『ア・トート・ザット・スターツ・ア・ライオット』#1
- shiroboshi2
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重金属酸性雨が降りしきる街、ネオサイタマ。雑多な電子看板群が、その雨によってぼんやりとした光を、夜景に添えている。1 #S57Ninja
2015-10-09 22:07:31退廃的でありながら、どこか幻想的なその夜を駆ける者あり。その者は建物の屋根屋根を飛び渡りながら駆けていた。常人であれば、色付きの風にしか見えぬであろうハヤイさ……無論、彼はニンジャだ。彼。然り。男のニンジャだ。2 #S57Ninja
2015-10-09 22:16:14ニンジャの頭部は無機質なフルメンポに覆われている。目元は、サイバーサングラスがバイザーめいてフルメンポに埋め込まれており、赤くぼんやりとした光を覗かせていた。ニンジャの名はウォーフォージド。アマクダリ・セクトの油断ならぬ斥候ニンジャである。3 #S57Ninja
2015-10-09 22:25:24「……」彼は無言のままに駆ける。時折、後方を確認しながら。その表情は無機質なフルメンポとバイザーめいたサイバーサングラスに阻まれ、窺い知れぬ。 ウォーフォージドは先刻、既に2つのミッションを完遂させていた。そして今は、3つ目のミッションの遂行中である。4 #S57Ninja
2015-10-09 22:30:10そのミッションは、先に済ませた2つの殺害ミッションと比べると、容易なものである。密書を届ける。アマクダリ・アクシスたるニンジャ、ロブストボアへ、だ。非常にシンプルなミッションだ。しかし彼は、何時からか違和感を覚えていた。尾行されているかのような感覚だ。5 #S57Ninja
2015-10-09 22:33:58「……」ウォーフォージドは感覚を研ぎ澄まし、意識を世界に向ける。間違いない。何者かが自分をつけ回している。彼は屋根から目立ちにくい路地裏へと飛び降り、小道を進んでいった。しかし、運悪く道はそこで行き止まりになっていた。6 #S57Ninja
2015-10-09 22:38:17「Wasshoi !!!」 禍々しくも躍動感のある掛け声とともに、屋根の上からもう1人のニンジャが跳躍した。そのニンジャは体操選手の着地ポーズのように姿勢良く腕を広げたまま、稲妻のような速さで路地裏に飛び降り、ウォーフォージドの退路を塞ぐ。7 #S57Ninja
2015-10-09 22:41:50闇の中で対峙する2人のニンジャ。彼らはお互いの中心点を軸にして、円を描くようにじりじりと歩み、間合いをうかがった。 「ドーモ」 飛び降りたばかりの暗い影が、横歩きを一瞬止めて一礼をした。 「ドーモ」 ウォーフォージドもこれに答えて一礼をする。8 #S57Ninja
2015-10-09 22:46:12先に正々堂々とアイサツをした男は、動脈血のように赤黒いニンジャ装束をまとっていた。風がマフラーのようにたなびく襤褸布を揺らして、彼の口元をあらわにした。赤々と燃える目より下は、金属メンポで覆われ、その両頬には『忍』『殺』の文字が刻まれていた。9 #S57Ninja
2015-10-09 22:47:46「……ニンジャスレイヤーです」エントリー者はジゴクめいた声でアイサツを済ませる。ウォーフォージドはアイサツを返した。「……ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ウォーフォージドです」「イヤーッ!」瞬間、ニンジャスレイヤーの右腕がムチのようにしなる!10 #S57Ninja
2015-10-09 22:50:54そこから目にも留まらぬ速度で射出されたのは……2枚のスリケン!「イヤーッ!」ウォーフォージドのバイザー奥でサイバネ・アイが赤く不気味に光る。同時に彼は、自らの両目を破壊せんとするこの恐るべきスリケンをチョップ迎撃!スリケンが割れ砕け、地に落ちる。11 #S57Ninja
2015-10-09 22:55:16