First Love(後編)

横村楽器店 シリーズ5
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りえぷぅ @riem124blue

456 **「…ただよし…。」 久しぶりに感じる彼の体温。 少しクセのあるフワフワの前髪がオデコをくすぐって。 耳には彼の息がかかる。 嬉しくて涙が溢れ、背中に回した手をギュッとした。 強く抱き合って、そのまま彼が耳元で呟いた。 大倉「めっちゃ会いたかった…。」

2015-08-26 08:00:36
りえぷぅ @riem124blue

457 零れた涙の量がまた増えてしまって、言葉にならない。 耳にチュッてして「そんな泣かんといて」って聞こえた。 ゆっくり腕の力を緩めて、私の顔を覗き込むと、優しく指で涙を拭ってくれる。 そして、ニコッと笑ってから短いキス。 大倉「あんま泣いたらブサイクなんで?」

2015-08-26 08:00:51
りえぷぅ @riem124blue

458 この憎まれ口も愛しくて、全然怒れない。 **「忠義…オナカすいた。」 大倉「あっはっは!泣いてオナカすくって、子どもやん!」 豪快に笑ったかと思ったら、またニコッてして。 大倉「えーよ?ごはん行こ?」 手をギュッと握られた。 大倉「何食べるぅ?」

2015-08-26 08:01:14
りえぷぅ @riem124blue

459 **「あっ、ここ…。」 お兄ちゃんと来たあのお店。 最近来てなかったな…松にぃ元気かな…。 大倉「この店知ってるん?」 **「うん、お兄ちゃんとよく来たの。」 そういえば、お兄ちゃんとも最近会えてない。 会社立ち上げてから、忙しそうだったし、私も幾田さんが…。

2015-08-26 08:01:28
りえぷぅ @riem124blue

460 大倉「ここ入る?」 **「うんっ!」 お店に入ると、松田さんがすぐに気付いて、嬉しそうに席へ案内してくれた。 松田「なんだぁ~彼氏めちゃくちゃイケメンだなぁ!」 なんて彼の背中をバンって叩いた。 大倉「うわ、痛った!」 相変わらず手加減ナシ。

2015-08-26 08:01:41
りえぷぅ @riem124blue

461 松田さんのおいしい料理と、お酒で、会えなかった時間を埋めるようにたくさん話した。 **「そっかぁ…まだ仕事決まんないんだ…?」 大倉「とりあえずは単発のバイトやってんねんけどなぁ…。」 松田「なんだ、仕事探してんの?はい、揚げだし豆腐。」

2015-08-26 23:31:16
りえぷぅ @riem124blue

462 大倉「そうなんです。なかなかうまくいかへんくて。」 松田「どんなの探してんの?」 大倉「まぁ、基本はどんなんでもいいんですけど、前やった経験からいくと、実はこういう居酒屋ってゆーか、料理とかお酒が好きなんで…。」 松田「なんだ、じゃあ働くか?」 大倉「えぇっ?」

2015-08-26 23:31:21
りえぷぅ @riem124blue

463 松田「ここで。この前バイト辞めちゃってさぁ、ちょうど困ってたんだよ。」 大倉「えぇっ?!ホンマですかぁっ?!」 松田「おー、いいよぉ?とりあえず今日はあれだから、明日から来るか?」 大倉「でもその…面接とかも…、」

2015-08-26 23:31:26
りえぷぅ @riem124blue

464 松田「んあー、いい!いい!そんなんやったって、本質わかんねーから!俺はねー、一緒に現場立って、その場で見定めるタチなの!どぉする?」 大倉「…是非、お願いします!!」 忠義が立ち上がって深く頭を下げた。 松田「いやー、助かったわぁ~募集するのとか、面倒臭ぇし!」

2015-08-26 23:31:30
りえぷぅ @riem124blue

465 松田さんが「じゃっ」て、また彼の背中を叩いて立ち去る。 大倉「…仕事…決まったわ…。」 **「あはは!良かったねっ!」 大倉「なんか…ありがとぉ!」 **「このお店に入って良かったね♪」 大倉「ほんまやわぁ!」 彼の大好きな笑顔が見れて、ホントに幸せだ。

2015-08-26 23:31:35
りえぷぅ @riem124blue

466 店を出ると、楽しかった空気がパッと変わった。 お別れの時間が迫ってるから。 たぶん、彼もそう思ってるんだよね。 適当に、ゆっくりと…2人並んで歩く。 大倉「やっぱり…帰らなあかん…?」 **「…帰らなきゃ、また監視がキツなるよ…。」 ホントは…全然帰りたくない…。

2015-08-26 23:31:39
りえぷぅ @riem124blue

467 当たり前に繋いだ手がキュッと握られた。 大倉「もうちょっとだけ…一緒におろや?」 **「…うん…いーよ…。」 彼について、少し暗い照明の建物に入る。 **「意外と普通の部屋なんだね…。」 大倉「そやな…ごめんな?こんなとこ…。」

