中世パン図鑑

毎晩寝る前に1ツイートでお知らせする中世ヨーロッパの各国のパン事情を、まとめました(定期更新予定)。 2015年6月7日最終更新 【目次】 中世フランスのパン図鑑 続きを読む
1001

pic "Medieval baker"

 * ~ ヨーロッパ・パンの源流へようこそ ~

はじめに:中世パン図鑑で扱う「中世ヨーロッパ」とは?

tenpurasoba @tenpurasoba4

中世パン図鑑 パン図鑑で扱う中世ヨーロッパ① 中世パン図鑑における「中世ヨーロッパ」について。期間は基本的に5世紀ー15世紀。場所は西はスペインから東はポーランドあたりまでを想定。ただし英仏両国以外の国ごとのパンの詳細な紹介は難しい。 pic.twitter.com/yEFyN42dPo

2015-01-05 00:39:42
拡大
拡大

 一般にヨーロッパの「中世」時代はおおよそ5世紀から15世紀あたりまでとされている。

1000年もの長い期間のため、中世初期(500-1000年頃)、中世盛期(1000-1300年頃)、中世後期(1300年-1500年)に分けられる事もある。

 中世の前の時代が、古代ローマ帝国に代表される古代。

 中世の次の時代が、ルネサンス・宗教改革・大航海時代に始まる近世となる。

「ヨーロッパ」とは

 ヨーロッパ大陸はユーラシア大陸の西端の以下の条件で囲まれた陸地となる。
・モスクワのずっと東側にあるウラル山脈
・黒海とカスピ海の間にあるカフカス山脈
・黒海、地中海

 政治勢力圏としての「ヨーロッパ」は歴史と共に常に変わってきた。

中世ヨーロッパはどんな時代?

 一般に中世ヨーロッパは、童話やおとぎ話のようなメルヘンなイメージ。もしくは全く逆に無知と暴力が渦巻く暗黒時代のイメージの両極端で語られがちだ。

 かつてヨーロッパでも、近代社会を作っていく上で中世は抜け出すべき悪しき時代として叩かれ蔑まれていた時期があった。

 しかし近年では、古代と近世をつなぐ時代としてそれなりの役割をもっていたとして見直され、様々な研究を通してどんな生活をしていたかおぼろげに見えてきた。

 このまとめでは、その研究成果のほんの一部を元に、パンという切り口で中世をながめてみようというものである。

tenpurasoba @tenpurasoba4

中世パン図鑑 パン図鑑で扱う中世ヨーロッパ② 期間は一般的定義かつ主要参考文献の範囲が理由である。ジャック・ル・ゴフらのように社会生活面で18世紀まで中世とする立場もあるが、社会風俗、流通する材料、技術の変化から一般的定義の中世とする pic.twitter.com/1qqXtRkSXY

2015-01-05 00:43:09
拡大

pic"Half Moon in Hudson"

 封建制がおおよそ18世紀まで続くため社会生活的にはそれまで中世とほぼ同様と考える見方がある。

 しかし料理やパンの発展を見ると、近世以降に様々な食材や技術が普及していく中でそれまでとはまた違うパンになっている。

 そのため中世パン図鑑における中世の範囲は従来通り概ね15世紀あたりまでとする。

tenpurasoba @tenpurasoba4

中世パン図鑑 パン図鑑で扱う中世ヨーロッパ③ 地理的範囲については筆者の情報収集能力に負うところが大きい。日本語もしくは英語の情報を基本に集めているものの、英仏独のパン以外については2言語で読める情報が少なく結果的に少ない紹介となる pic.twitter.com/VjYDjiOlIt

2015-01-05 00:44:09
拡大

pic"Meister des Codex Amiatus"

 既にカタログとしてフランスとイギリスの中世のパンを紹介している。

 現在、中世のパン作り事情を紹介しており、それが一段落した段階でドイツ、オーストリア、ポーランド、イタリア、スペインなどの各国の中世のパンの紹介に入る予定である。

中世フランスのパン図鑑

tenpurasoba @tenpurasoba4

中世パン図鑑 「中世のパン」F・デポルト パンは貧富を問わず基礎的な食料であり、13世紀には小麦パン、ライ麦パン、混合麦パンなど様々な配合のパンが違う種類のパンとして販売されていた。一方形状はどれも丸パン(小:球状、大:平パン)だった pic.twitter.com/31tYmNkIrt

2014-09-24 02:15:19
拡大
tenpurasoba @tenpurasoba4

中世パン図鑑 ダンレのパン 誰にもパンが買えるようにとパンは常に1ドゥニエで売られていた。パンは1ドゥニエ銀貨で買える商品、即ちダンレの代表だった。材料の価格変動をパンの大きさを変えることで対応する事を16世紀まで続けた。 pic.twitter.com/7CLZNw9xpC

2015-04-19 10:36:26
拡大

pict"Denier Charlemagne"
Attribution: Classical Numismatic Group, Inc. CC BY-S A3.0

中世フランスの貨幣
 ドゥニエ銀貨の名前はローマ帝国の銀貨「デナリウス」を受け継いだものと言われている。

 8世紀にカール大帝が1リーブル=20スー=240ドゥニエという通貨制度を制定した。

 しかし実際に貨幣として発行・運用されたのはドゥニエ銀貨が殆どで、富裕層は11世紀頃まで東ローマ帝国が発行したソリドゥス金貨を使用していた。

 11世紀以降実際の通貨はドゥニエ銀貨のみとなり、リーブルとスーは会計上の概念通貨としてのみ利用されたようだ。

 13世紀にルイ9世によって国際貿易振興のために聖ルイのグロ貨(12ドゥニエ相当)、エキュ金貨(10スー相当)が発行された。

 1360年の百年戦争期には、国王ジャン2世を解放する身代金として1リーブル相当としてフラン金貨が発行された。

 農民への貨幣浸透と共に身近になったドゥニエ銀貨は、13世紀により質の良いグロ銀貨の普及に伴い使われなくなったようだが、単位としてのドゥニエはその後も使われ続けたようだ。

 1ドゥニエ商品を表すダンレ(denrées)は今日ではフランス語で食品を意味する。

 日本円に換算した場合の価値は一概に言えないが、500円相当とする考え方もあるようだ。

参考サイト
東京外国語大学 大学院総合国際学研究院川口裕司研究室 中世の貨幣
コインの散歩道 ヨーロッパの中世 1481年 ~ フランスのパンの値段
French denierFrench livreFrench franc

tenpurasoba @tenpurasoba4

中世パン図鑑 パン・ドゥ・ポワーズ ライ麦パン 650gで1ドゥニエ。二級品扱いで重量を一定に価格を変動させて対応した。ライ麦専門店が多数あった。eighty percent rye bread with flax seeds flic.kr/p/4oRt1W

2015-04-25 17:10:17

Flicker by sierravalleygirl CC BY-NC 2.0
 
 北フランスのトロワ、ランス、ナント、レンヌ等では、小麦パンを扱うパン屋とライ麦パンを扱うパン屋は厳密に区分されていた。

tenpurasoba @tenpurasoba4

中世パン図鑑 白パン 上等の小麦製のこのパンは、古くから美食家のための一番風味豊かなパンとされてきた。葡萄酒やチーズと一緒に味わって食べる「口のパン」パン・ド・ブーシュなど様々な呼称があった。 Pane Paisano flic.kr/p/bNDXSP

2015-04-26 18:26:30
1 ・・ 16 次へ