『スエズ鎮守府VSラブホテル鎮守府合同演習~変態の夏、パンツの夏~』その2
- hennui_kisaragi
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「ジャンケンの勝敗を理解する速度。その刹那で、攻勢は武器を手に取る瞬発力。守勢は迫る攻撃に怯まず防御を行う胆力。といったものだな」 後ろを振り向けば、そこにいたのは磯風。 「なんだお前、このゲーム詳しいのか」 そう尋ねると、彼女は「まぁな」と肩にかかった髪を払う。 #スエズ鎮守府
2015-08-22 21:13:04「叩いてかぶってジャンケンポン陽炎型トーナメント2回戦敗退のこの磯風、今回の種目には一家言あるぞ」 「クソザコじゃねぇか」 「なんで胸張ってんのさ」 「フッ……浜風は強敵であった……」 昔を懐かしむようなキメ顔をするアホ風を適当にあしらい、俺は長門に目を向ける。 #スエズ鎮守府
2015-08-22 21:16:09理解力と瞬発力。その2点に於いて、我らが長門はといえば、 「……駄目だ望月、あいつアホだった」 「せめてしれーかんは信じてあげてよ……あたしは無理だけど……」 「えぇっ、長門さん負けちゃうのっ?」 そんな目で見ないでくれ清霜。 「長門も頑張るからな、応援しような」 #スエズ鎮守府
2015-08-22 21:23:53馬鹿ではないがアホの長門は、スイッチが入るまで理解力も期待できない。瞬発力は低速戦艦故のハンデもあるだろう。 救いといえば、相手の山城も同様に低速艦ということだが……それがどの程度なのかは分からない。 そんな中、長門が相手より勝っていると断言できる点は一つだけ。 #スエズ鎮守府
2015-08-22 21:29:18「勝てるとしたら耐久戦……デスマッチに持ち込めば、あるいは」 遥か遠くに見える自分の部下を見つめ、俺は右の拳を強く握る。 その人差し指には、砕けた波の意匠が施された指輪が光を反射していた。 #スエズ鎮守府
2015-08-22 21:32:43ディスプレイが表示されているそれはここにいる全ての者を凍りつかせた。 戦艦同士の砲撃戦でもなく、古き良き時代より語り継がれしバラエティ番組の対決の一つ、叩いて被ってじゃんけんポン。それを今から長門、そして山城は対決する。 余りにも、馬鹿馬鹿しい戦いであった。 #変態不知火さん
2015-08-23 15:26:06されども大淀は気にせずにルールの説明を行う。 『ルールは簡単です。先に五回ポイントを先取した者が勝ちとなります。いいですね?』 「……一つ質問、してもいいですか」 控えめに手を挙げたのは山城。その表情には緊張感などまるでない。 『どうぞ』 「貴女は馬鹿ですか」 #変態不知火さん
2015-08-23 15:28:27『それでは試合開始ーっ!』 完全に無視して大淀は進行を始める。山城は大きくため息をつくも長門に向き合う。 「とりあえず手早くやりましょう。鋼鉄の武器と防具、というのが気になりますが……。長門さん?」 山城の言葉に反応はなく、スエズの長門はある一点を見つめている。 #変態不知火さん
2015-08-23 15:30:45様子がおかしい、そう感じるも大淀は容赦なく進行を続ける。 『ではいきますよー! 叩いて被って、じゃんけんポン!』 渋々出した山城の出した手はパーを、そして長門は硬く握りしめたグーを出した。そしてすかさず勝者は鋼鉄の重量感あるハリセンを敗者に振るう──ッ! #変態不知火さん
2015-08-23 15:33:44「痛いッ!? なんでよ!?」 そして山城の頭部をハリセンで長門がぶっ叩いた。 『長門さん、反則です』 「何故だ、敵を撃滅するのに戦わずしてどうする!」 ぐっと拳を握り力説するも反則は反則である。 『……えー、山城さんに1ポイント』 「痛い……不幸だわ……」 #変態不知火さん
2015-08-23 15:35:57長門の怪力と鋼鉄のハリセンによる頭部への強撃は山城に確かなダメージを与えた。血がつー、と流れて白き装束に紅い点が沁みていく。 「長門さん、つかぬことをお聞きしますが」 「なんだ」 反則をしたのに腕を組み、何故か偉そうな長門。 「ルールはご存じですか」 #変態不知火さん
2015-08-23 15:39:15「馬鹿にしないでもらおう。生き残った者が勝者だ」 「すみません今からでも棄権出来ますか」 『駄目です♥』 情け容赦ない大淀の宣告に山城はがっくりと肩を落とす。 「いいですか長門さん、じゃんけんに負けたらヘルメットを使うんです。わかりました?」 「これか。了解だ」 #変態不知火さん
