【鬼の章:第0幕「予感」】#0

東方鬼翔天血の【鬼の章:第0幕「予感」】#0のまとめです
0
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

明くる日の幻想郷。「春」の季節に入り、それまでの冷たい風は一変、暖かな風が流れ始め、季節の移り変わりを呼び寄せた。芽吹いた桜の景色に、緑で生い茂る世界は、正しく幻想的。照らす太陽の日の光を浴びて、快活よく木々は目覚める。さて、それでは視点を守矢神社に移動させてみよう。 #1

2015-08-18 22:06:02
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

境内では春の微風に揺られて、暖かな空気に包まれていた。石垣の上で寝るのは、守矢神社に陰陽師として住むこととなった青年、焔神槙治である。罰当たりのような行為にも思えるが、実のところ守矢神社に来る参拝客は、此の所は妖怪が多い。また、自分に気が付かず去ってゆく妖怪も多い。 #2

2015-08-18 22:09:13
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

「ぐぅ」情けない声を上げて起きる。小石が風に吹かれて額に当たったのだった。「っっぅ〜〜……よく眠りました、と」それまでの眠そうな態度を一変、何時もの元気のある青年の顔に戻ると、そのまま掃除を開始する。実に、ゴミが飛んできたりと風が強くなってきてる。箒では面倒でしかないが。 #3

2015-08-18 22:12:30
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

「もうちょい楽に掃除出来る方法無いかな……」ぼやいていると、白髪の青年が神社の中から出てきた。彼の深層心理を表面化させた存在「槙冶」である。「無いだろ。潔く掃除せい」「えー……でもなぁ、よく考えてみろよ。これだけのゴミを、俺一人がやるのは流石にきついと思わないか?」 #4

2015-08-18 22:14:06
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

「思わないし、俺ならやってみせる」「じゃあやれよ」「やらん。俺は陰陽師じゃないんだぞ坊主」腕を組み、機嫌の悪そうな顔で槙治を咎める槙冶。渋々掃除を始めた槙治だったが、ここで一つ名案を思いついた。「ん〜……創造「掃除機」」彼の能力を使用し、記憶にある「掃除機」を作り出したのだ。#5

2015-08-18 22:15:33
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

槙治の背中にオーラが出始め形になり姿が現れると、何故か掃除機を背負って、片手に吸う部分を持つタイプの掃除機となる。実際の掃除機ではなく、彼が思い浮かべたのは彼が所持していたゲームの主人公が使う掃除機。単なる掃除機でない所も再現しており、幽霊を吸えるのだとか。#6

2015-08-18 22:17:06
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

「ふっふっふ、これなら楽に掃除できるねぇ」「坊主、お前……」槙冶が鬼の形相で見つめていたが、槙治は気にせず掃除していた。「相変わらずですねぇ」槙冶の背後から青年が現れる。随分とラフな格好の青年である。「全くだぜ。あと俺の後ろに立つなよ、首が消えても知らんぞ」「おお、怖い」 #7

2015-08-18 22:18:49
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

この青年の名前は緋茜拓海。色々あって守矢神社に住み込みをしている青年である。「ようし、終わった!」「お疲れ様〜っす」掃除を終えた槙治に拓海が駆け寄る。「おや、拓海君じゃあないかい。見回りは終わったの?」「そらァ。やるべきことはちゃんとやらなきゃ行けないですからね」 #8

2015-08-18 22:20:39
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

「あぁ、そうだ。知ってるかい拓海君、最近人里で行方不明になる人が出るって噂」「例の神隠し?いやァ……今時神隠しなんてする神様が居るとも考え辛いんですけどね」「妖怪がやるにしても規模が小さいしねぇ……」号外で配られた新聞。例のごとく、天狗製だが。そこに書かれていた神隠しの文字。#9

2015-08-18 22:23:49
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

「まァ……そこは、なんとかしてくれる人がいるんじゃないですか」「えぇ、他人任せかい?ちょっと興味あるだろ」「あ、バレました? んーまぁ、興味はありありですね」などと話している二人の元に、一人の少女がやってくる。「おや——」二人は揃って少女を見た。 #10

2015-08-18 22:25:43
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

「やっほ」彼女の名前は五月雨皐月。緋茜拓海と同じく、色々あって守矢神社に厄介になっている存在だ。「あれ? 今日は人里で妹さんとこ行くんじゃないんでしたっけ」「いやァ……ちょっと、言い辛いんだけどさ。神隠しって、知ってる?」「——」「あぁ……今正に、話してたんだ、神隠し」#11

