黄昏町(柊)九日目

柊 @hiiragi_r_t_d

【九日目】 【魂10/力4/探索3】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鱗(水耐性、力+1) #hollytk

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「さて、と………」 私の目の前には廃車がある。近くには溜め池。 そう、私が溺れ死んだ場所である。 私は手帳を近くの木の洞に隠すと、車に乗り込んで狸寝入りを始めた。 01 #hollytk

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顔が外から見えないように寝ているので犯人は私の事を新しい獲物だと認識するはずだ。 引っかかったフリをして、顔くらいは拝んでやろうという企みである。 02 #hollytk

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しかし、なかなか来ない。 長丁場を覚悟して睡眠を取ろうとした私の耳に、複数人の足音が飛び込んできた。 足音の数からすると、4,5人はいるだろうか。歩幅も広いものと狭いものが混じっている。 03 #hollytk

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「あー、だりいなあ」 「こんな事、いつまで続けるんだか」 「仕方ないだろ？そういう決まりなんだからさ」 どうやら彼ら自身の意思ではないらしい。 決まり………規則？何の？ 04 #hollytk

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「さて、さっさと終わらせて帰るぞ」 「テメーに仕切られなくても分かってるっつーの！」 「あー、ダリぃ……どうせなら女の子と来たかった…」 「黙れ彼女持ち！浮気性！死ね！」 全員でめいめい勝手に喋るから何が何だかさっぱり分からない。あと浮気はいかんぞ浮気は。 05 #hollytk

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せめて彼らの名前だけでも聞き取らなくては……と思って耳を澄ませているうちに、彼らは私の寝ている廃車に到達した。 まずは隣の車を乱暴に蹴飛ばし、中を覗き込む。 「チッ、こっちはハズレだ！そっちはどうだ？」 06 #hollytk

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彼らのうちの一人が私の寝ている車を覗き込む。 私は息を潜め、睡眠を取っている善良なバケモノを装った。ここでの善良とは、チョロそうという意味である。 鱗について知っている可能性も考慮して、左半身は見えないように寝ている。 さあて、どうなる事やら……… 07 #hollytk

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「よっしゃ！かかってるぜ！」 引っかかった……！ 「マジか！写真撮っとけ！」 キリキリキリ、カシャリ。 音からしてフィルムカメラか。古風な。 「撮ったぜ！」 「よし！じゃあ沈めろ！」 迷いがない。まったくもって酷い連中だ。 08 #hollytk

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ガンガンガン！！ガンガンガンガン！！ ドアに板を打ち付けるけたたましい音が響き渡る。うるさい…………普通ここで起きるんじゃないか？ 「なあ、こんなにうるさくしたら起きるんじゃねえか？」 同じ事を考えた奴がいたようだ。気が合うな。 09 #hollytk

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「一度寝たバケモノは滅多に起きない。習っただろ？」 「でもよ……流石にうるさいぜ、これ」 「周りのバケモノが集まるかもな。嫌だったら黙ってさっさと手を動かせ」 驚きの新事実だ。……習った？誰に？ 先程撮った写真も、その誰かさんに提出する為なのか？ 10 #hollytk

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謎が増えるばかりだ………こいつらに直接インタビューしてみたいが、今出ていったら間違いなく殺し合いになるだろう。 一対一で負ける気は流石にしないが、五人に囲まれては流石に不利だ。無駄な恨みを買いたくはないし、ここは大人しく寝たふりをしておこう。 11 #hollytk

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「よぉーし！終わったぜ！」 「さっさと落として帰るぞ！」 「「「「「オー！！」」」」」 不平をこぼしていた男達も、作業が終わると一致団結していた。 五人で作業を完遂したという達成感が、彼らの間にあった不和の種を押し流したのだろう。 …………これが狙いか？ 12 #hollytk

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ある程度の危険と手間のある任務を、仲のよくないチームに任せる。 危険な任務を全員で団結して完遂したという経験は、チームの絆になる。 学校のレクリエーションを思い浮かべれば話は早いだろう。 13 #hollytk

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「行くぞー！」 「「「「せーのっ！！」」」」 一人が音頭を取り、全員で廃車を溜め池に突き落とす。 ズズズズ、と地面に轍を刻みながら、廃車は溜め池に近づいていく。 「あと一息だー！」 「「「「おっしゃー！！」」」」 14 #hollytk

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ドッポォン………… 廃車は溜め池に落ちた。彼らの歓声が遠ざかる。 「やれやれ………結局何も分かりませんでしたね」 沈む廃車の中で私は独りごちる。二度目、しかも今回は絶対に溺れないともなると落ち着いたものだ。 15 #hollytk

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「そういえば、前回は二台落としていましたね……」 つまり前回、私にトドメを刺した廃車にも誰か乗っていたのだ。可哀想に。 前回といえば、私が落とした笛はどこかに落ちているだろうか？ どうせだから探してみよう。 もう何の役にも立たなくても、大切な思い出の品だ。 16 #hollytk

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「どっこいしょ、っと……」 ゆっくりとドアに力を込め、外に打ち付けられた板を壊せないか試してみる。 ピシ、と音が鳴る。が、壊れはしなかった。残念。 17 #hollytk

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という訳で私は前回と同じくフロントガラスから車外へ出た。 昨日の貯水池とは違い、ドロリとまとわりつくような濁った水が私を迎え入れる。 18 #hollytk

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「さて、と…」 とりあえず笛を探そう。そう決めると私は水底を歩き始めた。 19 #hollytk

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結論から言うと笛は見つからなかった。 濁った溜め池の中はほぼ手探りで捜索が思うようにいかなかった事もある。が、私にはどうしてもあの笛が今も水底に沈んでいるとは思えないのだ。 全く理由も根拠もない。あえていうなら異形のカン、だろうか。 20 #hollytk

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「あー………」 溜め池から這い上がり、手帳を回収した私はある事実に気が付き、ため息をついた。 21 #hollytk

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溜め池から上がって初めて気付いたのだが、池の水に濡れた服は……少し、いや、結構………匂う。 「まいったなあ…………」 泥臭い服を着た私は、ペタペタと濡れた足跡を残しながら歩いていった。 22 #hollytk

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──────── 【九日目】 【生存】 【魂+1】 【魂11/力4/探索3】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鱗(水耐性、力+1) 23 #hollytk

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[町]住人たちは、君が休息を取っていた廃車ごと、溜め池へ転がり落とした。《水耐性所持で脱出【魂+1】、不所持で水死【魂-2/異形『鱗(水耐性、力+1)』を入手】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #hollytk