2015-08-26 23:31:43
りえぷぅ @riem124blue

468 照れてるのと、申し訳ないのと…そんな顔。 **「ふふ…いーよ…私もまだ一緒おりたかったし…。///」 彼に背を向けて、ベッドの端に座ると、静かな部屋に音を探してテレビをつけた。 『あぁぁん!』って女の人の声。 **「わっっっ!!///」 慌ててテレビを消した。

2015-08-26 23:32:19
りえぷぅ @riem124blue

469 大倉「あはっ!!」 笑いながら隣にきた彼。 **「…テレビは…普通やなかった…。///」 大倉「あっはっはっ!たぶん、普通のも映るやろ?あっはっはっはっ!」 **「もぉー!///笑い過ぎやし!!///」 肩をパシッと叩く。 笑いすぎて、止めることも忘れてる。

2015-08-26 23:32:29
りえぷぅ @riem124blue

470 **「もぉー…ほんま笑い過ぎ…拗ねんで…!」 大倉「あ~ごめんごめん♡」 ギュッと抱きしめられる。 大倉「やっておまえ、めっちゃかわい過ぎんねんもん。拗ねんといて?」 ずるいなぁー…ほんとずるい…。 こんなの、すぐ許しちゃうよ…。

2015-08-26 23:32:35
りえぷぅ @riem124blue

471 そっと身体が離れ、チュッとキスされた。 大倉「許してくれるやろ?」 **「………しょうがなく…許す…。」 大倉「あはっ!しょうがなく?」 そしてまたすぐに唇が触れる。 そのまま押し倒されて、少しずつ深くなるキス。 大倉「やっぱ帰したないなぁ…。」

2015-08-26 23:32:41
りえぷぅ @riem124blue

472 ―――――― 次の日の朝、幾田さんはいつも通りに私を迎えに来た。 **「…幾田さん…体調は…、」 幾田「…昨日はお送りできなくて、申し訳ありませんでした。お陰様で良くなりましたので。」 ホントはなんともなかったくせに…。 どうして、あんなことしたんだろ…?

2015-08-30 00:06:24
りえぷぅ @riem124blue

473 幾田さんは…てっきりお父さんの見方だと思ってたのに…。 ますます謎で…なんか興味が湧く。 車に乗って大学へ。 運転する幾田さんに、初めて話しかけてみる。 **「幾田さんって…いくつ?」 幾田「もうすぐ22です。」 **「…同い年…!」

2015-08-30 00:06:32
りえぷぅ @riem124blue

474 幾田「はい。」 びっくり…。 落ち着いてるからかな…年上だと思ってた…。 **「兄弟はいる?」 幾田「いえ。」 **「じゃー、一人暮らし?実家暮らし?」 幾田「両親は他界しましたので、1人です。」 **「えっ?あっ…ごめんなさい…。」

2015-08-30 00:06:36
りえぷぅ @riem124blue

475 幾田「随分昔の事ですので、気になさる事はありません。」 そういうのもあるのかな…すごく大人な感じ…。 **「あっ、“もうすぐ22”って、誕生日いつ?」 幾田「明後日です。」 **「明後日?!ホントすぐだね…!」 幾田「はい。」

2015-08-30 00:06:42
りえぷぅ @riem124blue

476 **「じゃあさっ、その日は誰かにお祝いしてもらうの?友達とかー、彼女とかー?」 幾田「両親を亡くしてから、そういう事とは無縁です。」 **「・・・・。」 幾田「...仕事が好きなので。」 黙った私をチラリと見て付け足した。 なんか…不器用だなぁ…。

2015-08-30 00:06:48
りえぷぅ @riem124blue

477 大学に着いて歩いていたら、久しぶりに安田くんと話してるリナがいた。 リナの表情は穏やかにも見えるけど、安田くんは、眉間にシワを寄せて俯いている。 何かを渡してリナは立ち去った。 近寄ると、安田くんは今にも泣きそうな顔して私を見た。

2015-08-30 22:50:37
りえぷぅ @riem124blue

478 安田「俺もぉ、がんばれんかもしれん…。」 そう言って目を落とした手元には、“安田章大様”と書いてある封筒。 **「それ…、」 彼にとって、最悪のモノではないだろうか。 安田「…結婚式の招待状やねんて…。」 **「・・・・!」 …やっぱり…。

2015-08-30 22:50:40
りえぷぅ @riem124blue

479 安田「…ごめん…俺、今日は帰るわ…。」 そう言って、トボトボとその場から去って行った。 リナが歩いてった方へ、彼女を探して走った。 どこにもいなくて…諦めきれず電話しようかとした時、人気のない所で泣いてる彼女を見つけた。 **「…リナ…。」

2015-08-30 22:50:45
りえぷぅ @riem124blue

480 リナ「…泣くならあんなことしなきゃいいのにって思う…?」 **「・・・・。」 少しそう思うけど、彼女なりの決着の付け方なのかなって思った。 安田くんも、あれなら諦めるかもしれない。 リナ「…大好きだった…愛してた…。」 **「…うん…そうだよね…。」

2015-08-30 22:50:48
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