削れていく音が、暗闇に響いている。磨くには粗過ぎたやすりが凹みを何度も何度も行き来して。細く、細く、そうすれば……? 願望を溢すことすらためらって、消しゴムでなぞった。小さく、小さく、そうすれば。削りカスが床を汚していく。こんなの、見ないで。おやすみ、暗闇だけしか、あいせない。
2013-12-15 04:47:15なにもかも、なんて無理だ。この手のひらの届く範囲さえ、きっとすくえないから。それでも、なんて、言えないんだ。僕の手を掴みに来て。握り返すことならきっと、出来るはずだから。おやすみ、暗闇の中で待っている。
2013-12-21 03:10:42さよなら、を告げるには、きっと何か、が必要で。何もないから、さよなら、さえもなかった。ただ惰性のように続いていく時間が、かなしい、と気付くことさえもさよならに近付く。何もない。何もない。何も、ない、よ。だから、さよなら、も出来ない。麻痺した瞼を閉じる。おやすみ、暗闇だけが有った。
2013-12-24 02:45:45夜に置き去りにしていく僕を、朝に辿り着いた僕が見つめている。漕ぎ出した舟の通る路をまだ知らない僕と、知ってしまった僕。しあわせ、は、どちらにも形を変えて存在した。僕らはしあわせだ。繰り返し繰り返し、呪いをかける。しあわせを乗せた舟は泥濘の空を往く。おやすみ、暗闇だけを迎えにゆく。
2014-04-22 02:01:51見つからない言葉に溜め息を繰り返した夜に、朝へと繋がる路だけが落とされていた。拾い上げることを躊躇った指先にもうペンは握られていない。今夜はもう、諦めたんだろう? だったら、拾うしかない。踏み出した足がひんやりと冷たい。朝は、冷たいのが良い。おやすみ、暗闇に言葉を置いていけない。
2014-04-30 01:52:32嘘と嘘を混ぜ合わせた虚骨の城は 止まりかけの独楽のように揺れている その上に日常を敷いた僕の物語はなぞっても目が廻るだけ 崩壊という結末を迎えなければ 正しい回転を取り戻すことは出来ない 目を廻したひとの瞼に触れる 朝の光に城は耐え切れず溶け消える おやすみ、暗闇だけに愛されたい
2014-05-20 04:31:33