【鉄底の闇】

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

【鉄底の闇】

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南方、ソロモン海。この海域に深海棲艦の一軍が確認された。彼らを倒し、この制海権を取り戻すために、大本営は第二次SN作戦を発令。既に先行していた部隊を追うように多くの司令部がソロモン海へと向かった 作戦は順調に進み、敵機動部隊の迎撃に成功。標的は敵飛行場を残すのみとなった

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作戦のために建てられた臨時司令基地。ここで飛行場を落とすための作戦会議が行われていた 会議が終わり、部屋から多くの提督と艦娘が退室していく。そこには幌筵の若き女性提督、そのお付である加古の姿もあった。加古は拳を握り締め、怒っている様子だ 加古｢あんにゃろう…！｣

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加古は怖い顔をしながら笏楠花の司令部室まで戻ってきた。彼女の後ろにいる女性提督は虚ろな目をして俯いている 加古は深呼吸すると、バァン！と司令部の扉を乱暴に開けた 加古｢にょ〜ろ〜て〜い〜と〜く〜！！！＃｣ 神山｢おっす〜。あ、私の勝ちだ｣

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そこにいたのは、加古の後ろに立っている女性そっくりの人物だった。にょろと呼ばれた女性は乱雑に寝転がり、舞風と遊んでいた 舞風｢も〜！先行ブレバは反則ですって提督ー！｣ 神山｢そんな決まりはないのだよ舞風くん｣ 加古｢こいつら…｣ 加古は握り拳を震わせた

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彼女の名は神山。麾下の艦娘からは｢にょろ｣の愛称で親しまれている 幌筵の司令部所属のこの女性提督は派手な功績こそないものの、着実に戦果を上げる堅実さで、徐々に信頼を上げている。 彼女は絵描きでもあり、短時間ではあるが描いたものを実体化させる力を持つ

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加古｢にょろ提督！替え玉出して会議サボったでしょ！｣ 加古が後ろの女性をぶん殴ると、それは霧のように霧散して消えてしまった。あれは神山が生み出した分身だったのだ にょろ｢いやね、最近激しい動きをさせなければ、スケッチを長時間保たせることができるようになってねぇ｣

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神山｢どう？完璧だったっしょ？｣ 加古｢いや絶対バレてるって。隣がるなか提督だったからなんとか誤魔化せたと思うけどさ…｣ 神山｢まあ会議には出なくても、内容をちゃぁんと伝えてくれる優秀な部下がいるから。ね、加古？｣ 信頼してくれているのは嬉しいが、どうも釈然としない

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舞風｢あっ、親子愛グロパンやめて！｣ 神山｢使える手段はどんどん使っていくべきなのだよ舞風くん｣ 普段艦隊指揮をしている時はかっこいいのだが。加古は呆れてため息をついた 能代｢それで、次の作戦はどのような内容ですか？｣ 能代が加古に尋ねた

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加古｢ああ、えっとね…後退した敵機動部隊を追撃して、そのまま飛行場まで落としに行くってさ 今、海風率いる偵察部隊を出してて、報告が来たら一気に攻め入るそうだよ｣ 能代｢飛行場…ですか｣ 能代は一昨年の激戦を思い出した。かつての飛行場をめぐる戦いは壮絶なものだった

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神山｢はい、スキリンつららで終わり。飛行場が相手ってことは三式弾が効くね。伊勢を中心に編成しよっか｣ やられたー。と大の字で倒れた舞風を尻目に神山は立ち上がった 伊勢｢任せて。今の錬度でやれるかはちょっと不安だけどね｣ 神山｢先輩も一緒に戦ってくれるんでしょ？なんとかなる｣

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今回の作戦、瑠奈花率いる雪花と共に戦うことになっている。雪花艦隊の練度は十分。自分たちは補佐をすればいい。この戦いもすぐに終わるだろう 能代｢提督…｣ 神山｢ん、どうしたのしろん｣ 能代は不安そうな目で神山を見つめた

