【邪悪の樹――三ツ牙】第一戦闘フェイズ――第一の樹

嵐の森
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【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

【第一戦闘フェイズ——第一の樹】 『引き裂く者』より『不安定(@toe_asta)』 『断ち切る者』より『無神論(@toe_atheis)』 雷が鳴っている。閃光を連れた雷が鳴り続けている。深い森の中では、空は見えない。……嵐が近づいてきているのかもしれない。 #邪悪の樹

2015-08-06 20:09:19
【不安定】アスタージア @toe_asta

大地を震わせる重低音。木々の屋根に時おり光が差して影を作る。 間近で鳴った、ごぉおんと鐘とは似ても似つかないそれに「きゃ、」と悲鳴を上げる。 雷――こんなに大きく恐ろしいなんて。不安定は木の幹に手をつき、足を止めてはあたりを見回した。 それは警戒の仕草。轟音鳴るたび繰り返す。

2015-08-07 18:38:30
【不安定】アスタージア @toe_asta

扉の先。深い森。 雷の響く森の先。何かがいる。 見えずとも、探さずとも、おそらく出会うのだ。 出会ったら、出遭ったら―― 「早く帰らなくちゃ……」 不安を深く瑠璃に刻み、真っ直ぐと、嫌だと思う方へ歩みを進める。

2015-08-07 18:38:34
【無神論】アシーズモス @toe_atheis

——扉の先。鼓膜を破くような激しい轟音に、顔を上げる。其処には植物の天井が在り、それ以上には、何も見えなかった。 再び轟音が響く。ほんの一瞬、周囲が明るくなったかのように見えた。 「此処は……森、か?」 天井を埋め尽くしたのが植物ならば、視界を埋め尽くしたのも植物だ。

2015-08-07 19:34:37
【無神論】アシーズモス @toe_atheis

どんなに見回しても見えるのは木々ばかりで、森と言うものはこんなにも怖ろしげなものかと、『無神論』は息を吐いた。 「んー……ま、とりあえずやることやんねーとな」 歩き始めた足元で、パキパキと音が鳴る。蹴るように氷を散らせば、周囲の気温が下がる。暗がりで冷気を纏いながら歩く彼の目に、

2015-08-07 19:35:20
【無神論】アシーズモス @toe_atheis

ふと、何か生き物の姿が映り—— 「ちっさ!えっ?!なにあの生き物小さくない?!」 ——形は自分と同じように見える相手の、そのサイズの小ささに、『無神論』は何よりもまず声を上げ、驚いたように目を見開いた。 ……敵としての緊張感は、イマイチ無い。

2015-08-07 19:35:41
【不安定】アスタージア @toe_asta

雷の音、その合間に言葉が聞こえた。 言葉――そう、不安定の知っている声ではない言葉。聞き覚えがない、しかしちゃんと聞き取れる言葉。小さい、と。 「……だ、誰?」 ミルクティー色の髪を翻すように振り返る。そこには大きな『何か』がいた。

2015-08-07 20:11:43
【不安定】アスタージア @toe_asta

足元がきらきらとしているように見えた。雷光が反射する氷。それを怖いとは思わなかったが、不安に足がすくんだ。しかし逃げても意味が無いのだと、言い聞かせ、緩慢に向き直り、じっと見て、 「ええと――」 挨拶すればいいのだろうか、それとも……。 相手の緊張感のない空気に戸惑った。

2015-08-07 20:11:48
【無神論】アシーズモス @toe_atheis

「わあー!なんつーか、あれだ!可愛いな!」 『それ』の戸惑いも不安もなんのその。『無神論』は何一つとして気にすることなく、純粋な賛辞を向けて『それ』へと駆け寄る。暗い森も、雷の音も光も気にならない。足元の氷が砕けて、宙に舞った。 「初めまして!」 そうして向けた笑顔は、

2015-08-07 22:25:25
【無神論】アシーズモス @toe_atheis

おそらく誰の目にも警戒心の無い馬鹿のように映ったことだろう。しかも残念なことに、彼は見た目通りの馬鹿であった。それがどのくらいかと言及するのであれば。 「俺は『無神論』。君は?」 『それ』の前にしゃがみ、無邪気に手を差し出し、純粋に握手を求めてしまうくらいと言えば、十分であろう。

2015-08-07 22:25:57
【不安定】アスタージア @toe_asta

近寄ってくる『何か』。何故か不安定を可愛いと言って、同じような手足で向かってくる。不安定は恐怖する。自分より大きい『何か』が目の前にやってきて、屋敷で親しくする彼女らと同じような言葉をかけて来ることに。そして差し出された手に思う。 取ったら、食べられてしまうかもしれない、と。

2015-08-07 22:49:28
【不安定】アスタージア @toe_asta

しかし『何か』は名乗ってくる。しゃがみ、視線を合わせ。まるで挨拶のようだ。そして不安定は、その行動を何かしらの言葉で跳ね除けることは出来ずに迷い、 「……不安定、です」 そう手を取らずに『何か』――無神論を見て、 「あなたは、こわい狼ですか?」 胸元で強く手を握りしめた。

