「スラムダンク」と「バガボンド」に見る人間論

フォロワーさんのツイートをですが、非常に奥深い洞察なので勝手にトゥギャらせて頂きました。 「キャラクターのドラマを描く事が果たして人間を描く事になるのか?」との問いに対する、井上雄彦氏の作品が示す一つの答え。
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@chisatonton

バガボンド、スラムダンクの井上先生の漫画は今、漫画と呼ばれるモノで「人間を描く」という事をやってる唯一の漫画と思える。

2011-01-06 21:37:32
@chisatonton

そもそも、人間を描くッてなんだろう?ドラマの基本は人間を描くことだろうが、果たしてそれをどれだけの漫画家、いや漫画でなくとも小説やドラマがやってるのか?俺は、最近井上先生の漫画を読んで彼が描いてて他の大多数の作家が描いてないものに気付いた。

2011-01-06 21:39:38
@chisatonton

ストーリー漫画の基本はドラマの連続であり、ドラマの基本は人間を描くことであると、誰かが言っていたが、「キャラクターのドラマを描くこと」が果たして人間を描くことになるのか? その事に長年疑問を持ってきた。井上先生の漫画にはその回答が示されてるように思えた。

2011-01-06 21:46:46
@chisatonton

そもそもスラムダンクはスポーツ漫画としては異色の存在だ。主人公、自称天才の桜木がそもそもチームを引っ張ってるわけじゃない。いや、それ以前に主人公としてかなり目立ってない。それまでのスポーツ漫画の主人公は少なくとも、チームを引っ張る存在でどのキャラよりも飛び抜けた存在として描かれた

2011-01-06 21:58:26
@chisatonton

要するにスポーツ漫画の主人公と言えば「エース」だ。それでもアイツなら何とかしてくれる、のがスポーツ漫画の主人公だった。だが桜木はそうはならなかった。シュートなら三井が、フットワークなら宮城が、圧倒的な存在感ならゴリ、そもそも流川と言う本物の天才がいる。

2011-01-06 22:01:09
@chisatonton

そんな主人公がありうるのか?少年漫画の主人公が殆ど語られることない、客観的な部分でしか語られないなんて普通あり得る?なぜなんだろう?作者が桜木が嫌いだからかとも思ったwそれはともかく、彼はスポーツ漫画の主人公、もっと言えば少年漫画の主人公にしては地味な存在なんだよね。

2011-01-06 22:06:13
@chisatonton

不思議なのだがスラムダンクという漫画で、主人公が語られた事は実は一度もない。正確には桜木自身が自分のことを回想する場面は全くない(一回あったぐらいだが)。要するに客観的な所でしか語られた事がない。過去がようするに見えてこない。他のキャラクターは、三井なんかしつこいぐらいなのに。

2011-01-06 22:03:53
@chisatonton

井上先生はある時点まで確かに、少年漫画の主人公として桜木を描いてたと思う。前半は「素人丸出しの不良が好きな女の子のためにバスケを始めてみるみる存在感をあらわにする」というまさしく王道のパターンだ。コレでも良かった。面白かった。でも多分だけど当人、途中から気が変わったんじゃないかな

2011-01-06 22:10:28
@chisatonton

おそらく最初は「バスケットボール」を主題にした漫画を描きたかっただけなんだよ。それが途中からどうも「バスケを通した人間のドラマ」ひいては人間を描く、ってトコに興味が変わったんじゃないかと思う。 それが桜木ってキャラの立ち位置を変えたと思う。

2011-01-06 22:12:55
@chisatonton

このスラムダンクを通して描くべきものを見つけた井上先生が出した答えは、全て、そう全て山王戦に集約される。それまで描かれた物語はすべてこの山王戦のためにあると言ってもいいぐらい。そしてバスケという題材を通して井上先生はようやく「人間を描く」事にたどり着いたんだ。

2011-01-06 22:15:45
@chisatonton

そもそも、俺らは一人の人間であると同事に、「この世界の中で生きてる一人」でもある。そしてこれは誰も例外はあり得ない。どんな偉人だろうがここから外れないんだ。そしてその中で自分の役割を果たして生きている。だから人間が一人で生きることはありえないし、常に誰かと誰かが影響し合っている。

2011-01-06 22:18:23
@chisatonton

流川が海外にいくと安西先生に相談した際の安西先生にまつわるエピソードは、その後の山王戦で追い詰められる翔北一人一人の心境に関しての伏線である。自分がチームを引っ張るんだ、と言う強い思いがチームを逆に追い詰めていく。何故ならば、バスケにおけるコートはこの世界の「縮図」にほかならない

