アタッチメント地獄変~super mario alive in love

歴史とは記述であり解釈である,的な
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白象 @elephantcalli

当時、自分は精神分析の先生のところに所属していて、学外で自己心理学の研究会とかに出ていて、学内ではそうして愛着の読書会をしていて、まあ今とあまり変わりのない感じですけど、自分は何をしていくんだろうか、という迷いはありました。研究も臨床も。

2015-09-07 15:18:06
白象 @elephantcalli

自分が大学院にいた頃ってまだ心理療法の3大流派とかが言われている頃で、臨床心理学が心理学と対立している時で、認知行動療法はまだ勃興していなくって、代わりにブリーフセラピーによる精神分析批判とかNLPやらEMDRやらが紹介されつつある時だったのですよ。

2015-09-07 15:20:19
白象 @elephantcalli

愛着理論が対象関係論(クライン派)から分岐してきたんだということが分かって、研究と臨床の一貫性という意味で自己心理学から対象関係論に軸足が移ると共に、愛着理論の理解を進めていくわけですけど、それをやりながら、いずれ精神分析が実証性を問われた時にこれが必要になるなと思っていました。

2015-09-07 15:22:57
白象 @elephantcalli

これも当時の動きですけど、SCの全校配置が決まってその業務が何かと問われるなかに、危機介入みたいなものが含まれたりして、当時はまだブリーフィングの時代だったわけです。そうすると子供全員にブリーフィングして意味あるの? 寝た子起こさない? とか基礎系の人に言われたりするんです。

2015-09-07 15:24:50
白象 @elephantcalli

で、学校において特定の子供だけをピックアップすることの実際的な難しさがあるからね、と言いながら、将来の臨床心理学の1つの重点は、誰に何を提供するのかをどうやって判断することになるか、というアセスメントの問題だろうなとか思ったわけです。今でもそれは重要だと思いますけど。

2015-09-07 15:26:13
白象 @elephantcalli

その議論では当然実証的なデータが物を言うようになるだろうと、大学院の終わり頃には認知行動療法がエビデンスを携えて登場してきたわけで、いずれそのフィールドで精神分析も勝負しなきゃいけないだろう、その時に愛着理論はその外堀になるだろうなという予感があったのですよね。

2015-09-07 15:27:21
白象 @elephantcalli

そんなことを考えている間に海外では、臨床と愛着理論の最接近というようなことが起こっていて、ちょうど社会人格心理系でミクリンサー、シェーヴァー、フレアリーあたりがどんどん成果を出していた時に、その裏で臨床家たちは愛着理論をそれぞれの実践に取り入れていったのです。

2015-09-07 15:29:17
白象 @elephantcalli

取り入れ方の1つは喪失と悲嘆の研究、安全基地概念、AAIによる語りの形式にインスパイアされた心理療法の聴き方と介入、これは特に愛着パターンによる際として語られるわけですけど、この愛着パターンの発想は家族システムの分類、治療者との相性、など各方面で取り上げられていました。

2015-09-07 15:31:50
白象 @elephantcalli

この当時の愛着理論の臨床への応用というのは、愛着パターンの導入を基盤とするもので、自分の博論もその流れに沿ったものでしたが、今ではだいぶその要素は薄れてきましたね。当然ですが、3ないし4パターンで類型化するよりもそれを構成する特性論的観点の方が使い手があるわけです。

2015-09-07 15:33:33
白象 @elephantcalli

今の愛着研究と臨床の接点は、パーソナリティ発達の一貫性の実証的基盤として、それからより愛着概念の中核である不安の制御の枠組みが取り上げられるようになり、それを親子関係の改善の中心に据える親−子心理療法として、成人の心理療法の対人的交流面への適用として、展開しているように思います。

2015-09-07 15:39:31
白象 @elephantcalli

類型から特性へというのは心理学の研究、実践がしばしば取る1つの経路だと思っていますが、愛着理論も臨床との接点は、始め類型論なのですよね。今でも心理療法のアウトカムとしてAAIを使うということがありえて、その時には類型論がやっぱり有用だろうなと思いますけどね。

2015-09-07 15:41:01
白象 @elephantcalli

ああ、当時の愛着理論と臨床との接点で1つ忘れていた。当然、その頃にはもう無秩序/無方向型ないしは未解決型がハイリスクであるということは知れ渡っていて、その解離 、うつ、不安障害との関連なんかはしっかりと議論されていました。この辺にクリッテンデンのDMMとかの発展もあるわけです。

