『スエズ鎮守府VSラブホテル鎮守府合同演習～変態の夏、パンツの夏～』その２

高峯みやび @sukamelancholy

「誰にも抜けなかったエクスカリバーを抜いてみせた……まさかこんなところで王のUTSUWAに出会うとは」 スエズの磯風が何故か瑞鶴に対してライバル心を燃やす。 「よくわかんないけど、頑張って、山城さん」 ラブホテル鎮守府の瑞鶴はそのまますたすたと去っていった。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

『え、えっと、試合再開です』 瑞鶴の意外な怪力が判明したが、長門と山城の戦いはまだ続いている。両名は互いの目を見つめ、今か今かと合図を待っている。 『叩いて被ってじゃんけんポン！』 じゃんけんの結果にいち速く動けたのは長門。今度こそはと渾身の一撃を喰らわせる！ #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

それを山城は回避、正座の状態は変わらずにそのままヘルメットを被り、防御しようとした瞬間。 山城を捉えられなかったハリセンは床に叩きつけられたが、そのまま長門は勢いを殺さず、力のままに横回転！ 遠心力を得たその一撃は正に、一撃で沈めんとする必殺となる！ #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

そして長門のハリセンは山城をヘルメットごと殴打！ 並の人間ならば首の骨すら粉砕されるそれを、山城は受けきってみせた！ 「……がふっ」 しかしダメージは入った。度重なる鋼鉄のハリセンによる攻撃は、山城の耐久力を確実に奪っていたのだ。口から吐血する山城。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

しかし山城は倒れない。倒れてなるものか。指輪で力を借りているというのに、このような無様な姿を見せ、尚且つ敗北など許されない。 「やるな」 「まだ私を殺《ト》るには足りません」 「その胆力、称賛に値する」 「……。一つ勘違いをされていますね」 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

『叩いて被ってじゃんけんポン！』 「長門型だからと言ってッ！」 武器を手にしたその勢いをあえて殺し、その動作の正反対側へと振りかぶる！ 「……ご、ふっ」 その素早い動きに間に合わず、長門のこめかみにめりこむハリセン。 「……必ず扶桑型に勝るとは限らないのですよ」 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

『山城さん、追加点。マッチポイントです』 静かに、されど力強い川流れのごとく。 僅かな動作で着実な一撃を繰り出す山城と、大振りで且つ強力な一撃を振るう長門。その差が現れてきていた。 「無礼、だったか」 ハリセンがめりこみながらと長門はゆっくり瞼を閉じる。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

「……しかして私もスエズの長門。伊達に指輪を授かった艦娘ではない」 あと一点で勝負がつくというのに、長門はむしろ熱くたぎっていく。そう、まだ自分は生きている。呼吸が出来る。腕も脚も動く。闘志は未だ萎えず、より増していく。 ならばこの長門、戦に負ける道理はなし！ #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

「往くぞッ！」 『叩いて被ってじゃんけんポン！』 ハリセンを手に取り、長門は山城に急接近！ 斜め下からの斬り上げは、山城の顎を打ち抜いたあの時以上の速度を出していた。そして長門の刃は山城のこめかみを殴り抜き、ついに山城は床に倒れこみ、ダウンした。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

「どうした、山城。立たないのか」 「……敵の心配なんて、無用です」 山城4ポイント。長門3ポイント。徐々にリードは縮んでいく。ここで山城は視界がぶれ始めている事に気付くが、弱音は吐かない。勝負は続いている。ならば、続けるしか道はない。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

『いきます。叩いて被ってじゃんけんポン！』 ……一瞬、視界がお互いの手を見えなくした。ぶれてしまったのだ。そして自分がどの手を出したかすらも、思い出せない。 ――しまった。 眼前へ襲い来る鋼鉄の暴力が、山城を打ち抜いていく。 暗転。空が消える。逆転する陸と空。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

耳鳴りがする。 暗い。 今自分は沈んでいるのか、それとも。 沈んでいるのなら、浮き上がらなければ。 残している人がいる。 それは誰だったか。 思い出せない。 記憶が遠い。 嗚呼、私は。 このまま水底へと逝ってしまうのか。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

