中世に城を建てるのって大変?!

一口に城を建てるといっても、それがいかに大変か。コストの面から書かれた記事を抜粋翻訳してまとめました。 使用したウェブ記事は以下のものになります。 http://www.medievalists.net/2015/09/24/medieval-fort-building-101/?utm_content=bufferc444c&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer http://www.press.uchicago.edu/Misc/Chicago/071633.html
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tenpurasoba @tenpurasoba4

さて遅くなりましたが、昨日予告していたとおりこちらのツイートの記事についてご紹介いたします。 twitter.com/Medievalists/s…

2015-09-27 21:09:48
リンク Medievalists.net Medieval Fort Building 101 What does it take to build a fortification in the 10th century?
tenpurasoba @tenpurasoba4

意訳すると「中世の城建築のいろは」になります。 10世紀に神聖ローマ帝国初期を担ったハインリヒ1世の時代に築城にいかにコストがかかったか、ある論文より抜粋してまとめたもののようです。 twitter.com/Medievalists/s…

2015-09-27 21:14:01
tenpurasoba @tenpurasoba4

元となった論文はこちらのようです。有償で今回は閲覧してません。 The Costs of Fortress Construction in Tenth-Century Germany: The Case of Hildagsburg brepolsonline.net/doi/abs/10.148…

2015-09-27 21:15:46
tenpurasoba @tenpurasoba4

息子オットー1世が初代神聖ローマ皇帝となるハインリヒ1世は919年ドイツ王になります。彼はスラヴ・マジャール人の侵入を防ぐべく929年からの6年間に3ダースもの城を建設します。彼の建てた城の一つに注目し城を建てるのに必要な要素を見ます pic.twitter.com/2vbuxRdgeH

2015-09-27 21:24:30
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tenpurasoba @tenpurasoba4

注目するのはHildagsburgという城。ドイツ・ザクセン=アンハルト州。マグデブルク。エルベウにあった城。19世紀に建築材料として使われ現在は一部の壁と遺稿しか残ってないそうです。

2015-09-27 21:29:53
tenpurasoba @tenpurasoba4

1.堀 オットー家式の城は頑丈な壁、盛り土、水を満たした堀で城を守るのが特徴でした。水を満たした堀は、ローも時代やカロリング朝でも見られたものです。城の三方を3万立方メートルの土砂を掘り抜いて作りました。 pic.twitter.com/j0dWa0gHQo

2015-09-27 21:35:13
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tenpurasoba @tenpurasoba4

堀は2重にめぐらし、内堀の寸法は4m×450mで深さ2m。外堀は4m×470mで深さは同じく2m。第3の堀は11m×800m×2m。これらの堀は常に水を満たすための水利工事も行われていました。

2015-09-27 21:38:14
tenpurasoba @tenpurasoba4

参考画像:Beaumaris Castle by Lyn Gateley CC BY 2.0 commons.wikimedia.org/wiki/File:Beau…

2015-09-27 21:39:03
tenpurasoba @tenpurasoba4

2.石の壁 壁はグレーワッケ・硬砂岩と呼ばれる岩をハルツ山地より切り出し運んで使っていました。硬砂岩は堆積岩の1種で、大昔に体積したものが圧縮され岩となったものです。これをレンガ大に切り分けモルタルで固定しながら積んでいきました。 pic.twitter.com/LRfksDvTvo

2015-09-27 21:45:42
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tenpurasoba @tenpurasoba4

モルタルを作るために必要な土砂の量は26万2千キロ。さらに城壁を作るのに使用したレンガ大の硬砂岩ブロックはなんと50万個でした。 参考画像:硬砂岩ブロックとモルタル製の壁 by Arnoldius CC BY-SA 3.0 de.wikipedia.org/wiki/Datei:Moe…

2015-09-27 21:48:03
tenpurasoba @tenpurasoba4

3.築城のための労働者 このような膨大な資材から城を作るのに必要な工数(人×時間で表す必要労働力総数の指標)は300万人時でした。役2700人の労働者を毎日10時間働かせ、熟練工や素人を分け、滞りなく進めても早くて4ヶ月かかりました pic.twitter.com/XTJq4VDwCb

