「ゴースト・オブ・ノン・ユークリッド・ジオメトリー」
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リカルドは籠手を外し、素手で地面に触れた。「ウゲ…」顔を顰める。手から伝わってくるのは、生々しい脈動。仄かな温かさ。そして湿った感触。リカルドは草食竜から肉を剥いだ時の感触を思い出した。「何だい、こりゃぁ」後ろから声が掛かる。「隼鷹か」リカルドが振り向く。 22
2015-08-11 17:54:18「おう、無事だったかい提督」隼鷹は片手を上げヘラヘラ笑おうとした。だが、青ざめた表情では、上手く笑えなかった。「幻覚…じゃあないよな」隼鷹もリカルド同じく地面に手を触れた。「…グロイ感触」「お前さんから見て、どう思う」リカルドが問うた。「どうって」「こう、魔術的にさ」 23
2015-08-11 17:56:57「魔術的に、ねぇ…」隼鷹は地面に手を当て、霊視せんとした。だが「アイエエエエ!?」悲鳴を上げ、地面から手を離してしまった!「隼鷹!」「アアアアアアーッ!アアアアアアーッ!」隼鷹は錯乱状態だ!「イヤーッ!」「グワーッ!」リカルドの拳が隼鷹の腹部に直撃する! 24
2015-08-11 17:59:59隼鷹は勢い良く倒れた。リカルドは隼鷹に駆け寄る。「おい、どうした!?」「噫…アアア…」隼鷹は顔面蒼白し、虚ろな目でリカルドを見た。リカルドは懐からウィスキー小瓶を取り出し、隼鷹の口に押し入れた。「ゴボッ…ゴボッ…」ウィスキーの強いアルコールの刺激で、隼鷹の目に生気が戻る。 25
2015-08-11 18:02:26「大丈夫か」「ゴメン、何とか…」隼鷹はゆっくりとアグラ姿勢で座る。「何を見た」「取り敢えず頭から話させて…まず、この地面は誰かがジツで作ったもんだ。浸食して、変異させる類。んで、こういうジツは内部にジツの行使者がいるはずだから、逆探知みたいに探してみたんだ…」 26
2015-08-11 18:06:23隼鷹は今だ青白い表情だ。だが、隼鷹は言葉続ける。「で、行使者らしき奴を見つけたんだけど…見つかっちゃって…奴さんの霊力で逆にニューロンを焼かれかけた…提督が気付けしてくんなきゃ、正直ヤバかったかも…」「分かった、暫く安静にしていてくれ」「頼まれなくてもそうするよ…」 27
2015-08-11 18:08:51隼鷹は深く溜息を吐き、目を閉じてニューロンを休めた。リカルドは再び丘の方を見た。そこには、不気味に聳え立つ、肉で出来た塔が聳え立っていた。 28
2015-08-11 18:10:37同時刻!リカルド達とは反対方向の岸辺では!「サヨナラ!」一隻のル級が爆発四散する!「何ダ…何ダコレハ…」リ級2隻とタ級1隻。そして旗艦のヲ級が後退りながら、襲撃者を見た。この深海棲艦達は、「あもり」を襲った敵部隊の生き残りである。彼女達も嵐に巻き込まれたのだ。 29
2015-08-11 18:15:07「コノ海ニ近ヅイタナ」襲撃者は紅い瞳を爛々と輝かせ、言った。「何ダ!オ前ハ!」ヲ級は襲撃者を指差した。「同ジ深海棲艦ダロ!何故同胞ヲ襲ウ!?」「同胞…?」襲撃者は首を傾げる。「私二ソンナモノハイナイ」襲撃者は、カラテを構えた。周囲に浮く棺桶めいた6つの盾が蠢く。 30
2015-08-11 18:18:50「コノ海ヲ何人カラモ守ル。ソレガ我ガ存在意義。誰デアレ、侵犯者ハ…殺スノミ」「カカレーッ!」旗艦の号令に従い、2隻のリ級が飛び掛かる!「イヤーッ!」襲撃者のカラテシャウトと共に、6つの棺桶の内、2つが開く!中から飛び出すは、針山めいた主砲と副砲の群れ!BRTATATATA! 31
2015-08-11 18:21:56「「サヨナラ!」」一瞬でスイスチーズめいて穴塗れにされたリ級は2隻とも爆発四散する!「ア…ア…」ヲ級とタ級は恐れ入って失禁した。襲撃者は両手を合わせ、オジギをした。アイサツである!「ドーモ。亡霊戦鬼デス」 32
2015-08-11 18:23:42#2
これまでのあらすじ (物資輸送艦隊護衛任務の帰路にて、リカルド率いる艦娘艦隊は微弱な救難信号をキャッチ。救援に向かおうとするも、深海棲漢軍との不運な遭遇。更に突発的な嵐により、謎めいた孤島に漂流してしまう)
2015-08-24 20:19:31(島に対し霊視を試みた隼鷹は発狂寸前まで追い詰められるが、リカルドの荒療治にて事なきを得た。同時刻、亡霊戦鬼と名乗る謎の存在が、深海棲艦を嬲り殺しにしていたのであった。)
2015-08-24 20:21:30(果たして、この島からの脱出はなるのか?救難信号の発信者は無事なのか?……亡霊戦鬼とは、何なのか?)
