ってくれ» 「分かった」 #廃棄物日誌

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「…さて、アンタ達には暫く休んでもらうわよ。思ったよりあっさり終わってくれたから、次またあのバカ達がいない時に出てもらうわね」 コピーモデル達に言う叢雲。 「次は本物の私が出てほしいわ」「海軍本部にしてはまともな命令にゃん」 山城と愛宕のコピーが言う。 #廃棄物日誌

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「あ、そうだ」出撃したコピー艦娘が保存カプセルに戻っていく中、愛宕と山城が振り返った。 「どうしたの」「本物の私について話しておきたいことがあるのん」 「まず私からね。こう言えばいいのか分からないけど“私は一人”じゃないわ。たくさんいるのよ」 #廃棄物日誌

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「アンタみたいなコピーが沢山いるってこと？」 愛宕は首を横に振る。「違うわ。本物の私は、沢山の私で出来ているの。私が言えるのはそれだけね」 そう言って愛宕はカプセルの中へと消えていく。 #廃棄物日誌

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「私は簡単にゃんよ。“私は人間の味方じゃない。だけど敵でもない”」 「アンタが一番意味が分からないわよ。スパイじゃないでしょうね」「それなら手紙にして伝えてるのん。まあ人を守る気はない。そういうことにゃん」 山城も同じようにカプセルに入っていく。 #廃棄物日誌

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「二人して変な事言わせるって、あの二人どうなってるのよ」 ブツブツ言いながら保有艦娘のリストを整理する。 そして重巡洋艦のページに変わった時、1ページ全てが愛宕になっていた。 しかも、そのアイコンの写真は何処かおかしかった。 #廃棄物日誌

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包帯で顔が覆われていたり、左半分が赤黒く変色していた。 まるで負傷した愛宕モデルの写真だけを並べたかのようだ。 「えっ」叢雲が見直すと、普通になっていた。 「私も疲れてるのかしら…」そう呟くと画面を閉じ、寝室代わりの執務室へ戻った。 #廃棄物日誌

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«日向お姉様、赤城お姉様と蒼龍、それとギガベースの大鳳を発見しました。三人とも大破判定が出ています» ナガトから通信が入る。それは山城も聞いていた。 「ようやく、因縁の決着かにゃん」 山城は、赤城と大鳳の最初の対決を思い出した。 #廃棄物日誌

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装甲空母という、新型艦としての自信に溢れていた彼女は赤城に圧倒されきっと屈辱的な敗北を喫した。 あちらの提督の不法投棄から始まったギガベースとの奇妙な交流は、ようやく主力艦同士の殺し合いへとなった。 大多数の鎮守府の合同演習のように。 #廃棄物日誌