2015-08-23 15:41:14「本当にわかっているのかしら……」 『ではいきます! 叩いて被ってじゃんけんポン!』 続いて繰り出す長門の手はチョキ。そして山城はグーを突き出した。勝った。今度こそとハリセンを手に取る山城とヘルメットを取る長門。良かった、やっと理解した。そう安心してハリセンを #変態不知火さん
2015-08-23 15:43:28振ろうとした瞬間、長門はヘルメットを球技のボールよろしくそれを山城の顔面は向けてフルスイング! それをモロに食らった山城は後ろへ倒れこみ、一瞬だけ気を失うも復活。 「やっぱりわかってないじゃないですか! 見てください鼻血出ましたよ!」 「戦場で流血は付き物だ」 #変態不知火さん
2015-08-23 15:45:47「ほんっと、ほんっとにこの人駄目です! ルールをわかってなくてただのどつきあいだと思ってる人相手に勝負なんて出来ません!」 『長門さん、また反則です』 「む。そうなのか。奇妙な競技もあるものだ」 腕を組みうんうんと一人頷く長門。 #変態不知火さん
2015-08-23 15:47:55提督「……」 望月「やめっ、つらいのは分かったから無言でスカートに頭突っ込むなよっ、やめろってぇ!」 提督「もぉおおおおおおお長門アイツ何なのぉおおおおおおおお!?」 望月「顔を埋めて叫ぶなーっ!」 #スエズ鎮守府
2015-08-23 20:06:36二度も反則をしてしまった長門に、流石にまずいと考えたのか、大淀は恐る恐る言う。 『長門さん、この競技のルールは、じゃんけんに勝った者がハリセンを持って叩くんですよ』 「そのようだな。私としては一刻も早く殴って勝ちたいが」 「どつくことしか頭にないんですか」 #変態不知火さん
2015-08-24 09:28:18すると長門は誇らしげに胸を張る。 「それこそが戦艦の華。殴り合い、どちらかが沈むまでやる。それこそが戦艦の使命だろう山城」 「そこで私に振らないでください。一緒にされるの迷惑なんで」 「む。扶桑型と長門型では思考が違うのか」 「貴女が特別脳筋なんです」 #変態不知火さん
2015-08-24 09:31:16大淀は苦笑を浮かべながら続ける。 『長門さん、デモンストレーションしましょう。これはポイントが加算されませんので本気になる必要はありません』 「私はいつでも本気だ」 それこそがビッグセブンであると言わんばかりである。 「そのせいで私が流血してるんですけれど」 #変態不知火さん
2015-08-24 09:34:10『兎に角、じゃんけんをして長門さんはじゃんけんに負けたとします』 すると長門は床をばんと叩いて激昂する。 「なぜ例えが私の負けなのだ!?」 『デモンストレーションなので。あと実際じゃんけんでは二連敗してますからね長門さん』 「む」 漫才のような何かが始まった。 #変態不知火さん
2015-08-24 09:36:42『じゃんけんで負けた者はヘルメットを取ります。ハリセンを持ってはいけません』 「うむ」 『そしてそのヘルメットを』 「相手に投げる」 『それが反則なんです! ヘルメットで防御してください』 「防戦していては負けるぞ! 沈みたいのか」 『これは海戦じゃないです!』 #変態不知火さん
2015-08-24 09:39:28『この上なくシンプルなルールなのに何故そう相手を倒そうとするのですか。もうハリセンチャンバラに種目替えしますか?』 「私が死ぬのでやめてください」 そこは冷静に突っ込みを入れる山城。誰だってそうだ。そんなルールにしては思いきりボコられるのは目に見えている。 #変態不知火さん
2015-08-24 09:41:21『繰り返してください。じゃんけんで勝てばハリセンで相手の頭部を叩く』 「頭部を叩く」 『じゃんけんで負ければヘルメットでそれを防御する』 「ヘルメットで防御」 『その前にハリセンがヒットすればポイント。ヘルメットで防がれればポイントは入らない』 「理解した」 #変態不知火さん
2015-08-24 09:44:24『漸く長門さんにルールが通じました。これで駄目ならハリセンチャンバラになっていましたよ』 長門はうんうんと頷き、山城に頭を下げる。 「私は山城に無礼を働いたようだ。すまない」 「いえ、いいんですけど……。ポイントも私が二点リードしてますし。怪我には慣れてます」 #変態不知火さん
2015-08-24 09:46:48