【鉄底の闇】

裁きを下すことが正しいという保証は無い
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

神山「リベンジに燃える提督達に囲まれた時、ほんとにむさ苦しいなって思った。でもいざ交流してみれば、みんないい人ばかり。真剣にこの戦いに勝とうとしていた。一昨年のような、卑劣な方法を取ろうとする者は一人もいない。過去を見てる人はいなかった」 深瀧「…」

2015-08-24 00:43:19
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神山「過去に囚われてたのは、あんただけよ。勝利に固執するあまり、卑劣な手段に手を染めたのは…ね」 深瀧は項垂れていたが、やがて口を開いた 深瀧「…君の言う通りだ。俺は勝利に目が眩み、海風を犠牲にしようとしてしまった…情けない男だ」 ザハ「深瀧…」

2015-08-24 00:44:10
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

神山「…自覚がある分、タカ派よりはマシね。罪の意識があるなら、自首しなさい。捨て艦は重罪。憲兵に囲まれ棒で叩かれても文句は言えないでしょうけど」 深瀧「それで贖罪になるなら、喜んで受け入れるさ。明日の朝、憲兵さんのとこへ向かうよ」 深瀧はゆっくりと立ち上がった

2015-08-24 00:45:00
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深瀧「ザハ。俺の代わりに司令を頼んだ。っても、もう撤退するだけだろうけどな」 ザハ「ああ、わかった」 深瀧「神山、感謝する。君がいなければ、俺は海風を裏切り続けて生きていくことになっただろうから」 神山「別に礼を言われる筋合いはないけど」

2015-08-24 00:46:32
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深瀧「最後に俺の頼みを聞いてくれないか」 神山「…聞ける範囲でなら」 深瀧「海風を引き取ってやって欲しい。海風隊は色んな司令部の艦娘で構成されているが、海風だけはうちの麾下だ。俺がいなくなれば身寄りがなくなる。お前にあいつを託したい。お前なら安心できると思う」

2015-08-24 00:47:24
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神山「…わかった。特別よ」 深瀧「…感謝する。それじゃあな」 深瀧は司令部室へ戻っていった。その背中は月明かりで明るく照らされていた 神山「…ふう、疲れた」 神山は軽くよろめいた。緊張が切れて力が抜けてしまったのだ ザハ「はは、お疲れ様」

2015-08-24 00:48:30
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神山「あ、ザハ提督…」 ザハ「これでよかったんだよな…」 神山「あ…」 思い出した。確かザハ提督と深瀧は… 神山「すいません。あの人友達だったんですよね。目の前であんなこと…」 ザハ「構わない。むしろ感謝するべきだよ」 神山「え?」

2015-08-24 00:49:15
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ザハ「神山さん、昼間の深瀧の話を聞いてたんだろう?あの時私もあの場にいたんだ。別のところから、あいつの話を聞いていた」 昼間…深瀧とあいつの秘書艦が話していた時のことだ ザハ「ここに深瀧を呼んで、神山さんみたいに問い詰めるつもりだった。でも私には無理だったと思う」

2015-08-24 00:50:02
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神山「無理?何故です?」 ザハ「あいつは一昨年から付き合いのある数少ない友人の一人なんだ。当時の友人は今はもうほとんどいない。私だったら、きっと情が邪魔をして、あいつの罪を見逃してしまっていたかもしれないからね」 神山「そっか…そうですよね」

2015-08-24 00:50:38
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

神山(情に流されるなど、あってはならないんだ…) ザハ「それにしても驚いたな」 神山「え?」 ザハ「普段の印象からは想像できないほど容赦がなかったよ。あれが本当の神山さんなのかな?」 神山「いえ…ただ」

2015-08-24 00:51:10
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神山「…罪深きアイアンボトムサウンド。多くの人々の心に深い傷を残した戦い。それを“決して”許さない。それだけです」 ザハ「え…?」 ザハは一瞬、寒気を感じた。神山の最後の言葉はいつもよりトーンが低く聞こえた。顔を覗くと、焦点が合わず、虚ろな、かつ力強い眼差しをしていた

2015-08-24 00:51:46
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

ザハ「…神山さん?」 神山「あ、そうだ。青葉に頼んだるなか司令官の女装写真、どうなってます?」 次の一瞬で、神山の顔と声は元に戻った。普段のちょっとおどけた、北上に似た雰囲気の顔だ ザハ「あ、ああ…まだ手に入ってないらしい。やっぱり女装なんてしてないんじゃないかなぁ」

2015-08-24 00:52:28
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

神山「そんなことはないはずです。どこから見ても女装してそうな顔してますもん。報酬は弾む、と言っておいてください」 ザハ「はは、わかったよ」 神山「よろしくお願いします。さ、戻りましょうか。ご飯なくなっちゃうかも」 ザハは駆け足で去る神山の背中を見つめていた

2015-08-24 00:53:00
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ザハ(さっきのは一体…気の所為だろうか) ザハも考え事をしながら、ゆっくり歩き出した。先程見せた神山の顔が、ザハの脳裏に残り続けていた 海風が正式に笏楠花の一員となったのは、その数日後のことであった 【おしまい】

2015-08-24 00:53:25
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