2020東京五輪エンブレム著作権問題に関する3人の専門家のツイート

8月3日の一橋大学オープンキャンパス模擬講義の参考資料としてまとめました。
法律
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まず島並良先生@神戸大。前篇、類似性について。
Shimanami Ryo @shimanamiryo
著作権侵害の要件の一つに、類似性がある。この類似性は、「表現上の本質的な特徴を直接感得できる」かどうかで判断される。平たく言うと、「ああ、あの作品が元になってるな」と分かるか、ということ。
Shimanami Ryo @shimanamiryo
ただしここで重要なのは、「表現上の」特徴という修飾語。著作権法は、表現そのものと、表現対象であるアイデアは、区別できるという前提に立っている。そして、表現上の特徴が似ていれば著作権侵害だが、アイデアの特徴が似ているだけでは侵害にはならない。
Shimanami Ryo @shimanamiryo
その上でさらに、あるアイデアを表現する手段(選択肢)が限られている場合には、たとえ表現が似ていても著作権侵害にはならないとされている。そうでないと、本来は利用自由であるはずのアイデアの保護に繋がるから。
Shimanami Ryo @shimanamiryo
さて、東京五輪エンブレムである。今回のエンブレムの特徴は、そのシンプルさにある。そして、作品がシンプルであればあるほど、それはアイデアに近づく。たとえば、前回の64年東京五輪のエンブレム(日の丸に金色の五輪マーク)は、美しく力強いが、ほぼアイデアに尽きているように思う。
Shimanami Ryo @shimanamiryo
64年エンブレムのデザインほどアイデアに満ちており、アイデアさえ決まれば表現の幅が狭いケースでは、著作権による保護は極めて薄くなる。つまり、そっくりそのままのパクリはさすがに侵害となるが、少し変容させれば、もはや著作権侵害を免れることに。
Shimanami Ryo @shimanamiryo
翻って今回の騒動を見ると、64年エンブレムほどではないにしても、ベルギーの劇場ロゴもアルファベットのTに少し手を加えたかなりシンプルなものなので、その著作権保護の厚さ、つまり後続の東京五輪エンブレムがそこからどれだけ変容していれば著作権侵害を免れることができるかが問題となる。
Shimanami Ryo @shimanamiryo
今回の2020年エンブレムは、ベルギーの劇場ロゴと比べると、(1)配色が異なり、また(2)右上の日の丸の有無も異なる(さらに細かく言えば、(3)左上・右下の両突起と中心の縦棒が接しているかどうかも異なる)。こうした違い、特に(2)の点をどう捉えるかによって、結論は分かれそうだ。
Shimanami Ryo @shimanamiryo
類似性要件が争われる多くのケースと同様に、断定的なことは言えないが、私自身は、右上に付加された日の丸のインパクトに鑑みると、限られた選択肢の中で充分に表現は変容されており、(ネット上で騒がれているほどには)著作権侵害が明らかなケースではないように思う。
Shimanami Ryo @shimanamiryo
なお蛇足ながら、商標を登録していることは、著作権侵害の成立を否定する要因とはならないので、五輪関係者の反論(として報道されているもの)は見当外れである(むしろ、日本の商標法上は、他人の著作権と抵触する登録商標は使用できない(29条))。著作権法に焦点を絞った反論をすべきだろう。
Shimanami Ryo @shimanamiryo
さらに蛇足ながら、話題の著作権侵害の非親告罪化とは、今回のケースでベルギーのデザイナーが望まなくても、東京五輪エンブレムのデザイナーに対して刑事手続が発動し得るという話。類似性が争われるケースと、海賊品のケースとを区別するために、どんな要件を加重するかが極めて重要。
ハフポストのツイート転載は31日18:32のツイート↓の時点で無断だった可能性がある。しかし華麗にスルー。 そして後篇、依拠について。
Shimanami Ryo @shimanamiryo
おや。>2020年東京オリンピック・エンブレムは著作権侵害? 専門家の見方 huff.to/1UaTscW @HuffPostJapanさんから
