2014年12月17日

形式主義と後期クイーン的問題

法月論考『初期クイーン論』『一九三二年の傑作群をめぐって』を中心に、後期クイーン的問題をめぐるあれこれをまとめました
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@quantumspin

【法月綸太郎ミステリー塾 海外編 複雑な殺人芸術/法月 綸太郎】作中犯人の偽装行為が作中に手掛りを残さなければフェアとは言えず、フェアな探偵小説では、探偵は推理により偽装行為を見抜ける。実際、初期クイ... →bookmeter.com/cmt/43128579 #bookmeter

2014-11-29 11:50:03
@quantumspin

法月によれば、20則を満足する探偵小説は、手掛りからの演繹推論のみにより唯一の解に辿りつける探偵小説と言う事になる。ところで、読者は何を手掛りと考え何を手掛りでないと考えればよいのだろうか。法月によると、フェアな手掛りには完全性、独立性、無矛盾性が求められるという。

2014-11-29 17:07:55
@quantumspin

不完全であったり矛盾したり、他の手掛りから導けるものは、手掛りに値しないというわけだ。20則を満足する探偵小説にはこれらが含まれない事が要請されている。ここでいう無矛盾性とは、手掛り自身の無矛盾性ではない。ここでいう無矛盾性とは、手掛りから演繹される推論相互の無矛盾性である。

2014-11-29 17:19:28
@quantumspin

しかし、手掛りから演繹される推論は完全に無矛盾でいられるだろうか。小森によれば、探偵小説の論理は、論理学の論理とは異なり、ある種の倫理観や社会的行動規範に従うものとされる。これを小森はロゴスコードと呼ぶが、探偵と読者の間にロゴスコードのずれがあれば、異なる推論を行う事もあるだろう

2014-11-29 21:00:34
@quantumspin

この時、推論相互の無矛盾性は保証できなくなる。ロゴスコードは万人に共通の論理とは異なり、時代や地域、文化背景により千差万別であるからだ。同様に、作者にとって完全な手掛りも、読者にとって完全でない場合もある。ゲーデルを持ち出す以前に、フェア・プレイの理想は困難に直面しているのだ。

2014-11-29 21:14:24
@quantumspin

さらに付け加えると、探偵が認識する手掛かりは、作品世界内の経験事実に即するが、読者が知る手掛かりは、その文章表現に過ぎない。この視座の違いにより、一部の叙述トリック作品がフェアか否かで議論されることになる。探偵と読者の知る情報が同じであれば、初めからそのような問題は発生しない。

2014-11-29 21:37:04
@quantumspin

この構造についての法月の認識は、『一九三二年の傑作群をめぐって』で示された「作者―(犯人―被害者―探偵)―読者」の図式で明らかにされている。この図式では、読者は探偵に対して上位の階層に属するとされる。しかし、もしそうなら、読者は探偵の認識を、全て理解できる立場でなければならない。

2014-11-30 10:37:39
@quantumspin

しかし現実には、読者は探偵の認識を全て共有する事は出来ないし、それどころか探偵が経験する世界を、文章表現によってしか認識する事ができない。従って、法月の示した図式は、フェアな探偵小説が備えるべき構造を示しているわけでないばかりか、クイーン作品が備える構造の説明としても正確ではない

2014-11-30 10:45:47
@quantumspin

『一九三二年の傑作群をめぐって』で法月は『初期クイーン論』とは異なる事例にゲーデルの考え方をあてはめて考している。前者は作者―犯人―被害者の階層の侵犯に、後者は手掛りの真偽判断に対してだが、両者が同一メタファである必要は良くわからないし、そもそも階層侵犯とゲーデルは関係あるのか?

2014-12-06 13:12:16
@quantumspin

『エジプト』『X』における死体―犯人の侵犯から『ギリシャ』における犯人―作者の侵犯と続き、『Y』の侵犯に至る一連の循環は、ゲーデルの証明プロセスにおける循環と等しいと言われても、ふざけているとしか思えない。

2014-12-06 13:21:04
@quantumspin

『初期クイーン論』の文脈に柄谷の『言語・数・貨幣』の図式をメタファとして当てはめようと考えるのなら、恐らく『(直感的手がかり)→(形式的手がかり)→(メタ手がかり)』という図式を当てはめるべきではないだろうか。この場合のゲーデル化とは、メタ手がかりの手がかり化に相当する事になる。

2014-12-07 10:54:34
@quantumspin

手がかりそれ自体の真偽判断はメタ手がかりによりなされるものであるが、手がかりの真偽判断を作中手がかりと同列に論じるところにメタレベルの侵犯があり、この行為を探偵小説におけるゲーデル化と捉える、とか言う話であれば、まだ納得がいくような気がする。

