【ミイラレ!第十二話:古椿の小槌のこと】(実況付き)
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「うわーっ!?」体が勝手に動き、側転する。その度に注射器が通り過ぎていく!『あっぶねーなァ、本当もう!』『ナナ!?』脳裏に聞こえた声に、四季は驚く。あの小さな怪異の声が、再び頭に響いた。『天狗の姐さんから頼まれた!悪いけどしばらく体借りるぜ、大将!』20 #4215tk
2015-08-19 19:34:05目まぐるしく視界が変わる。背後からは異常を察したらしい忍の怒号が聞こえた。それに応じてやってきた『中身入り』たちの手を、四季の体は器用に掻い潜っていく。『何度も言うけど!今の俺じゃ喧嘩は無理だからな!』弁明するようなナナの言葉に、答える余裕は彼にない。21 #4215tk
2015-08-19 19:36:02そうして集まってきた『中身入り』たちへ青い反物が飛来。まとめて束ねるようにして巻きつき、動きを封じる!「四季!大丈夫!?」怜がこちらへ駆けてくる。四季もそちらに向かおうとして気づいた。忍が注射器を彼女に向け、投擲せんとしていることに!『オオオオッ!』22 #4215tk
2015-08-19 19:39:15が、怪異の背後から迫った巨躯の青鬼が戦斧を振り下ろしこれを妨害!「チィッ!」忍が身を翻し回避!回転の勢いをつけ抜刀し、斬りつける!青い鬼神はこれを斧の柄で防いだ。金属音が鳴り響く。「させはしません……!」『前鬼』の背後で、顔をしかめた良子が呟いた。23 #4215tk
2015-08-19 19:42:14四季は怜と合流する。「ありがとう、助かった!」「どういたしまして。……むしろこっちが礼を言うべきかな」周囲を油断なく見回しながら、怜。「四季を捕まえるのに『中身入り』が集まってくれたから。あとはたぶん気兼ねなく倒せる連中だけ」「そ、そうなの?」24 #4215tk
2015-08-19 19:45:06見ると、零冶や名雲たちが『がらんどう』のトンカラトンたちを少しずつ押し始めている。「……だったら、ちょっと抜けても大丈夫かな?花子さんが危ないらしいんだ」「花子さんが?」怜が眉をひそめる。事情を説明しようとしたそのときだ。四季は背後に新たな気配を感じる。25 #4215tk
2015-08-19 19:48:09『あぶねェッ!』体が勝手に沈みこむ。その頭上を何かが過ぎ去っていった。怜が目を見開く。その顔に『それ』が迫る。何者かの左手、ただそれだけが。怜が反射的に腕を割り込ませてこれを防ぐ。激突。彼女の腕が軋む音を、四季は確かに聞いた。退魔師が吹き飛ばされる。26 #4215tk
2015-08-19 19:51:04何が起こったのか。それを理解するより早く、後方で呻き声。慌てて振り向くと、何者かの右手から先が良子の首を絞めつけている。新手の怪異?『良子!』青い鬼神が彼女の方へ振り向く。その隙を突き、忍が走り出した。四季の方へ。ぎらぎらと光る目を向けながら。27 #4215tk
2015-08-19 19:54:09怪人は『中身入り』たちがもがく横を通り過ぎる。その一瞬に刀を閃かせた。分身を縛っていた反物が切り裂かれ、地に堕ちる。怪人が迫る。迫る。『……なんともまあ、情けないことだ』四季の脳裏に響いたのは巡の声。『仕方ないですかねえ……!若旦那、小槌を!』28 #4215tk
2015-08-19 19:57:03弾かれるようにして、四季は手許に小槌を呼び出す。古びた小槌は、僅かに脈打っているように思えた。『こ、これをどうするの!?』『投げてください。そこのトンカラトンに』『ええ!?』『おそらくもう霊気の供給は充分なはず。ならあとはそいつに任せてください』29 #4215tk
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