フォロウ・ザ・コールド・ヒート・シマーズ #6

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺はカミ!カミ、それはゴッド。俺はレースの神なんだよォ!」レイコ・カミのリーゼント・ポンパドール・ヘアが風を切る。「それをわからせる!それが俺のカミマスター!」「ヘイ、ビューティー!ケツに火をつけな」サンダリイ・ライラがホット・チックを急かした。「恥かかせるんじゃないよ!」23

2015-09-29 20:12:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「4番手レイコ・カミがホット・チックに果敢に挑んだぞ!当然、クラッシュ殺害報酬は提示されているが、果たしてどうなる」ビッグユージがヘリから身を乗り出した。「ンンー……そして、つかず離れずか。一定のポジションを確保した後はそれを堅持するかのようなサイサムライ。これは不気味!」 24

2015-09-29 20:14:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「満足しちゃいけない」キンキー・コウイチは肩をすくめ、定時摂取時間が来たプロテインを飲んだ。「成長、つねに成長。それがビジネス。グラフを斜め上に動かしていく意志があって、初めてマイナスは避けられるんだよ?横這いを目指すようなやり方じゃ……」彼は指で輪を作った。「ゼロだね」 25

2015-09-29 20:17:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウーム。それはともかく、彼らは再び樹海に突入だ。ここからは車載カメラを拾っていくしかないが、うまく働くといいが?」彼は早速先頭のサンライザーに、そのあと、デッドムーンに映像を切り替えた。「んッ?コースアウトだと?どうした」ユージは目を見開き、UNIXモニタに顔を近づけた。26

2015-09-29 20:20:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ネズミハヤイDIIIは三日目の為に整備された樹海内の直線コースを不意にはずれ、木々のあわいに進んでいく。「何やってる。ルートはそっちじゃない。クラッシュしちまう!まさか……」ビッグユージは呻くように言った。彼は一瞬、よそ行きの声を出し忘れ、慌てて繕った。「狂ったか第2位!」27

2015-09-29 20:27:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オオオオオン!その時だ。サンライザーが急激なドリフトをかけた。そして彼もまた樹海に飛び込んだ……ネズミハヤイDIIIを追うかのように!「な、なにを一体!」「秘密のショートカットでも見つけたのかしら?」フラストミチ・マレナが興味深そうに言った。「それはないでしょう!」とユージ。28

2015-09-29 20:31:14
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ユージは言葉に詰まり、数秒間マイクをオフにした。そしてヘリの内壁を殴りつけた。「ダムンシット!ブッダファック!白昼夢め!」そしてマイクをオンにした。「ン―……な、何かが起きている!そうするうちに、なんてこった!現在一位はホット・チックだ!そのすぐあとにレイコ・カミが続くぞ!」29

2015-09-29 20:33:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユージはホット・チックを追うレイコのカメラに中継を切り替え、バリキ・ドリンクを飲んだ。「くそッ……サンライザーの奴……過去の亡霊に囚われて……終わったんだ、あの事故は終わったんだよ!だいたい、あのデッドムーンの野郎!サンライザーにわけのわからん事を吹き込みやがったから!」30

2015-09-29 20:36:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そうするうちにも、2台の位置情報マーカーはぐんぐん東に逸れてゆく。「サンライザー!バカをするンじゃない!」「中継戻さないと……」アシスタントが冷汗を垂らした。ユージはアシスタントの頬を張った。非道!「アイエエエ!」「わかっとるわ!」マイク再度オン!「後続グループ!戦闘中だ!」31

2015-09-29 20:43:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シスターオブマーシーとヘルトリイ999は今やレース度外視の最後尾泥沼格闘状態に陥っている。武装救急車はミニガンの弾薬を撃ち尽くしたが、ヘルトリイ999はかろうじて走行継続可能であった。武装救急車はなおも体当たりをかける。それは機械モンスター闘犬めいていた。32

2015-09-29 20:49:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

しかし、ナムサン!樹海に突入するにあたり、そのような戦闘状態では必然的な終わりが待っている。KRAAAASH!KABOOOM!二台はそれぞれ大樹に高速で衝突、爆発炎上した。燃え盛る車内からナースニンジャ装束を着たニンジャと黒い悪魔崇拝三角帽頭巾をかぶったニンジャが跳び出した。33

2015-09-29 20:53:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」二者はカラテを応酬し、互いに殺し合いながら樹海の奥へ消えていったが、カメラに映ったのはそのほんの端緒、爆発炎上のノイズにまみれた映像が二筋の色付きの風を捉えたに過ぎなかったであろう。 34