2015-08-24 20:22:10「…しかし」歩きながらリカルドはぼやいた。「一面ブヨブヨした肉みてぇで気味が悪いな…」リカルドの視界には、一様に肉めいた質感を持った奇怪な大地が広がっていた。「ええ、本当に」吹雪がリカルドのぼやきに同意する。「悪趣味極まりないですね…」 1
2015-08-24 20:25:51「ホントだよ提督ー…」後ろから、心底嫌がるような声が届く。「アイドルと言うか、女の子が立つにはふさわしくないよこれ」白と橙のアイドル衣装めいた服と白手袋を身に付けた少女はげんなりした顔で肉の大地を睨みつけていた。「俺に言われてもな」「もー…那珂ちゃん早く帰りたいよ…」 2
2015-08-24 20:30:47「んなこと言ったってなぁ…」リカルドは頭を掻いた。艦隊の全メンバー合流の後、リカルドと戦闘可能な4名の艦娘、吹雪・大淀・那珂・鳥海は大淀先導の元、救難信号の発信源の調査に赴いていた。「生存者がいるなら保護しなけりゃならん」「それは分かってるけどさぁ…」 3
2015-08-24 20:35:45那珂はグロテスクな肉の大地を見、盛大に眉を顰めた。彼女はアイドルであり、自身のキャラクターイメージを損なうものを嫌う。「まぁ、我慢してくれ。今のところ文句を言ってるのはお前ぐらいだぞ那珂。なぁ、鳥海。お前からも何か言ってくれ」リカルドは鳥海に呼びかけた。「…」だが反応が無い。 4
2015-08-24 20:39:36「…」「鳥海?」「鳥海ちゃん?」リカルドと那珂は俯く鳥海の顔を覗き込んだ。鳥海は青褪めた表情のまま脂汗を浮かべていた。如何にも尋常でない様子!「お、オイ!鳥海!?」「鳥海ちゃん大丈夫!?」リカルドと那珂は鳥海の肩を掴み揺らす。「ひっ!イヤーッ!」突如鳥海は回し蹴りを繰り出す! 5
2015-08-24 20:45:10「イヤーッ!」「イヤーッ!」瞬時に危機を察知したリカルドと那珂はブリッジ回避!回し蹴りが過ぎ去ると同時に後方へタイドー・バックフリップを決め、距離を取った!「ど、どうしたの!」「錯乱でもしたか!?」二人はカラテを構える。前方に居た吹雪と大淀もだ。 6
2015-08-24 20:49:22数秒、沈黙が満ちる。「あ、あれ…?」しかし回し蹴り終了姿勢のまま、鳥海は正気を取り戻したかのように呟いた。「提督…?那珂ちゃん…?」「正気に戻った…のか?」リカルドは構えを解く。「も、もう。驚かさないでください!オバケが出たかと思ったじゃないですか!」「ビビりすぎだお前は」 7
2015-08-24 20:53:19リカルドは呆れた様に鳥海を見た。「鹿屋最強の名が泣くぜ」「それでも怖い物は怖いんですよぉ…」鳥海は瞳に微かに涙を浮かべ、膨れ面で抗議した。「何たるあざとさ…もしや那珂ちゃんのライバル目当て?」那珂は神妙に呟く。「違います!」鳥海はそれを否定する。「はぁ」リカルドは溜息をつく。 8
2015-08-24 20:56:10