男子凍結 第二部

SF小説「男子凍結」第二部のはじまりです~ ・・・で、このあとどうなるの?(ぉぃ) ---- 第三部はこちら→ http://togetter.com/li/897436
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三十四

夢乃 @iamdreamers

「私たち、被害者がクローンであることに拘りすぎていたようね。あるいは、拘らなさ過ぎた、と言うべきか」 集まった捜査員に向けて、レナは言った。 「・・・どういうことですか?」 捜査員たちは顔を見合わせた後、サクヤが聞いた。 #twnovels

2015-10-25 23:12:44
夢乃 @iamdreamers

「私たちは、彼がクローンであるという事実、事実かどうかは断言はできないけれどまず間違いないその事実から、クローンの製造から事件を追っていた。けれど、私たちはクローン製造のための前提条件を見落としていた」 「その見落としとは?」 #twnovels

2015-10-25 23:13:03
夢乃 @iamdreamers

レナの言葉にサクヤは重ねて聞いた。レナはサクヤと他の捜査員を見回して言った。 「男性保存センターの男性、唐津戸シンイチがクローンに入れ替えられた。でも、なぜ彼だけなのかしら?なぜ彼のクローンだけ用意できたのかしら?他の男性ではなく、彼のだけを」 #twnovels

2015-10-25 23:13:29
夢乃 @iamdreamers

「・・・他にもクローンに入れ替えられている男性がいるのでしょうか?」 ナエが思ったことを口に出した。 「それはまずないわね。入れ替えるクローンを用意するには男性それぞれの遺伝子、細胞サンプルが必要になる。集めるのはまず無理じゃないかしら」 #twnovels

2015-10-25 23:13:57
夢乃 @iamdreamers

サクヤに疑問を否定されたナエはさらに可能性を問うた。 「けれど、今は男性が生まれるとその情報が即座に関係各所に通知されて、同時に細胞の採取依頼がクローン・メーカーから殺到します。毎回収集していれば、かなりの数のサンプルを集められるのでは?」 #twnovels

2015-10-25 23:14:23
夢乃 @iamdreamers

今度はアイナが反論を唱えた。 「無理ね。誕生した一人の男性から採取できる細胞は五社に制限されている。毎回採取を依頼したとしても、そう多人数のサンプルを集めることはできないわよ」 「けれど」 今度はケイコが口を開いた。 #twnovels

2015-10-25 23:14:51
夢乃 @iamdreamers

「一度細胞を採取すれば、それから複数体のクローンを造れますよね?それなら、サンプルはそれほどの数がなくてもクローンの数を揃えられるのでは?」 「それこそ有り得ないでしょう」 ミリアが即座に否定した。 「同じ遺伝子のクローンを何体も造っても意味ないし」 #twnovels

2015-10-25 23:15:18
夢乃 @iamdreamers

ミリアの言葉をサクヤが継いだ。 「そうよね。男性が異なれば遺伝子が異なる。同じ遺伝子のクローンを何体も揃えたところで入れ替えられる男性は一人だけということになる。とすると、他には入れ替えられた男性はいないことになる」 #twnovels

2015-10-25 23:15:46
夢乃 @iamdreamers

「けれど、初めから別人であるとバレることを覚悟の上で入れ替えを行なっていれば・・・」ケイコは更に仮説を続けたが、無理があると自分でも解っていたので最後までは言わなかった。 #twnovels

2015-10-25 23:16:15
夢乃 @iamdreamers

「そう。それだと唐津戸シンイチが彼自身のクローンに入れ替えられたのは単なる偶然に過ぎない、ということになる。それこそ、有り得ない」 レナが纏めるように言った。 「つまり、この男性入れ替え事件は唐津戸シンイチ一人を対象に計画・実行された、ということよ」 #twnovels

2015-10-25 23:16:46
夢乃 @iamdreamers

捜査員たちはレナの言葉に頷いた。それを見てレナは続けた。 「ということは、この入れ替えを計画した人物は、まず最初にやらなければならないことがあったはず」 「・・・唐津戸シンイチの遺伝子サンプルの入手、ですね」 ミリアがレナの言葉に続けた。 #twnovels

