南洋諸島の原住民証言

イヌノオー@ウマシカliberalism @inunohibi

処分する本を考えて、高橋哲哉・小森陽一編著「ナショナル・ヒストリーを超えて」に目を付ける。積読だった。全く読まないまま捨てるのも気が引けるので、目次だけでも目を通そうとした。論文集であり、一つ一つは短い。

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すでに読んだことのある名前を見ると、持論を短くまとめたもののようだ。面白くなさそうな論文が並んでいる。その中で気になった、川本隆史氏の国民的歴史学運動に関する小論、ベトナム現代史研究者・古田元夫氏の、農村調査についての詳論が面白かった。

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古田氏は、１９４５年、インドシナを占領した日本軍が引き起こした飢饉について、調査した。村の古老の証言は多様で、やってきた日本軍は粗暴で、衝突で村の人が数人死んだという話もあれば、意外と軍規が厳正で、助かったという話もある。

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古田氏は、「かわいそうな被害者像」を強調するために、後者のような証言を切り捨ててはいけないし、「日本軍は良いことも悪いこともした」という結論で済ますわけにも行かない。歴史的な背景の中で、位置づけなおすことが歴史家の仕事だとした。

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最近、「日本統治時代の南洋諸島」という同じテーマの新書が、別の出版社から出た。荒井利子「日本を愛した植民地　南洋パラオの真実」（新潮新書）と、井上亮「忘れられた島々　南洋群島の現代史」（平凡社新書）。

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これはユングに言うシンクロニティーのなせるわざ・・・、なんてわけはなく、今上天皇・皇后のパラオ訪問で、南洋諸島が注目を集めたからだろう。前者は目次の見出しを見ると、無邪気な戦前日本の賛美というかんじ。いかにも新潮。

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立ち読みをしていると体が悪くなるので、早々とこれは切り上げた。「忘れられた島々」、ゆっくり読むのは後にしているが、メモとして、著者が強調しているのは、「動物園政策」といわれたアメリカの占領統治に比べて、日本統治はまだマシだったようだが、それを美化してはいけない、

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ということ。インタビューされた現地住民の証言では、「（公学校）二年生からポナペ語を使うとベランダに立たされたり、便所掃除などの罰があった」とあり、現在の基準で言えば十分ひどい教育を受けている。

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いや、当時でもひどかったはずであり、朝鮮半島の植民地統治では、朝鮮語を使った子供への「罰札」などを、戦後早いうちから研究者が問題にしていた。公式には、こういう「現地語抹殺政策」というのはなかったようだ。ただ現場の体質というのは、公式の政策だけでは図れない。

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たとえば教師の体罰というのも、日本では戦前から法律で禁止されていたが、「だから日本の学校で体罰などありえない」などといったら笑いものだろう。

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井上亮「忘れられた島々」では、当時の日本人が持っていた南洋認識を示す作品として、戦前の人気漫画「冒険ダン吉」を取り上げる。ダン吉という少年の釣り船が漂流し、南洋諸島をモデルにした「野蛮人の島」にたどりつく。

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ダン吉は文明人としての知恵を駆使して野蛮人を平伏させ、その島の王様になる。病院、学校、鉄道を教え、日の丸神社を建設し、白人の侵略に備えて軍備を整える。

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「蛮公」は肌が黒くて見分けが付かないので、白地で胸に番号が描かれる。文字通りの総背番号制度だ。今聞いたら、ひっどい話やの～。 pic.twitter.com/sh5eOO8NSr

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井上亮「忘れられた島々　南洋群島の現代史」に載っている証言を、他にも抜粋する（本書も証言集から引いているので、孫引きになる）。ロタ島のフィリップという男性、「私が小学校のときは岩崎先生という方がいらっしゃられ、その先生に非常に可愛がられ、

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いつも先生の後について先生のお手伝いをしたり（・・・）」「一方ではぬぐいきれない差別を悲しく思い、その考えは揺れ動いていた」「その頃、私達は日本人とはいっさい一緒に遊べなかった。運動会があったら日本人は日本人、現地人は現地人、これがほんとに悲しかった」

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サイパンで家族をなくした、神里エツさんの話。「昔は、日本軍が陣地作りや糧秣運びにといって地元のチャモロ人を奴隷のようにこき使っていたよ」「だから戦争が始まったら、チャモロ人は日本軍の糧秣の場所や地雷の場所をすぐにアメリカ軍に教えよった」