2015-08-07 22:49:33
【無神論】アシーズモス @toe_atheis

「そうか、『不安定』か」 握り返されなかった手を残念に思うこともなく下ろして、穏やかに笑った。 「どうかなぁ。そういうことは自分ではなかなか分からない」 向けられた問いかけに現実を垣間見たような気がしても、声を荒げるでも敵意を向けるでもなく、ただ努めて穏やかにいた。

2015-08-07 23:56:41
【無神論】アシーズモス @toe_atheis

……侮っているのかと罵られれば、『無神論』は何も言えないだろう。馬鹿にしているのかと言われても、『無神論』は何も言わないだろう。 「君はどう思う?俺はこわい狼かな」 『不安定』のか弱い姿に躊躇った。これを殺すのかと言う怖れがあった。 ——だからお前は×んだのだ。

2015-08-07 23:57:00
【無神論】アシーズモス @toe_atheis

約束守れるかなあ、どうかなあ、無理だったら何をして許してもらおうかなあ。そんな思いだけが脳裏にあった。

2015-08-07 23:57:50
【不安定】アスタージア @toe_asta

「ええ……わたしは、見たことのないあなたが怖い」 下ろされた手を眼で追って、また無神論へ戻す。読み取った表情に敵意が無く、不安定は困惑を、迷いを強くする。 「わたしはあなたを殺してしまわなくちゃいけないの?」 それは害意、敵意のない相手に対する疑問。

2015-08-08 00:25:02
【不安定】アスタージア @toe_asta

不安定は帰りたい。 しかし、誰かを殺すという事が、とても恐ろしいように思えた。 不安定は帰りたい。 誰かを殺してまで、過去を欲しいと思えなかった。 不安定は帰りたい。 出来れば、誰も悲しまない選択を選んで。 不安定は無神論に問う。 「あなたはわたしを殺してしまうの?」

2015-08-08 00:25:06
【不安定】アスタージア @toe_asta

胸元のリボンをぎゅっと握る。腕に引っかかる青い石のついたブレスレッドが小さな音を立てた。 不安定は、我儘なことだと分かっている。 ――しかし、それが生かしも殺しもしない最低な選択の化身故の思考だとは知る由もない。 瑠璃の瞳が、ただじっと無神論を見ていた。

2015-08-08 00:25:30
【無神論】アシーズモス @toe_atheis

少女の言葉を、穏やかな気持ちで聞いていた。細波一つ立たない、静かな心だった。おそらくもう、『無神論』の中では出来上がっているのだ。 これから行う、選択が。 「君は俺に勝たなくちゃいけない。君が帰りたいのならね」 もしそうだと言うのならば、躊躇うことはない。

2015-08-08 00:43:31
【無神論】アシーズモス @toe_atheis

此処に牙を立てて殺してしまえと、『無神論』は自分の首元を叩いた。 「俺も君に勝たなくちゃいけない。約束があるから、帰らないと。けど、俺は君を殺したくない。約束を破るより、君を殺すことの方が怖いことのように思うんだ。俺が俺じゃなくなるみたいな、感じ。なんとなくするんだ」

2015-08-08 00:43:57
【無神論】アシーズモス @toe_atheis

「君が俺を殺すしかないと思うのなら、早く牙を立ててくれ。俺をその気にさせてくれ。そうでないのなら、そうだな、少し、俺とお話、してくれる気はないかな?」

2015-08-08 00:45:02
【不安定】アスタージア @toe_asta

首を叩いて示す手に眉尻を下げる。 この人にも約束があるのだ、帰りたいのは自分だけでは無いのだ。不安定はそれを理解し、再考し、ゆっくりとリボンを握りしめる手を解き、少しだけくしゃりとしてしまったそれを撫でつけた。

2015-08-08 00:56:29
【不安定】アスタージア @toe_asta

その気にさせることはきっと簡単なことなのだろう。攻撃すればいい。 けれどこの手は、そのためのモノではなく、例えば、そう、誰かと繋いで行くための、もっと優しいものだと、不安定は心の何処かで信じている。 「うん、お話、しよう」 頷き、ほんの少しだけ微笑んだ。

2015-08-08 00:56:41
【無神論】アシーズモス @toe_atheis

『不安定』の微笑みに、ホッと息を吐く。 「ありがとう。君は優しいね。笑っていても可愛いし」 やっぱり俺は、この子を斬ることは出来そうにない。時間がかかればかかるほど、きっとそうだろう。 ——一番に帰って、出迎えるって約束したのになあ

2015-08-08 01:10:33
【無神論】アシーズモス @toe_atheis

苦笑しながら、『無神論』は何もない木と木の間に手を翳し、動かし始めた。 現れる氷は、木と木を結ぶようにして連ねられる。それは徐々に厚みを増して、人が座っても問題ないくらいの即席のベンチが出来上がった。

2015-08-08 01:10:46