備忘録のカウントが面倒になった

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ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

恋をしたことがあるの、と問われた女は見えぬ眼を上げた。彼を見て頬に手を添える。 「聞いてどうするの、小狐?」 からかうような語調に唇を尖らせる。所作が彼女には見えぬことは知っていてもだ。 「ぬしさまは意地が悪うございますな」 「お前ほどじゃあるまいよ。ではお前はどうだい、小狐」

2015-08-28 22:39:24
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

そうですなと彼は頬に添えられた手を自身の掌で包んで、目を伏せる。瞼の裏に、ぬばたまの、夜のような星を纏う黒髪が浮かぶ。 「さて。古い古い話ゆえに。記憶も定かではございませぬが」 「そうかい?」 「…美しい方で御座いましたよ」 長い前髪の下、焦点を結ばぬ瞳が丸くなる。

2015-08-28 22:41:14
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

「お前が恋を知っているのがまず意外だ」 「…酷い言いぐさで御座いますね。私は物語に憑くモノですゆえ。恋情程に語られるものは御座いませぬ。故に小狐、ヒトの機微には大層煩いと自負しておりますよ」 ふん、と鼻を鳴らす女がその言を信じていないのは明らかだった。するりと手が離れていく。

2015-08-28 22:42:33
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

おやぬしさま、と問えば彼女は、落ちていた下着を拾い上げて袖を通した。寝間着代わりの浴衣を手さぐりに見つけて、袖を通そうと苦戦を始める――目の見えぬ彼女にそれは大層難儀な仕事であった。途中で小狐丸は浴衣を拾い上げ、彼女の手を誘導してやることにする。

2015-08-28 22:44:18
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

「――それでぬしさまは」 「うん?」 恋を知っておいでですか。彼女は、焦点を結ばず、光を得ることも無い真っ黒な瞳を逸らし、天井を、あるいはそれより遥か向うを眺めるような所作を見せる。眼の見えぬ彼女に、どれだけ意味のある動作であるかは定かではない。 「…さてね。昔の話で、忘れたよ」

2015-08-28 22:46:00
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

遠く古い。記憶の底で錆びついた場所に、微かに懐かしい薫りと手触りがある。彼女は浴衣を纏って、傍らの付喪神の白い髪の毛――今は纏められておらず、寝乱れたそれに掌を差し込み、手指で梳いた。 遠く昔の、懐かしい恋の手触りだけは、よく覚えていた。 「…忘れたよ」

2015-08-28 22:49:41

▼三姉妹とオミさん(※長女とオミさんは不倶戴天の天敵)

ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@kurousa315 「正国」 彼の主は、本丸内に居る時はいつも気怠い気配を纏っている。その日もそうで、つまり、戦の話ではなさそうだったので彼は生返事だけを返した。 「ラーメン食べたいわ。あなた作れない?」 「俺は刀だぞ」 「そうよね。…隣の臣にでも集りましょうか」

2015-08-30 23:17:10
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@kurousa315 …もうひとつ理解に苦しむのは、彼の主が隣の本丸の主を「不良品」「三文娼婦」「売女」と思いつく限りの言葉で罵倒する程嫌っている癖に、こういう時は平然とちょっかいを出しに行くことである。 「喧嘩か?」 「ご飯よ。一緒に来る?」 まぁ、どうせ喧嘩になる。頷いた。

2015-08-30 23:18:31
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL 「という訳で来たわよ、三文娼婦」 「うるせー女狐××に火薬詰めて着火してやるからそこでケツ捲れ」 「下品にも程があるわね」 「頑張って罵倒語のバリエーションを増やすべくいっぱいB級映画見て勉強したのよ!」 隣の本丸の主は馬鹿なんじゃないかと思うことがある。

2015-08-30 23:21:05
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL 横の近侍を見ると、彼の主を見るなり殺意を向けてくる彼が今日はさすがにげんなりした顔をしていた。 「…大変だなァ?」 適当に声を投げると、額を押さえた彼は「まさかこんな馬鹿なことに時間を費やしてたとは…」と唸っていた。いや、大変だな。指差して笑いたい。

2015-08-30 23:22:16
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL 「それで、あたしを殺すんならちゃんと手続き踏んできたわよね?この間みたいにこんのすけの乱入でノーゲームなんてくだらないオチに持ち込むような真似は勘弁よ」 「あら、それはあなたの不手際じゃあないの、不良品。申請なんて出してないわ。出すなら自分で出したら如何?」

