- ryukaikurama
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「艤装を陸上用骨格に切り替えマース!」 大きな音を立て始めたバイクがまるでロボットの変形シーンのようにバラバラに分離すると、金剛の身体を包み込むように形を変える。1
2015-08-17 18:23:35金剛の手足にしっかりと密着した艤装が小さな機械音を鳴らし、小さな穴から蒸気を吹き出した。 バイクの形からロボットのような姿に変えるまでの時間はわずか数秒であり、誰かが見ていたのならば空いた口が塞がらなかっただろう。2
2015-08-17 18:23:39余りにも大それた格好になった金剛だが、深海棲艦化してしまった元艦娘の攻撃を直接受けてしまえば終わりであると考えれば、これくらいのことは当たり前なのだ。3
2015-08-17 18:23:45実際に今の金剛は素肌を一切晒すことなく、物々しい艤装に包まれて立っている。 視界を必要とする顔の部分だけは、サングラスのレンズと同じ遮光性の高い色の強化プラスチックで守られており、内側に艤装に関するデータがリアルタイムで表示されていた。4
2015-08-17 18:23:50よほどの攻撃……、さしずめ大和クラスの46センチ砲を至近距離で喰らえば耐えらないかもしれないが、深海棲艦化した艦娘は艤装を使わないことからして防御に関してはかなり高いと言えるだろう。5
2015-08-17 18:23:59もちろん金剛の身体を覆う偽装は防御だけの物ではなく、左腕には大砲のような筒がいくつかあり、右手にはバイク型の時に元艦娘を切り刻んだ大型のナイフが取りつけられている。6
2015-08-17 18:24:04「両手、両足の出力に問題ナシ……。 武装の準備も大丈夫デスネー!」 顔を覆う強化プラスチックの内側に表示された艤装のデータを確認した金剛は、強い意思を顔に出して建物の入口を見る。7
2015-08-17 18:24:11「それでは……行きマス……ッ!」 そう言った瞬間、艤装から蒸気が吹き出すと共に金剛の身体が宙を舞った。艤装が外見に似つかわしくない敏捷性を発揮し、金剛の身体を思うがままにサポートする。8
2015-08-17 18:24:18ふわりと浮いた金剛がコンクリートの地面に着地すると、足元が衝撃でひび割れて大きな音を立てた。しかし金剛は全く気にすることなく足を前に出し、建物の中へと入って行く。9
2015-08-17 18:24:28玄関にはいくつもの薬莢が散乱し、壁や床に赤い液体が付着していた。 建物の中は銃弾を発射した後に出る硫黄の匂いと鉄錆のような生臭さが充満しており、金剛は思わず顔をしかめそうになりながら通路を進む。10
2015-08-17 18:24:36「……ッ」 床には道しるべのように点々と転がっている人や元艦娘の死体があり、金剛は念のためにと艤装の電探でチェックをする。しかしそのどれもが元の姿を留めておらず、至る所が欠損してそこら中に散らばっていた。11
2015-08-17 18:24:42人の身体は元艦娘の口で。 元艦娘の身体は人が放った銃弾で。 金剛の足が奥へと進むほど現場の状況は酷くなり、目を覆いたくなってしまう。12
2015-08-17 18:24:48しかし、そうはさせないという風に電探が何かを察知する表示が映し出されると、通路の曲がり角から壁に手をかけて今にも倒れそうな元艦娘の姿が現れ、金剛を発見して両手を前に突き出しながら近寄ってくる。13
2015-08-17 18:24:53「ア……アア”ア”……ッ」 元艦娘の口からはボタボタと唾液と血液が混じり合ったモノが床に落ち、金剛を喰らおうと更に大きく開けようとする。 だが、元艦娘の身体には多くの銃弾がめり込んだ跡があり、逃げようとすれば簡単なくらい動きが鈍かった。14
2015-08-17 18:24:59金剛はゆっくりと元艦娘の姿を見つめながら、悟ったような表情で左腕を振り上げた。 左腕の大砲の下部から小さな赤い光が照射され、近づいてくる元艦娘の眉間に照準を合わせる。15
2015-08-17 18:25:05「ンァ……ッ!?」 自身の頭部に向けられる違和感に元艦娘が疑問のような声をあげた瞬間、金剛は小さく口を開く。 「……ファイア……ッ!」16
2015-08-17 18:25:11ズドムッ……! と、籠ったような破裂音と共に金剛の艤装から発射された砲弾が元艦娘の眉間に穴を開け、頭が大きく後ろに揺さぶられた。 しかし元艦娘は何ごともなかったかのように頭を元の位置に戻し、金剛を喰らおうと両腕を上げなおす。17
2015-08-17 18:25:17「ア”……?」 だが、頭部にめり込んだ砲弾の影響により元艦娘の両目がぐるりと動き、白目をむいてゆっくりとその場に崩れ落ちた。18
2015-08-17 18:25:23「………………」 照準を合わせていた左腕を下ろした金剛は、元艦娘がピクリとも動かなくなったのを確認してから小さくため息を吐く。19
2015-08-17 18:25:30すると数回の乾いた銃声と大きな悲鳴が通路の奥からあがり、金剛は表情を険しくして前を見る。 「止まっている場合じゃなさそうデスネ……ッ!」 右足に力を込めるように膝を落とした金剛は、それほど広くない通路の床に多数のひび割れを作りながら駆け出した。 続く 20
2015-08-17 18:25:35深海感染 -ONE- 第一章 その5 『陸上骨格型艤装』 完 ご意見ご感想があれば宜しくお願いいたします。
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