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能代｢大丈夫でしょうか…何がとは言えないんですけど、この戦い、なんだか嫌な予感がします｣ 不安に思うのも当然。能代は一昨年の鉄底海峡の戦いの闇を実際に経験しているのだ 神山｢大丈夫でしょ。先輩も含め、みんな精鋭揃いだし｣

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神山｢それに古参提督は一昨年のリベンジに燃えてるって聞くし。流石にあんなことするような馬鹿はもういないと思うよ｣ 能代｢だといいんですけど…｣ 加古｢…｣ 二人の話を加古はこっそり聞いていた。明日にでも海風隊の報告はやってくるだろう。戦いの始まりは近い

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〜翌日〜 神山｢え、参加できない！？｣ 神山は無線で連絡を取っていた。相手は瑠奈花だ 瑠奈花『ああ、西方で妙な動きが確認されたそうでな。急遽私とリカルド提督でカレー洋へ向かう事になった』 神山｢え、じゃあ、こっちはどうなんの？｣

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瑠奈花『君ももう新米ではないだろう。急で悪いが、なんとか頑張ってくれ』 神山｢そんなぁ｣ 瑠奈花『一応、赤城に笏楠花を助けてあげるように言っておいた。後で何かしら埋め合わせはしてやるから、頑張れ』 無線が切れた。神山はその場に立ち尽くした 神山｢しゃ…笏楠花艦隊集合！｣

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〜笏楠花の司令部室〜 司令部室に笏楠花の面子&赤城が揃った 神山｢赤城ちゃんと伊勢を中心に編成！鈴谷と加古も三式弾持ってって伊勢の援護！のしろんと雪風は雑魚散らし！舞風は緑茶買ってきて！｣ 赤城｢神山提督はしっかり者ですね｣ 加古｢そっすね…ははは…｣

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神山｢なんか知らないけど、るなキチが一緒に来られないことになった！こうなったらもう全力投球でやるよ！｣ ｢｢｢了解！｣｣｣ ｢神山さーん？｣ 一人の女性が司令部室にやってきた。本部隊の艦娘だろうか ｢海風隊から報告が来ました。出撃前の最終会議を行います！｣

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神山｢今行きまーす！さ、行くよ！｣ 神山は伊勢達を引き連れて司令部室を出た。遅れて舞風もやってくる 舞風｢にょろ提督！買ってきましたぁ！って、なんで先行ってるのぉ！？｣ 高波｢…ﾌﾟｯ｣ 舞風｢笑うなぁ！｣

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〜作戦総司令官・深瀧の司令部室〜 神山｢うー…｣ 神山は小刻みに肩を震わせていた。彼女の周りにいるのはいかにも歴戦の戦士といった風格の提督ばかりだ。特徴的な帽子をかぶった人もいる 雪風｢しれぇ。緊張してますね｣ 神山｢まあね…むさ苦しいというか、ゴツイ人ばっかだよね｣

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神山の隣には雪風が座っていた。この子が唯一の癒しのようなものだ 神山｢るなたそという清涼剤がないからか、昨日までとだいぶ雰囲気が違うように見える｣ 雪風(大丈夫かなぁこの人) やがて、司令部室にこの作戦の総司令官である深瀧がやってきた

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深瀧｢全員揃っているか？…うむ、今回は神山もいるようだな｣ 神山(バレてら…) 何人かの視線が神山に突き刺さる。周りは老若問わず男性ばかり。すごく場違いではないだろうか 深瀧｢もう知っているだろうが、瑠奈花殿がこの作戦から離脱してしまった｣

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深瀧｢彼がいない分、皆で結束し、着実に作戦を成功させる。一昨年のようなことは決して繰り返さないようにな｣ ｢｢｢了解！｣｣｣ 神山(すごい迫力…むさ苦しいけど) 神山はただ周りの覇気に圧倒された。古参がリベンジに燃えているというのは本当のようだ

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深瀧｢出撃前の最後の会議だ。我が麾下の海風隊からの情報を報告する。海図を出してくれ｣ 深瀧が部下に命令すると、司令部室の机にホログラムの海図が浮かび上がる。いくつかの地点にアルファベットが振ってある 深瀧｢Z地点に敵飛行場を確認した。そこが奴らの拠点だ｣