2014-12-07 11:21:11
@quantumspin

ここで言うメタ手がかりの侵犯とは、例えば榎木津のような神視点の手がかりが作品内に侵入する事を意味するのでは恐らくない。神も作品内存在に過ぎないからだ。ここで言うメタ手がかりの侵犯とは、探偵小説のお約束とか、作者の意図とか、作品外の視点が作品内に侵入する事を意味すると思われる。

2014-12-07 11:36:11
@quantumspin

そう考えると、『1932年』で法月が指摘したメタレベルの侵犯とは、論理階層の移動であり、これは、どちらかというと、自分自身を含む集合に関する、ラッセルのパラドックスに近い話なのではないだろうか。この話にゲーデルを当てはめて考える事は、やはりあまり適切とは思えないのだ。

2014-12-07 11:47:29
@quantumspin

いわゆる後期クイーン的問題として知られる、偽の手掛りの問題について、作中犯人の偽装行為が作中に手掛りを残さなければフェアとは言えず、フェアな探偵小説では、探偵は推理により偽装行為を見抜ける。実際、初期クイーン論で扱われたクイーン作品では、探偵は偽手掛りを推理により見抜いている。

2014-12-07 18:34:21
@quantumspin

『作中手掛りだけを使って作中手掛りそのものの真偽判断はできない』が、法月の言うゲーデル的問題ならば、このメタファが妥当かどうか以前に、偽手掛りを推理によって見抜けている初期クイーン作品においては、そもそも後期クイーン的問題など最初から起きていないのではないだろうか。

2014-12-07 18:56:14
@quantumspin

偽手掛りを仕掛けた犯人の行いを見抜くに必要十分な手掛りが作中に残されている以上、初期クイーン作品はフェア・プレイを指向した探偵小説である。逆に、後期クイーン的問題が成立する為には、犯人の意図はアンフェアに探偵・読者に対して伏せられていなければならないように思われる。

2014-12-07 19:04:49
@quantumspin

面白い事にこれは、フェアプレイなる形式化が後期クイーン的問題を起こしたと見る法月とは逆の主張になっている。笠井曰く『推理小説の形式化は、その極点に達すると形式化の自己崩壊を起こす』。このような探偵小説観は、少なくとも偽手掛りの問題については当てはまらないのではないだろうか。

2014-12-07 19:18:39
蔓葉信博🌿 @tsuruba

琳さん(@quantumspin)がここ数日つぶやかれている「初期クイーン論」、『探偵小説の論理学』などの考察がなかなか面白い。個人的には危うい記述もあるように思いますが、一方でキラリ光るところもあり。なにより複数の本を比較検討することの楽しさがよくわかります。

2014-12-11 20:25:40
@quantumspin

@tsuruba はじめまして。拙論へのRT、コメントありがとうございます。参考までに、危うい記述とは例えばどういった?

2014-12-11 20:42:05
蔓葉信博🌿 @tsuruba

@quantumspin こちらこそはじめまして。すみません、気になるつぶやきになってしまいまして。危うい記述というのは法月論考のまとめが僕の理解とちょっと違うなという印象がありまして、こちらは帰宅したら比較してつぶやきたいと思います。

2014-12-11 20:48:31
蔓葉信博🌿 @tsuruba

@quantumspin それとも関連するのですが、こちらのつぶやき(twitter.com/quantumspin/st…)の「しかし、~ならない。」までの一文がなぜ導かれたのか曖昧なことなどもあります。こうした結論を導くところの補足の足りなさが気になりました。

2014-12-11 20:52:02
蔓葉信博🌿 @tsuruba

@quantumspin ちなみにキラリ光るところは、たとえばこちらのつぶやき(twitter.com/quantumspin/st…)で、手がかりの分類というのは、なかなかおもしろい指摘だと思いました。

2014-12-11 20:53:58
@quantumspin

@tsuruba 解説ありがとうございます。プロの方のご意見は勉強になりますね。法月論考の比較検証も楽しみにしています。

2014-12-11 21:29:15
@quantumspin

文芸批評家である蔓葉信博さん(@tsuruba )の昨日のご指摘、”(twitter.com/quantumspin/st…)の「しかし、~ならない。」までの一文がなぜ導かれたのか曖昧”を受けて、少し論点を戻して「作者―(犯人―死体―探偵)―読者」の図式についてもう少し言及する。

2014-12-12 19:05:42
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コメント

@quantumspin 2015年6月7日
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@quantumspin 2015年7月16日
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@quantumspin 2015年12月17日
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@quantumspin 2016年1月15日
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@quantumspin 2016年4月14日
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