2015-10-25 23:17:38
夢乃 @iamdreamers

「つまり、彼の細胞サンプル、あるいは遺伝子マップの情報、そういったものを入手する必要があるから、それを入手する手段のあった者、それが第一の容疑者ということですね」 ミリアは考えつつ言った。 #twnovels

2015-10-25 23:18:09
夢乃 @iamdreamers

「遺伝子マップについては除外しても良いのでは?それだけあってもクローンの製造は不可能と思いますけれど」 アイナが言った。 「いや、遺伝子情報から遺伝子の一部を人工的に造り出すことは実現されています。まだ細胞を作るまではできないけれど」 #twnovels

2015-10-25 23:18:47
夢乃 @iamdreamers

以前、クローンについての論文を調べたケイコが言った。 「だから、発表されてはいないけれど、遺伝子情報だけからクローンを産み出すことはできるかもしれない」 「それに加えて」 レナはもう一つの条件について口にした。 #twnovels

2015-10-25 23:19:24
夢乃 @iamdreamers

「入れ替えが行われたと思われる当日、彼を指定できることを知っていなければならない。偶然に頼ることもできるけれど、ここまで周到な人間がそこだけ偶然に頼るとは思えない」 「そうですね」 サクヤはその言葉を咀嚼して言った。 #twnovels

2015-10-25 23:20:04
夢乃 @iamdreamers

「男性保存センターで一度女の相手をした男性は、その後最低二十四時間の冷凍睡眠を経ないうちは指定することはできない。だから、運悪く入れ替え日の前日に誰かが彼の相手をしていたら、入れ替え計画は失敗することになりますね」 #twnovels

2015-10-25 23:20:34
夢乃 @iamdreamers

「そういうこと。それを踏まえて」 レナは一度言葉を切ると、全員の顔を見渡してから言葉を続けた。 「これからの捜査には今の情報を加味して進める。まず、唐津戸シンイチが誕生したときに細胞サンプルの採取を依頼してきた団体、個人を調査する」 #twnovels

2015-10-25 23:21:07
夢乃 @iamdreamers

「すみません」 ナエがレナの言葉を遮った。レナは目顔で続けるように促した。 「彼の誕生は六十年以上前です。クローン研究が活発になったのは五十年ほど前からですから、細胞サンプルの提供は当時はなかったのでは」 「その可能性もある」 レナはナエの言葉に頷いた。 #twnovels

2015-10-25 23:21:37
夢乃 @iamdreamers

「けれど、それならばそれで、彼の細胞がどこかに提供されたことはない、という確証を得るために、確認しなければならない」 「はい、確かに」 ナエは頷いた。 「それから、彼が産まれてから今まで、彼に接触して細胞を採取できた人間を洗い出す」 #twnovels

2015-10-25 23:22:10
夢乃 @iamdreamers

「それはちょっと大変ですね・・・けれど、男性は全員生活を管理されていますし、なんとかなると思います」 「ならなくても、しなくちゃいけないんだけれど。それから、二十年以上前に、センターで彼を指定した女性についても全員調べる」 #twnovels

2015-10-25 23:22:43
夢乃 @iamdreamers

「センターに訪れた女性を全部、ですか」 「そう。彼と行為を持った女性だけね。そこでも細胞を入手できる可能性はあるから」 「わかりました」 「それから、寄那濱中央男性保存センターの男性の活動記録へのアクセス履歴も調べて」 #twnovels

2015-10-25 23:25:34
夢乃 @iamdreamers

「特に、入れ替えられた前後の日時を、ですね」 「そう。それに、今までの調査も引き続きお願い。けれど、優先するのは今言った調査の方で。何か質問は?」 誰も何も口にしなかった。 「それじゃあ、今の方針で調査をお願い。由利素さん、新しい分担は任せるわ。では、解散」 #twnovels

2015-10-25 23:28:03
夢乃 @iamdreamers

前代未聞の大事件、男性入れ替え事件の、行き詰まっていた捜査に新しい道が見えた。ここからが本番だ。レナはタブレットでこれまでの捜査資料を読み返しながら考えていた。 #twnovels

2015-10-25 23:28:45

第二部 完

第三部へつづく

まとめ 男子凍結 第三部 第三部、開始です。 ---- 第四部はこちら→ http://togetter.com/li/978294 2958 pv 28

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