2015-08-30 23:23:13
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL ああ、解説しておくと隣の本丸の主は人間の癖に政府から備品扱いされてる身の上だ。殺す場合、備品管理室に登録解約の届け出が事前に必要らしいし、それ以前にその申請が届いた時点で上からストップがかかる。審神者は貴重な人材なのだ。

2015-08-30 23:24:27
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL 「…、ほんとだ、申請は出てないわね」 隣の主は何やら自分の横に展開した画面を覗いて腕組みを解いた。(後から聞いたが、権限が無い癖にハッキングで政府に届いてる備品関連の申請を全部閲覧できるようにしているらしい。彼の主も大概だが、こちらも食わせ物だ)

2015-08-30 23:26:05
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL 「つまり国広ちゃん、今日の輝夜はあたしを殺しに来てないわ。ステイよ。残念だったわねぇ」 「そうだな。隙があったら斬っていいか」 「後片付け面倒だからやめてよ」 ――後片付けが面倒じゃなければすぐにでも殺しそうな物言いだが彼女達の場合はこれがいつも通りである。

2015-08-30 23:26:56
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL 「で?殺しに来たんじゃなければ何なの。あんたに売れるような情報は今日は無いわよ」 「ラーメンを食べに来たの」 隣の主はたっぷり5秒、目を閉じて沈黙した。横の近侍も似たような顔をしていた。 「…パードゥン?」 「ラーメンを食べに来たの。あるでしょう?」

2015-08-30 23:30:04
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL 「…逆に訊くわよ女狐。あんたんとこにはラーメンの備蓄さえないの!?」 ――待て。まるでラーメンの備蓄があるのが本丸として当然のような物言いはどうなんだ。他方彼の主は腕組みをして重々しく頷いた。 「無いわ。私達、料理はてんで駄目だもの」 「知ってたけど」

2015-08-30 23:32:16
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL 「おい山姥切の写しの方」 「その呼び方やめろ斬るぞ。何だ戦狂い」 「…ラーメンは一般的に備蓄されてンのが当然なのか?」 「…違うのか?」 あ、駄目だ、こいつも麻痺してやがる。

2015-08-30 23:33:15
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL 「ラーメンは…無いと困るだろう…深夜に腹が減った時にどうしてるんだあんたの本丸…」 「寝る」 普通そうだと思うしそもそも付喪神なんだから空腹の概念自体がそこまで強いものではない。にも拘らず食べ物への執着が強いのは、この本丸の主の色ゆえか。

2015-08-30 23:34:24
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL 「…別にいいけど、カップめん?インスタント?それとも棒ラーメン?」 「カップ麺以外は調理できなくってよ、私達」 「分かったわよもう!あんたはどーでもいいけど兎とルナはちゃんと野菜食べてるの!?冷蔵庫の食糧見せなさい!!」

2015-08-30 23:35:53
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL 良く分からないが、隣の主が、彼らの本丸へ食糧片手に赴くことになったらしい。どうやら喧嘩はなさそうだ、と判断して、彼は伸びをした。つまらないお使いに付き合ってしまった。 「おい女狐ー。俺先に帰るぞ」 「待ちなさい正国。荷物があるわ」 自分で持てよ女狐。

2015-08-30 23:37:21
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL 結論すれば、本丸へ来て台所を一瞥しただけで隣の主はあきれ果てたため息をついたし、「あんたん所に歌仙君か光忠君…あ、そうか、あんたのトコの歌仙君は駄目ねあの子料理しないわ…光忠君は!?居ないの!?さっさと顕現させて台所預けなさいよ!」と説教していた。何だあれ。

2015-08-30 23:40:34
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL まぁ、隣の主(彼女は彼の主を恐れている節がある)が輝夜を説教する、という珍しい一幕を見られたので、無駄足を踏まされた溜飲は下げておこう。 野菜たっぷりのインスタントラーメンを供される主達を横目に、同田貫正国はまた、欠伸をした。また、退屈な時間が始まった。

2015-08-30 23:43:26

▼理理さんと初期刀

ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@lapis_rx ――ヒロへ。1週間程夏休みを頂いたので有給を消化してきます。やっておいて欲しいことリストを置いておくので暇なら着手してくださいっていうか暇だろやれ。 そんなメモが備品管理室で揺れていた。手に取ったのは棚の奥から顔を出した付喪神、ひとり。

2015-08-31 22:05:06
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