目的論と後期クイーン的問題

目的論ないし機能論の機械論化と探偵小説との関係について
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@quantumspin

「メタレベルの無限階梯化と後期クイーン的問題」をトゥギャりました。 togetter.com/li/856545

2015-08-04 21:03:24
@quantumspin

〝探偵小説におけるゲーデル的問題〟の文脈において、フェア・プレイを成立させる為には、手掛かりに犯人の意図が含まれてはならない。犯人が無意識のうちに残した手掛かりは、あたかも自然現象と類似したものとし取扱う事が出来、これらが完全無矛盾であれば、探偵は唯一解を導出する理論を構築できる

2015-08-29 07:21:19
@quantumspin

〝探偵小説におけるゲーデル的問題〟の文脈において、手掛かりの真偽とは、手掛かりの出自が自然発生的か人工創出的かを意味している。手掛かりに意図が伏蔵しないか否かはこれから決まる。そして、手掛かりに意図が伏蔵しているかどうかは、手掛かりが無矛盾であるかぎり、探偵には判断できない。

2015-08-29 07:35:32
@quantumspin

即ちフェア・プレイ原則を遵守しようとするならば、手掛かりは無矛盾でなければならず、手掛かりが無矛盾であるならば、探偵は手掛かりの意図の有無を判断できない。探偵は手掛かりの矛盾を示す為あらゆる分析を試みるものの、それがフェア・プレイ原則を満足している以上、矛盾は見つけられないのだ。

2015-08-29 07:42:11
@quantumspin

〝探偵小説におけるゲーデル的問題〟の文脈では、作者がフェア・プレイに徹してもなお、探偵は手掛かりに伏蔵するかもしれない意図への懐疑を払拭できないまま、延々、手掛かりの矛盾を暴露する為の操作を深堀し続ける。そして、機械論的であった筈の探偵の心情は、徐々に目的論的世界像に移行していく

2015-08-29 08:02:54
@quantumspin

自然発生的手掛かりを目的論的に解釈する事は、インテリジェント・デザインの議論に代表されるように、理論的には可能である。機械的世界像を象徴するNewton力学ですら、Hamiltonの原理により、『物理的対象はある与えられた性質の強さを最小にする目的をもって動く』とする解釈を許す。

2015-08-29 08:28:55
@quantumspin

偽手掛りにより手掛かりの真偽が判断不能に陥るわけではないし、むしろこの問題は、意図的手掛かりの排除によってこそ鮮明になる問題であるだろう。手掛かりを残すのは犯人であり、そこに犯人の意図がないと考える事は、手掛かりが無矛盾であるからこそ、目的論的世界観に憑かれた探偵には容易でない。

2015-08-29 12:28:05
@quantumspin

偽手掛りを偽と見破れるだけの真の手掛かりが配置される事は、フェアな探偵小説において、読者に対し作者が果たすべきフェア・プレイ原則であるが、これは同時に、探偵と犯人とが存在する作品世界の無矛盾性を示すものでもある。犯人が探偵と同じ世界に在る以上、真の手掛かりは残らない筈がないのだ。

2015-08-31 22:03:17
@quantumspin

普通、探偵はその手掛かりが本当に偽手掛りであるならば、捜査によって必ず偽手掛かりである事を見破れる筈である。犯人が偽手掛かりを仕掛け、探偵がそれを原理的に見破れない事があるとすれば、探偵は犯人と同じ世界を認識していない事になる。例えば、犯人は探偵の知覚を操作できる立場にあるなど。

2015-08-31 22:16:11
@quantumspin

自然現象は機械論的にも目的論的にも解釈でき、どちらの解釈が正しいとも恐らくは言えない。自然の摂理といっても良いし、神の意思と言ってもよいのだ。人間は永遠に神視点を手に出来ない。しかし人工物は、自然の摂理によって造られる訳ではない。そこには必ず作者の意図と、同時に創作の痕跡が残る。

2015-08-31 22:33:40
@quantumspin

冨山によれば、機能とは『ある実体をある状況に置いたときに発現する属性によって観察される挙動を、人間が特定の意図を持って主観的に観察したときに、発現している人工物のはたらき』とされる。例えばここに指紋があったとする。この指紋が凶器に付着していれば、これは手掛かりとして機能する。

2015-09-13 14:27:42
@quantumspin

一方で、Wrightは目的論を『あるものの目的や機能を指摘することは、「それがなぜ存在するのか」という問い、すなわちものの起源に関する問いかけに対し、そのものの作用を根拠として解答を与えることに他ならない』と解釈する。Wrightの解釈は、後に直接固有機能の概念として定式化される

2015-09-13 14:37:56
@quantumspin

直接固有機能の概念では、機能は次のように定義される。『メンバーmの機能がFであるのは、mは複製族Tのメンバーであり、過去Tのメンバーm'がFを遂行し、m'によるFの遂行が、現在mが存在していることを説明するときに限る』。ここで同一複製族は、同じものからのコピーによって構成される。

2015-09-13 14:50:21
@quantumspin

直接固有機能の概念においては、例えば『心臓の機能は血液循環のためのものである、という言明は、過去においてその祖先形質が血液循環を行い、そのために現在心臓なるものが存在している、ということに等しい。ここで過去における血液循環の遂行と心臓の現在の存在をつなぐのが、自然選択説である』。

2015-09-13 15:02:16
@quantumspin

このように目的論的説明は、生物形質がどのような効果のために選択され進化してきたのか、という問題への解答を与える。しかし一方で、冨山の言うように、機能とは『人間が特定の意図を持って主観的に観察したときに発現』する。という事は、この主観的観察行為それ自体が、自然選択的に進化していく。

2015-09-13 15:22:37
@quantumspin

空き缶の機能は、ジュースを蓄えるためでもあり、ペンを立てるためでもある。どちらも『人間が特定の意図を持って主観的に観察したときに発現している人工物のはたらき』に他ならない。しかし、空き缶のペン立てとしての機能は、適応度に差異のある他の人工物との間の自然選択により、淘汰されていく。

2015-09-13 16:35:32
@quantumspin

凶器に付着した指紋には、自然発生的手掛かりと人工的手掛かりと、どちらの機能も考えられる。前者は『真の手掛かり』、後者は『偽手掛かり』と呼ばれる。どちらの機能が『「それがなぜ存在するのか」という、ものの起源に関する問い』に対し解答を与えるかは、適応度の差異から来る自然選択に依る。

2015-09-13 16:45:09
@quantumspin

そして、この凶器に付着した指紋が自然発生的手掛かりである限り、真の手掛かり機能と、偽手掛かり機能と、それぞれの機能の間に適応度の差は恐らく考えられない。その結果、両者は自然選択のふるいをかいくぐり生き残ると考えられる。もし差が生じるとすれば、それは読者の好みに拠るのではないか。

2015-09-13 17:04:14
@quantumspin

「チャイナ橙の謎と後期クイーン的問題」をトゥギャりました。 togetter.com/li/900393

2015-11-15 14:14:45