「ラン・アンド・キル」

「ヒストリー・リピーツ・ヒムセルフ」の合間に連載していた短編です。
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ジュセー @shiroboshi2

死神は走る。か弱き非ニンジャの少女を抱えながら。その途上、少女がゆっくりと目を開けた。そして己を抱える者を見、譫言めいて呟いた。「……お父さん?」死神は「私はオヌシの父ではない」と答える。だが少女はその答えを聞く間もなく、再び眠りに落ちていたのだった。 36 #S57Ninja

2015-06-16 01:33:00
ジュセー @shiroboshi2

________________ 37 #S57Ninja

2015-06-16 01:34:54
ジュセー @shiroboshi2

数日後。イヨミはネオサイタマの雑踏の中に居た。あの日の事は夢か何かだと思いながら、日々を生きていた。だが事実として父は死に、大量の保険金が下りていた。彼女はその事実を受け止めきれないまま日々を生き、今日も雑踏の中を歩く。「……あれ?」 38 #S57Ninja

2015-06-16 01:38:40
ジュセー @shiroboshi2

イヨミは雑踏の中に何かを見つけたようだった。「お父さん?」上ずった声で呟く。しかし、数秒後、彼女は自らの誤ちに気づく。父と思ったその人影はトレンチコートを羽織り、ハンチング帽を被っていた。父はそんな服装は持ち合わせていなかったし、背丈もまるで違っていた。 39 #S57Ninja

2015-06-16 01:41:33
ジュセー @shiroboshi2

「……そっか。お父さんは、もう、いないんだ」イヨミは俯き、呟く。彼女はこの時、漸く現実を受け止めることが出来た。そして、その現実に向かい合う覚悟が出来た。イヨミは顔を上げた。悲観を捨てた顔だった。(お父さん。私、頑張ってみるよ。だから。だから……) 40 #S57Ninja

2015-06-16 01:45:27
ジュセー @shiroboshi2

イヨミは雑踏の中を歩く。前を向き、歩く。強く、逞しく。トレンチコートの男はそれを見届けていた。イヨミは気づかなかった。気づかないほどに前を向いていた。彼女は雑踏の中へ消えていった。トレンチコートの男はイヨミとは反対の方向へと、雑踏の中を歩んでいった。 41 #S57Ninja

2015-06-16 01:49:45
ジュセー @shiroboshi2

「ラン・アンド・キル」 終わり。 #S57Ninja

2015-06-16 01:50:28
調岩笠 @granbell_S

オツカレサマドスエ!切ないエピソードだ… #S57Ninja

2015-06-16 02:10:12