2015-08-18 22:28:08
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

「成る程、妹さんの姿が見えないと」「あの子は外に出れないから、いなくなるなんて事はあり得ないんだけどね」「あー……なるほど。神隠しに遭った可能性は高いですねぇ」「……一人で探しに行くのも心細い上に、何の手がかりも無いからさ、ちょっと協力をあおぎにきたってわけ」 #12

2015-08-18 22:31:56
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

「ちょうど良かったー」「え?」「いやね、俺と槙治さんで神隠しの調査でもしようと思ってたんですよ」「あら」「そう言う訳だ。目的も出来た事だし、早速——」「待て」意気込み槙治を、槙冶が止めた。「何の準備も為しに行くつもりか?お前等が被害にあったらどうする」「う……」#13

2015-08-18 22:35:43
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

「最低限、準備をしてから往け。俺は知らん」「止めないんだ」五月が槙冶に横目で問うた。「どうせ止めても無駄だし、それにお前の妹が神隠しに遭ったかもしれないんだろう、行かせればいい」「でも、貴方は行かないんだ」「俺はやることがある」そう言って、槙冶は立ち去った。#14

2015-08-18 22:38:58
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

「よくわからないね、あの鬼さん」「マイペースなのはアイツの性格さ。それより準備をしよう」「準備って……具体的には?」「うーん……とにかく、妖怪が関わってるかもしれないから、戦闘準備?」「んな適当な……」皐月が愚痴を漏らした。「仕方ないだろ、俺だってわからないさ」#15

2015-08-18 22:41:59
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

ともかくとして、三人は準備を始めた。神隠し——それが一体どのようなものかわからない。ただ、最近流れ始めているよくわからない魔の瘴気を、三人はかすかに感じ取っていた。三人は適当な準備を終えると、山を下山した。さて、彼らが山を下りるまで、とある視点から神隠しを見てみよう。#16

2015-08-18 22:45:34
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

『——なんだ、人間か。魔力も無いじゃないか』「……だって、罠に引っかかったのが此の人だったから」『魔力が無いなら見逃すかねェ……喰ったって何の足しにもならんよ』「でも、人間だよ。見逃したら、何を言いだすか」『あー……それもあるな。面倒だな……』 #17

2015-08-18 22:49:59
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

深い森の奥深く。白いドレスを着た少女が暗闇に居る『何か』と話している。闇から覗く八つの紫色の光がぼうっ、と揺らめいている。少女の足下には拘束された、エメラルドグリーンの色の髪を持つ少女がいた。「それに、こんな奥深くまで来て。今更どうやって返すの」『……』 #18

2015-08-18 22:52:44
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

『いいか。俺は魔力のある奴しか食べない。下級妖怪や良からぬ事を考える魔法使いの方がいいんだ。魔力も無い人間なんて煮干しにも劣る』「……随分な言様」『それより、面倒な事になった。神隠しだのなんだのと……下級妖怪が消えただけで驚くかね?』「人間は、そういう生き物」 #19

2015-08-18 22:54:31
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

『馬鹿な人間が食いついてくるか』「……逆に考えれば、魔力のある人間が解決にくる可能性もある」『……ほう、それもそうだな。ならば、今の此の状況は面倒ではあるが、同時にチャンスというわけだ』「そういうこと」『この女も餌に出来るな、ククク……』 #20

2015-08-18 22:57:36
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

さて、場面は移り変わり。人里で調査を開始した三人に視点を移し替えてみよう。「んー」「芽以ちゃんが消えたのは此処なんだよね」「うん、私がお世話になっていたおじいさんの家。今はもう、誰もいないけど」「亡くなったの?」「……うん、それで、芽以の家として使わせてもらってたの」#21

2015-08-18 23:00:36
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

「あぁ、それで……」「おかしいな」「うん?どうかしたのかい拓海くん」「神隠しっていうのは、態々部屋を荒らして行くものなんですかね?」「んん?言う程荒れてるかい?」「……うーん」「……多分、見間違い。芽以はほら、そこまで規律正しい子じゃないから」「そうかあ……」#22

2015-08-18 23:05:04
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

「……ん?」「どうしたんだい?」「入り口の方……なんだこの跡」拓海が見つけたのは大きな爪痕だった。「……生々しいねぇ」「傷痕か」「……ねぇ、あれ、続いてない?」皐月が指を指すのは、森の方角。「森か……」「……待って下さい、誰か来ますよ」「えっ」「前!」#23

2015-08-18 23:09:05
東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

「う……ひっく……」少女だった。三人は「神隠し」の被害者だと思って駆け寄った。「ど、どうしたんだい」「ずっと……あの森の奥深くに……ぐすっ」「……どうやら神隠しの被害者の一人か」「うん? どうやって逃げてきたんだ」「気が付いたら、森の入り口に居て……」「返されたのかな」#24

2015-08-18 23:11:32