2015-09-27 21:53:08
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tenpurasoba @tenpurasoba4

4.築城技術の継承 このような城を建てる上で、労働者達のマネージメント、力学や水理学など様々な知識、技術、経験を必要としました。著者はそれらの知識はローマ時代より継承されたものでそれらの書物を使っていた証拠があるとしています。 pic.twitter.com/HIOJnmm103

2015-09-27 21:57:13
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tenpurasoba @tenpurasoba4

少なくとも築城技術については「無知蒙昧な暗黒時代なんてなかったんだ!」と主張されています。しかし、実際の築城の発展史を考えると簡単にそう言えるのか疑問は残ります。少なくとも地域によって知識・技術の格差はあったのでは個人的には思います。

2015-09-27 21:59:07
tenpurasoba @tenpurasoba4

5.木造の壁 石造だけではなく木造の壁も使われていました。Hildagsburg城では11000本の樫の木を壁や建材として必要としていました。これだけの木をそろえるのに7400人日の工数を必要とするだろうと試算しています。 pic.twitter.com/QAGdo7hMYs

2015-09-27 22:04:05
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tenpurasoba @tenpurasoba4

また、切り倒した大木を建築現場までの輸送を考えるとさらに費用がかかります。 参考画像:樫の木 by Amada44 CC BY 3.0 commons.wikimedia.org/wiki/File:Oak_…

2015-09-27 22:05:55
tenpurasoba @tenpurasoba4

この記事はここまでなのですが、以上見てきたように城を建てるといっても膨大な資材、労働力、さらに道具、養うための食料。そして知識や技術を必要としていたことが分かります。  そしてこれらすべてが経済的な負担として建築主、すなわち領主や王の肩にのしかかってくるのです。

2015-09-27 22:08:30
tenpurasoba @tenpurasoba4

こちらに築城における費用の大きさといかにして費用を調達していたかについて書かれている”Castles, Battles, and Bombs”という著書の抜粋要約をされているサイトがあります。 press.uchicago.edu/Misc/Chicago/0…

2015-09-27 22:10:34
tenpurasoba @tenpurasoba4

このサイトには、中世において戦争がいかに多く、どれだけコストがかかり、またその費用をまかなうためにいかに王や諸侯は様々な「税」を取り立てていたか書かれています。 少し時代が下りますがイングランドの獅子心王リチャード1世の例を見ましょう pic.twitter.com/nFLodW59Ju

2015-09-27 22:14:03
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tenpurasoba @tenpurasoba4

彼がウェールズにアベリストウィス、カナーボン、コンウィといった城を多数建てますが、それらの総費用をポンド換算すると最大で87000ポンド。有名なカナーボン城は建築に12年、費用は修復も含めて最大27000ポンドかかったとみられています pic.twitter.com/ltEzZReEB9

2015-09-27 22:20:09
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tenpurasoba @tenpurasoba4

まとめになります。 王や領主が領地や臣民を守る上で、城、要塞、砦といったものは必要不可欠なものでした。 しかしそれらの建設・維持費用は膨大なもので、そのための過酷な税の取立てや収奪があった面もあると考えられます。一部には贅沢三昧の領主もいたかもしれませんが、そう容易くないかも。

2015-09-27 22:23:25
tenpurasoba @tenpurasoba4

これら膨大な資材、人員、そして技術者を用意し運用していく上で商人達の存在もまた重要だったのかもしれません。 一つの城を見るとき、その背景にある様々なことについて想像をめぐらせるとさらに面白いかもしれませんね。

2015-09-27 22:28:20
tenpurasoba @tenpurasoba4

最後になりますが、このように膨大なコストと時間と人員がかかる築城を現代で再現しようとする試みがフランスで現在も続いています。 その試みについて以前にまとめましたので良かったらご覧ください。 中世ヨーロッパの城を建てるプロジェクト togetter.com/li/769225

2015-09-27 22:29:42