Shimanami Ryo @shimanamiryo
依拠性は、偶然の一致から表現者を守る(後続者の萎縮を防ぎ、表現の自由を確保する)重要な要件。ただ、現実に見たかどうかを問題にすると、「見た」「見ない」の水掛け論になる(立証責任を負う著作権者が著しく不利になる)ので、訴訟では、元作品の有名度や両作品の類似度などから推認される。
Shimanami Ryo @shimanamiryo
今回の件では、ベルギーの劇場のロゴデザインは少なくとも日本で知られていたわけではないし、アルファベットを元にしたシンプルなデザインであれば、偶然に似てもおかしくはない(依拠しないとこの点が一致するはずがない、という不自然さはない)ように思う。
Shimanami Ryo @shimanamiryo
もっとも、今回の件のように職業デザイナーによる、世界的な大規模イベント関連のデザインの場合には、事後の依拠性を巡る紛争を避けるため、選定にあたって事前に慎重な調査をすることが望ましい(商標調査済みとの五輪関係者のコメントは、その限りで意味がある)。
Shimanami Ryo @shimanamiryo
ネットでの画像検索が容易な現在、少なくともある種の商業作品についての依拠性要件は、現実に「見た」かどうかという本来の位置付けを離れて、事前に「抵触調査義務」を尽くしたかどうか、というものに変容しつつあるように思う。
Shimanami Ryo @shimanamiryo
要するに、東京五輪エンブレムのデザイナーが単に「見てないよ」と言うだけでは話は終わらず、「じゃあ、どれだけ調べたの?」という話にもなるわけだが、そこから先はベルギー劇場ロゴの実際の使われ方、そして何よりもデザインの現場を知らない私にはコメントができない領域。
Shimanami Ryo @shimanamiryo
うん、依拠性は充たしてそうだ。RT @sho_ya: ダイナミックに引用されていますね(笑)。 RT @shimanamiryo: おや。>2020年東京オリンピック・エンブレムは著作権侵害? 専門家の見方
弁護士の水野祐先生。
水野 祐 Tasuku Mizuno 🙊 @TasukuMizuno
五輪ロゴの件、報道・マスコミのレベルの低さにうんざりする。「パクり」という言葉を使って煽ってるとしか思えないな。
水野 祐 Tasuku Mizuno 🙊 @TasukuMizuno
抽象度の高いロゴの著作物性の議論は、実はあまり議論されていない。それはデザイナーの権利保護につながるように見えて、実はデザイナー自らの首を締めかねない面があるからだろう。この際、ロゴの著作物性について仁義なき議論をしてもよいと思う。
水野 祐 Tasuku Mizuno 🙊 @TasukuMizuno
つまり、著作権法は偶然似たものを侵害とはしません。同じ時代に同じ空気を吸っていれば似たようなものが生まれてくることは避けられない。それが抽象度の高いものであればなおさらで、法はそこにちゃんと余白をのこしているわけです。これまでも偶然似てしまった案件をたくさん見てきました。
慶應の奥邨弘司先生。7月28日に、著作権法学会判例研究会で、応用美術(いす)の著作物を認めたトリップトラップ事件を報告されたばかり。

http://www2.odn.ne.jp/~aaf77690/

KJ_OKMR @OKMRKJ
著作権判例研究会「TRIPP TRAPP事件知財高裁判決」報告終了。ご質問下さった先生方、またご参加の皆様、ありがとうございました。いろいろ検討不十分なまま報告させて頂き、本当に恐縮しております。論文化の際にはもう少し完成度を高めたいと思います。 正直終わってほっとしました。
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コメント

NAGATSUKA Makoto @m_ngtk 2015年8月4日
まとめを更新しました。最後に、私見(3人に賛成)と、3日のオープンキャンパス模擬講義での扱いや受けた質問について書きました。
NAGATSUKA Makoto @m_ngtk 2016年5月14日
まとめを更新しました。昨年11月に模擬講義の動画が公開されたことを書き忘れていたので、そのことを書きました。
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