『それで？ ご立派に戦ったのかよ？』 ――五月蠅い。 『大見栄切ったの誰だっけかな？』 ――黙って。 『なら反論してみせろよ。証明してみせろよ』 ――今やるから、黙ってそこから見ていなさい――ッ！！ 『……おうよ』 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

視界は紅。自分の血がそれを染めていた。起き上がり、そして拭う。 「……お待たせしました」 腕を組み、じっと待っていた好敵手はにやりと笑う。 「いや、そこまで待ってはいない。さぁ、続きを」 「えぇ」 身体はボロボロだ。特に頭部は常にがんがんと音が響いている。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

しかしそれは相手も同じ。何度も叩きこんだ攻撃は、確実に効いている筈なのだ。ならば勝てる。勝負は終わっていない。ここから、確実に相手を倒す。 相手は長門型、その一番艦。聯合艦隊旗艦を務めた栄光ある戦艦。だが、それは山城も同じ。旗艦としての誇りが、確かにある。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

『参ります！ 叩いて』 その背中に背負った重み。 『被って』 お国を護り、お国の為に戦った。 『じゃんけんポン！』 その誇りは、両者とも譲れはしない尊きものである――！ #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

最早両者ともじゃんけんの勝負など目に移らず、両者とも手に取ったのは武器！ どちらも勝利へ王手をかけたならば、防御に徹するなど愚の骨頂！ 長門も山城もハリセンを手に取り、鍔迫り合いが始まった！ #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

正座の状態から立ち上がり、そしてどちらも頭部を打ち抜く為に技を繰り出す！ 山城の横薙ぎの一閃を回避、その隙を突き長門の一撃が山城に迫る！ だがそこで山城は正反対の方向へもう一度ハリセンを薙ぐ！ 弾かれ、そして互いに距離を取る。 #変態不知火さん

アフリカの星逆 @Hoshisaka_RevSt

清霜「長門さんいっけぇー！」 望月「うっわぁ……」 弥生「……望月、引いてる」 卯月「同じ駆逐艦とは思えないぴょん。何たるドライ」 #スエズ鎮守府

高峯みやび @sukamelancholy

猛る。そして吠える。戦艦としての意地、聯合艦隊旗艦としての誇り。それらがぶつかり合う。 そして両者は同じ太刀筋で戦う。連続する鋼鉄の咆哮。火花すら散り、長門と山城の閃劇は速度を増す！ 二人は語らない。戦いこそが対話。譲れぬものがあるのなら、それを武器にするまで！ #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

「おぉぉぉッ！」 「あぁぁぁあッ！」 血を撒き散らしながらも尚力を増す二人。限界を超え、それでも戦いを辞める訳にはいかない。 我らは艦娘。戦わずして何が艦娘か。 そして山城は筋肉が、骨が軋むのを無視して脅威の速度で一度、二度とハリセンを振る！ #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

「させる、かぁぁぁッ！」 同じく長門も自身の身体の負担など顧みず、防御ではなく攻撃を繰り出す！ 相手が二度連続して攻撃してきたのなら、それを超える力を！ 何もかもを叩き潰す為の力をここに！ #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

――そして。 長門は横からハリセンを、山城は脳天にハリセンを受ける。 「……フッ、中々やる」 「……引き分けなんて、不幸だわ」 笑みを浮かべ、両者は同時に崩れ落ちた。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

鉄同士の共鳴から一転、会場は沈黙に包まれた。全てを賭けて戦った二人は同時に倒れ、立っている者は居ない。 『……こ、これは』 司会進行の大淀は戸惑い、しかし首を振る。 『両者、引き分け！』 どちらも全てを出した。出し尽した。文句を言うものは言えばいい。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

最後の聯合艦隊旗艦、大淀がここに下す。 『長門さん、山城さん。素晴らしい戦いでした。お二方の健闘に、拍手を』 大淀の声に応じて起こる拍手。何もかもを出し切った二人に、送られる。 『……あと、救護班、急いでお二人を入渠させてください』 #変態不知火さん