ストレイトロード:ルート140(15周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビがお届けする、短編という名の習作。 今回は701~750+関連ツイート+おまけ。 これからも1日1組つぶやきますのでお楽しみに。 コピー本関連の話は最後の方にまとめました。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

これは最終的にどこを目指す旅なのか。常にはぐらかされる目的地について、私は思いきって問い質した。「なんでそんなこと」藍は答えたくないらしい。だが私の表情をじっと見ると、悲しそうな目をして呟いた。「行きたい場所があるの」小さな指が世界地図の一点を指した。「でも、入り方がわからない」

2015-09-24 19:37:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、734。目指す。 いずれきちんと書きたい一場面。

2015-09-24 19:37:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

用事を終えた藍を家へ送り届ける途中、ある街を再び通るか迂回するかで意見が割れた。そこは彼女が街の有力者と一悶着起こした場所なのだ。「今日はいつもより文句多いね」私は懸念を伝え、藍の意見を確かめただけだ。しかし彼女はそれを拒否だと捉えたらしい。「いつあなたが決めていいって言った?」

2015-09-25 20:05:40
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、735。文句。 一方通行だったら起きない問題だったのに。

2015-09-25 20:05:49
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍から紅茶の淹れ方を教わることになった。薬鑵の扱いから間違えているとまで言われた私に迂闊なことは言えない。「よく見てなさい」見せつけられた手本には下準備の段階から様々な気遣いが見て取れた。それも当たり前のことをする顔でこなす。「その年まで生きてて本物を知らないなんて信じられない」

2015-09-26 21:47:43
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、736。薬鑵(やかん)。 そこにも見よう見まねだけでは届かない世界がある。

2015-09-26 21:47:49
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

体の異変を自覚したのは車を降りた時だった。運転への集中を失うと共に体の力が抜け、気づくと膝をついていた。「あんな顔色で運転続けるなんて」藍の小言が遠くに聞こえる。「しょうがないからしばらく休憩ね」足止めを嫌う彼女から珍しく猶予を得られた。私は目を閉じた。それからどこかへ運ばれた。

2015-09-27 22:37:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、737。猶予。 気を配る対象が多すぎると自分のことを忘れがち。

2015-09-27 22:37:20
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

今夜の月は特に美しい。皆が口を揃えた日だった。村人が夜空に見とれる隙に私達は隠れ場所を抜け出し、石を浴びることなく、車を降りた場所まで戻った。「やっとお月見ができる…何あれ」藍の足が凍った。明るい夜空の下に、月が落ちていた。無数のクレーターに覆われた白い車が畑の隅で横転していた。

2015-09-28 19:14:18
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、738。夜空。 それは魔女狩りの猛威が去った後の晴天。

2015-09-28 19:14:24
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍は橋の上から川面に映る塔を撮影している。彼女を待つ間に周囲を見ると、川を流れてくる何かの影が目に留まった。私は欄干から身を乗り出した。「待ちなさい!」腰のベルトを後ろから引かれた。謎を見失った。「まだ仕事は残ってるの。勝手なことしないで」藍は私が自ら飛び込む気だと思ったらしい。

2015-09-29 20:21:01
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、739。欄干。 あなたのことは心配だ。自分自身のために。

2015-09-29 20:21:08
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

私達が観察しているとも知らず、怪物の子供は草原を走り回っていた。助走をつけては転び、何度目かで離陸成功。うまく風に乗れたようだ。安堵した瞬間、小さな体に大きな影が重なった。「縄張りを荒らされたと思ったみたい」そうだろう。成体の怪物が同じ発想で飛行機を襲っていた時代を私は見ている。

2015-09-30 18:59:28
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、740。離陸。 よその子供にやさしくない親なんかたくさんいる。野生の世界。

2015-09-30 18:59:34
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「名前。出身地。生年…」藍は私から奪った身分証を返そうとしない。内容を端末に入力しているようだ。「全部嘘なんでしょ?」彼女とその両親が既に承知の話を改めて訊かれた。無言で肯定した。「本物の思い出も全部捨てちゃって、寂しくないの?」私は流人のようなものだ。幾ら想っても帰れはしない。

2015-10-01 19:09:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、741。流人(るにん)。 ゼファールもそれなりにワケありの存在だが、基本的に誰も彼のことは気にしない。 隣がいろんな意味で強いから。

2015-10-01 19:09:32
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

怪物の襲来で焼け出された人々が教会に住み続けていた。礼拝の場が雑魚寝の場になってもう何年にもなるという。怒る信徒もいるらしいが、謂れを知らない限りはただの広間だ。「いいんじゃない?」藍が天井の装飾画を見上げながら言う。「わたしが神様ならみんな大歓迎して、冷たい人間に恥かかせるわ」

2015-10-02 19:30:56
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、742。礼拝。 作法にとらわれて本質を見失った怒りなんて。

2015-10-02 19:31:03
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

高所に住むはずの怪物が何もない公園の中心に降り立ち、体を丸めて眠り始めた。突然の出来事に狼狽する人々をよそに、藍は警備員の腕をすり抜け、現場へ飛び込んだ。振り向いた際の笑みは勝算があるとの主張なのか。私が警備員達の羽交い締めに抗う間に、藍は誰よりも近い位置から怪物を見上げていた。

2015-10-03 20:10:44
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、743。狼狽。 彼らは止める相手を間違えている。

2015-10-03 20:10:48
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

宿を出て車に戻る途中、藍が新聞を買うよう命じた。読みたい記事があるという。「分かったの。昨日石を投げられた理由」記事は力に目覚めた子供が起こした騒ぎを糾弾する内容だった。「子供が書いたみたいな話をみんな信じてる」小さな手が震えていた。恐怖ではない。魔女は今、怒りにわなないている。

2015-10-04 21:02:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、744。戦慄(わなな)く。 彼女以外の子供の話も、いつか書きます。

2015-10-04 21:02:34
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

巨大な雲が車の上に迫り、やがて激しい雨が私達の視界を覆った。私は道路を外れて近くの駐車場に車を入れた。勝手に進路を変えるなと怒る藍に、この天候の中で進む困難と危険を説明すると、彼女は急に笑顔を見せた。「そこまで言うなら」条件は窓の全開。寒さに震える私の隣で、藍は雲を凝視し始めた。

2015-10-05 19:51:21
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、745。困難。 強力な妨害も、自分のものにできるとしたら…?

2015-10-05 19:51:29
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

私が藍の親と仕事の話をする間、藍はテレビを見ていた。電話を切った時は冒険映画の放映中で、甦ったミイラが探検家を追い回していた。「昔の王様の祟りがあるって知ってるなら行かなきゃいいのに」物語の根本を否定する一言を耳にした。筋立ては知らないが、どうやら藍はミイラの方に共感したらしい。

2015-10-06 19:26:04
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