2015-09-29 20:55:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「サヨナラ!」どちらか一方の断末魔の叫びを耳にした者は無かった。ビッグユージのヘリコプターはスタジアムめがけ移動を開始。先頭車両が帰還する栄光の瞬間を、観客と一体となって捉える必要があるからだ。それがユージの仕事だ。彼はサイサムライがコースを外れた事実を見落としていた。35

2015-09-29 20:59:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アリシアV。クロームシルバーの美しいボディと奥ゆかしい瓦屋根シュラインを備え、ガトリング掃射に耐え、海に落ちようが気にしない。ダッシュボードにはレコードプレイヤーが備え付けられ、サスペンションは完璧、針飛びの心配も無し。オカキとコブチャのサービスすらも可能だ。 37

2015-09-29 21:11:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

要人の死体、それはダイヤに等しい。政治家、ハイ・ボンズ、ヤクザ・オヤブン。彼らは闇モージョーの呪術儀式の危険にさらされている。彼らの死体を敵対組織の魔の手から守るためには、タフなクルマ、タフなプロフェッショナルが必要だ。それが武装霊柩車……謎めいて神秘的な生業である。 38

2015-09-29 21:17:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゲバタ・テルコは武装霊柩車乗りの間でリヴィング・レジェンドだった。かつての話だ。今や彼女の生死をはっきり知る者は稀だ。彼女はタフな仕事から足を洗った。それでもカネは要る。ハシリ・モノ。いいレースだ。なかなか、やる連中が揃っていた。サンライザー。鼻っ柱の強い男。小僧を思い出す。39

2015-09-29 21:22:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゲバタの横顔には深い皺が刻まれている。彼女は年老いて、かつ、麗しい。黒漆塗りのハンドルを握る白手袋。レコードスピーカーから流れるのは擦れがちなカヨウキョク。彼女同様麗しきアリシアVは、陰気な枯れ野をまっすぐ走る。遠く見えるのはフジサンの影。外気の寒さ。 40

2015-09-29 21:29:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

妙な迂回ルートを取らされたものだ。ゲバタは方位磁石を確認した。そしてこの代り映えのしない景色と来たら。「陰気だ」ゲバタは呟いた。彼女は不意に違和感をおぼえた。唾が絡んだ。まるで最後に言葉を発したのがずっと昔の事のようだ。「フ」ゲバタは自嘲した。「疲れやすくって仕方ない」 41

2015-09-29 21:36:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そして数秒。彼女は眉根を寄せた。つまり、なんの違和感だ?なぜ自分はおかしいと感じている。ガラスの外を見やる。フジサン。枯れ野。彩度の低い。「……?」前方に影。ゲバタは引っ掛かりを覚え、速度を落とした。人間だ。トレンチコートとハンチング帽の男が手を伸ばし、親指を立てている。42

2015-09-29 21:41:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「こんなところでヒッチハイクとは酔狂なこと」ゲバタはドアウインドウを開け、男を見た。「道路も無いというのに」「いいんです。これで」男は確信的に頷き、ゲバタを見た。「現に、貴方は止まってくれました」「ハ!」ゲバタは鼻で笑った。「確かに、そうね」「ドーモ。イチロー・モリタです」43

2015-09-29 21:46:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どこまで乗せてほしい」「この世まで」イチローは言った。ゲバタは肩をすくめる。「ユーモアのセンスは共有できないようね」「このあと説明します。ナビゲーターは要りませんか」「あら」「デッドムーン=サンのナビをしていました」ゲバタは眉根を寄せた。助手席ドアが開く。「お乗りなさい」44

2015-09-29 21:56:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「つまり、アリシアはこの場所を丸一年走り続けていたと、そう言いたいのね」「迷い込んだ人々の時を捕えて繋ぎ止める。そうしたジツがはたらいていた。ニンジャのジツが」イチローは言った。「ですが、そのニンジャは、滅ぼしました」「そう」ゲバタはイチローを横目で見た。「信じるわ」 45

2015-09-29 22:07:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゲバタがボタンを押すと、コブチャとオカキが滑り出た。「随分お疲れのようだから」「助かります」イチローは頭を下げ、厳かにオカキを食べ、コブチャを飲んだ。「あの子は元気にしている?」ゲバタは尋ねた。イチローは答えた。「直接会って確かめればよい」「違いない」ゲバタは笑った。 46

2015-09-29 22:13:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「このまま走り続け、領域の境界の外に出れば、それで抜けられる筈」イチローは言った。「もはや縛る者はいなくなった」「老い先短いのに、無駄な時間を費やしてしまったものだわ」「恐らく貴方自身の時間は数時間も経過してはいないでしょう」イチローは言った。ゲバタは苦笑した。「飛ばすわよ」47

2015-09-29 22:25:22
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