2015-09-07 15:42:52
白象 @elephantcalli

日本でそうした海外の動きが紹介されたのは、やはり「アタッチメント」「アタッチメントと臨床領域」の2冊が出たくらいではないでしょうかね。それと前後してフォナギーの訳本が出て、その頃にはいくつかの学会で継続的に愛着研究に取り組む人たちが現れてきたように思います。

2015-09-07 15:45:05
白象 @elephantcalli

ハンドブック・オブ・アタッチメントの翻訳企画も話に上がったことはありますが、まあ研究やるんだったらあれくらい英語で読めば良い、ということになって流れたり、当時の愛着シーンを引っ張っていった先生たちは(今でもですけど)、なかなかストイックですよね。どこも創成期はそうですけど。

2015-09-07 15:46:33
白象 @elephantcalli

何かこうやって振り返ってみると、当時愛着理論として焦点を当てられていたものと、今焦点を当てられているものはだいぶ変わってしまったんだなと、もちろんそれはそれぞれの理解と適用が進んだということなのだと思いますが、そう思わされますね。愛着心理療法というものがないのは相変わらずですが。

2015-09-07 15:48:18
白象 @elephantcalli

誰に何を提供するかをどうやって決めるか、そのための研究の蓄積、臨床活動の中で愛着の占める位置、子供と大人の臨床での違い、何かは今でも考え続けるところですけど、自分の関心は犯罪の方に移っていったので、今、精神科領域ではどうなっているのかなということにはちょっと疎くなっています。

2015-09-07 15:51:33
白象 @elephantcalli

あとはまあ、あれですね、大学院時代臨床系の友達っていなくて、何かと基礎系の友達と一緒にいたのが良かったのか悪かったのか、自分の方向性を決めたところはあるだろうなと思う。当時精神分析と愛着とを跨いで指導してくれる人もいなかったので、読書会メンバーにだいぶ助けられたなと思うし。

2015-09-07 16:02:47
白象 @elephantcalli

立ち上がりの時期って何が起きてるんだか分からないけど勢いはあって、その流れに乗りながら自分の中であれこれと体系づけていくわけだけど、その苦労は孤独であったにしても、たまたまそういうところにいることができたのはやっぱり幸運だったなと今にして思うのですよね。

2015-09-07 16:06:22
切り取り線 @kiri_tori

✄------------ 9/13(日) -----------✄

2015-09-13 00:00:00
白象 @elephantcalli

今日の講習で強調したのは、愛着の観点を臨床に活かすとは、愛着システムの活性化を見るということだ、ということでした。愛着を教科書的に定義すると、「子どもが主要な養育者との間に形成する情緒的な絆」ということになるわけだけど、この定義では臨床場面で使いづらい。

2015-09-12 22:56:27
白象 @elephantcalli

愛着の生物学的な機能は生存を果たすことであり、そのための目標は近接を維持することなわけです。つまり、不安や恐怖を感じる状況で、特定の養育者との距離を縮めること、が愛着システムの機能だと考えられるわけですが…みたいなことを説明しようかと思ったけど、児童福祉領域の人には分かりにくい。

2015-09-12 22:58:20
白象 @elephantcalli

なのでこんな風に。ボウルビーの最初の研究は44人の盗癖児の研究で、心理検査、精神医学的診察、生育歴の聴取をしたところ、取り出されたのは幼少期に分離の経験があるということでした。それからWHOの依頼で子ども達の精神健康の発達について調査をして、母性剥奪の影響というのを報告します。

2015-09-12 23:00:15
白象 @elephantcalli

当時は戦後でたくさんの疎開児童、戦争孤児が生み出されていて、児童福祉の対応が急がれていたわけです。その頃に、ロバートソンという人が「2歳児、病院へ行く」というフィルムを撮りました。当時、子どもが入院するとなると親とは会えないのが当たり前だったわけです。それがどんな影響を与えるか。

2015-09-12 23:02:07
白象 @elephantcalli

ロバートソンはそのことをフィルムに記録していって、親からの分離が子どもに与える影響を目に見える形で示したわけです。それと、ハーロウの実験。針金で出来た、ミルクの出る母親と毛布でできた、何もない母親があると、子ザルは毛布の母親にくっついて、特に恐怖の場面ではそうでした。

2015-09-12 23:03:42
白象 @elephantcalli

こうしたことからこう言えるわけです。生存のために食べ物が必要であることと、安心感のケアが必要とされることは別であること、ケアは誰からされても良いのではなく特定の対象である必要があること(でなければ病院での分離の反応は現れない)、その有無が子どもの精神健康の発達に影響すること。

2015-09-12 23:06:09