2011-01-06 22:25:08
@chisatonton

自分が相手に通用しない、勝てない、だから負けるのだ、と言う「思い上がり」。そこで初めて三井や宮城、赤木に天才の流川でさえも自分が「コートと言う世界の一人の人間でしかない」事を理解する。そしてそこで桜木自身も自分がその世界で何者であるかを初めて理解するのだ。

2011-01-06 22:29:48
@chisatonton

かつてそんなスポーツ漫画があり得ただろうか?勝つために辛酸をなめ努力をし猛特訓をし選ばれた人間だけが勝利を手にする、それがスポーツ漫画で描かれた世界だった。スラムダンクの主人公達も同じではある。ただ、他の漫画と違ったのはスラムダンクでは誰もが「特別ではない存在」、「一人の人間」

2011-01-06 22:32:32
@chisatonton

それは才能とかそう言う事ではなく、その世界に生きるあくまで一人の人間だと言う事だ。 そしてその縮図こそが「バスケットコート」なのだ。そのコートでは天才も凡人も一人の人間に過ぎない。だから一人だけでは意味がない、勝つための己が何者か(役割)を理解出来た五人だけが生き残れるのだ。

2011-01-06 22:36:30
@chisatonton

桜木が過去何をしてきたのか、どう生きてきたのかというのは全く描かれていない。何故なら必要無かったからだ。「オヤジ、俺には今この時が全てなんだ」(だったと思う)という彼の台詞は、桜木と言うキャラの作品での在り方をよく物語った一言だと言える。

2011-01-06 22:42:15
@chisatonton

本当なら、もっと華やかに活躍したであろう桜木もあり得たはずだ。そう描くことに作者が意味を見いださなかった。その桜木では彼が目指す「人間を描く」事は出来なかったし、むしろ目障りだったはずだ。だから桜木はゴール下でのみ輝いた。「リバウンド王桜木」として。

2011-01-06 22:45:37
@chisatonton

俺がボールを取れば、シュートなら三井がいるし、足ならりょーちんがいる。頼れるゴリもいるし、ムカつくが流川に廻せば間違いはない……自分が何をどうすればいいかを理解した瞬間に、彼は「自称天才」ではなくなって一人の「優れたバスケットボールプレーヤー」として成長することに至った。

2011-01-06 22:48:54
@chisatonton

それはコートという世界の縮図で自分が何者かを知るという事に他ならない。人間の成長は自分が生きる世界で自分が果たす役割を理解したモノのみがあり得るのだ……と勝手に思っているがそれが正しければ、その小さな世界で飲みに於いて桜木は自分が何者であるかを理解した。だから「この時、今が全て」

2011-01-06 22:53:10
@chisatonton

そのキャラクターの過去や生き様がどうだったとか、それはそのキャラを描いてるに過ぎないんであって、決して人間を描くことにはならない、と思う。本当に必要なのはそのキャラに取り巻く状況や世界が存在してその中でどう生きてどう考えて理解していくのかと言う過程のみが「人間を描く」事に繋がる

2011-01-06 22:55:09
@chisatonton

だから、最後のシュート桜木はダンクですらなく、ただのシュートで決める。「右手は添えるだけ」。ただ自分が何をすべきか理解した男の成長の証。

2011-01-06 22:57:38
@chisatonton

最も彼の成長だけでは意味がない。翔北の五人全てが自分の役割を理解するという部分にこそ意味がある。何故ならバスケは五人でやるスポーツだ。コートという小さな世界の更にもう一つ「チーム」と言う世界がある。その中でそれぞれが役割を理解しなければチームと言う世界は廻らない。

2011-01-06 23:00:47
@chisatonton

スラムダンクという漫画のすごいところはそれを最後の最後でようやく描いたところにある。 全員が最後にその事を理解するトコで終わる。普通なら途中で理解すべき部分、もっと言えばバスケの一番重要な部分であるはずなのに。

2011-01-06 23:02:44
@chisatonton

何故だろうかと考えたが、一番はその事を理解することが人間を描くと言う事に於いて重要な「この世界で自分が何者であるか」という部分をそこに託したからではないかと思う。

2011-01-06 23:04:16
@chisatonton

一方でバガボンドという作品でもやはり同じく、今度は「バスケ」を「剣の道」に置き換えて描いている。 剣の道を追い求める武蔵の生き様こそ、「人間を描く」題材に最も相応しかったに違いない。何故なら武蔵の示した剣の道こそが人間の在り方を捉えているからだ。

2011-01-06 23:09:43