ローマ・ノン・フイト・ウナ・ディエ #3

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ローマ・ノン・フイト・ウナ・ディエ】#3

2015-10-24 21:01:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(あらすじ:決闘バトルフィールドにおいて厳かに行われるニンジャスレイヤーとスパルタカスの一対一のイクサは、古代ローマカラテの秘匿された形……獅子の構え、鷹の構え、馬の構えを経て、スパルタカスただ一人が修得した「一角獣の構え」に至る)

2015-10-24 21:04:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ニンジャスレイヤーはスパルタカスの構えを次々に打破し、より重大な構えを引き出す事に成功してきた。だがスパルタカスはほぼ無傷、逆にニンジャスレイヤーは馬の構えをとったスパルタカスから空中でコークスクリューブロー三連打を受けた。そしてソーマト・リコール記憶逆流現象が始まった)

2015-10-24 21:07:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」フジキドの眼前、禍々しい影は言葉を発したようだった。不明瞭なノイズがフジキドの聴覚に走った。狭い足場でフジキドはよろめいた。視界が明滅し、眼前には一角獣の構えを取るスパルタカスが戻ってくる。瞬時にワン・インチ距離に。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは防御姿勢を取る。 1

2015-10-24 21:10:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヌウッ」顔の前に翳した右腕はすぐさまスパルタカスの左腕に絡め取られる。そして質量が……スパルタカスのポン・パンチが顔面に衝突した。「グワーッ!」ニンジャスレイヤーはキリモミ回転しながら吹き飛んだ。「オイ!死んじまう」フィルギアが呻いた。「否、まだ残した」とマスターヴォーパル。2

2015-10-24 21:12:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

このキリモミ回転はポン・パンチの衝撃もさることながら、ニンジャスレイヤー自身の身体の捻りが生み出した反動であった。彼は身体を回転させることで、致命的なダメージを遠心力に乗せて周囲の空気に拡散させたのだ。「グワーッ!」ニンジャスレイヤーはタタミをバウンド。スパルタカスが詰める。3

2015-10-24 21:16:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

迅速な、なおかつ、ニンジャスレイヤーの起き上がりざまの奇襲攻撃の間合いからギリギリ外れた間合いだ。ニンジャスレイヤーのニューロンに更なるニンジャアドレナリンが流れ込み、心臓が鼓動を更に速め、目と鼻から鮮血が溢れ出した。時間が再び泥めいて鈍る。過去のイクサがフィードバックする。4

2015-10-24 21:19:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スパルタカス……スキピオ……ラクエリィ……バルバロス……ファランクス……マニプル……センチュリオン……ヴェニヴィディヴィシ……マルノウチ・スゴイタカイビル……トリイ・ゲート、ナラク、チャドー、フーリンカザン、そしてチャドー……マルノウチ……ギンカク……トリイ・ゲート……! 5

2015-10-24 21:21:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」赤黒い影が再び現れる。「スウーッ……ハアーッ……」ニンジャスレイヤーはチャドーの呼吸を深めた。チャドー、フーリンカザン、チャドー。己の身体を折りたたみ、己自身の中へねじ込むがごときイメージを育てる。周囲の世界が渦を巻き、彼の中へ、ニューロンの中へ吸い込まれる。6

2015-10-24 21:24:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

やがて彼は闇の中、独り黄金立方体に見下ろされている。「……」赤黒い影はニンジャスレイヤーの装束と化した。そしてその不浄の熱と光で、瞬時に闇を払う。彼は己を竹林の中に見出す。ドラゴン・ドージョー?アワビ・ニンジャの鎮守の森?否……どことなく似ているが、覚えのないバンブーであった。7

2015-10-24 21:29:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

夜空を見上げれば、バンブーの葉を透かして、やはり黄金の立方体は月めいて存在していた。ニンジャスレイヤーは落ち葉を踏んで歩き出した。「記憶……ではない。私の記憶ではない」彼は呟いた。「オヌシの記憶か。ナラク」(((……否……)))遠く近い声が微かに返った。(((ここは……))) 8

2015-10-24 21:32:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

0と1の風が吹き、バンブーの枝葉を揺らす。サツバツとした無音の世界である。(((……進む以外に……あるまい……)))ナラクの声。ニンジャスレイヤーは獣の足跡じみた小径に分け入った。「ここは何処だ。私の過去ではない……」(((全ての問いに儂が答えをくれてやると思うでないわ))) 9

2015-10-24 21:36:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

張り出している枝を押し退け、進む。ソーマト・リコール現象は、己の過去の記憶を呼び覚ますニューロンの瞬間的な作用だ。それは過去の体験に生存の手がかりを求める為に。あるいは、ただ死を前に己の行いを悔い、省みる為に……。だがこの場所が記憶の地でなく、ナラクも知らぬとなれば。 10

2015-10-24 21:41:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ならばここはサンズ・リバーの向こう岸か?己の気づかぬうちにスパルタカスはニンジャスレイヤーを爆発四散せしめ……ジゴクへ送ったという事なのか。(((何をバカな。呆れ果てるぞフジキド!だがどのみちこのまま甘んじておれば、敵の拳はオヌシの額を鼓動一つの後には打ち抜くであろう)))11

2015-10-24 21:46:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「黙れナラク。わかりきった事だ」彼はこの不可解な地をニューロン視界に見ながら、同時に、ほぼ無限に引き延ばされて静止した物理の世界をも微かに感じている。スパルタカスが追撃を試みようとしている世界を。どちらがジゴクか。ニンジャスレイヤーは藪をかきわけた。林の中に古びた庵が現れた。12

2015-10-24 21:51:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

0と1の風は幾筋もバンブーのあわいをすり抜け、バラバラの方角へ走り抜ける他者の背中が垣間見えるように思う。それらに不用意に注意を払えば、なにか取り返しのつかぬ事態を呼びそうだった。彼は目の前の庵に集中し、足を速めた。ひび割れた石段を上り、朽ちかけた扉に手をかけ、押し開いた。 13

2015-10-24 21:55:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゴゴゴウン……扉が音を立て、0と1の埃が天上からパラパラと落ちて来た。不可解な頭部を備えたブッダデーモン像がニンジャスレイヤーを見下ろした。「これは」中は外から想像したより、よほど広い。もとより尋常の世界ではない。ニンジャの気配はない……。(((油断するなフジキド))) 14

2015-10-24 22:00:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはブッダデーモン像の膝元へ進んだ。そこに倒れ込むようにして枯死した者の死体があった。死体は黄ばんだ紙片を掴んでいる。ニンジャスレイヤーは注意深くそれを取った。紙には捻じれた筆跡で文字が書かれている。「奥義を求め、…を……だが、」紙は0と1の屑となり、散った。15

2015-10-24 22:05:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」死体は奥のフスマ戸を指さしていた。フスマの横にはケモビールのカレンダーが貼られている。神棚にはフクスケ。壁のヒビは0と1の風を運んでくる。ナムサン。ここで立ち止まっていたところで、現実の死の運命を避ける事にはならぬ。彼は真っ直ぐフスマ戸に向かい、引き開けた。ターン!16

2015-10-24 22:10:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「バカな……行き止まりとは……!」ニンジャスレイヤーが足を踏み入れたのは、タタミ敷きの四角い小部屋であった。それはシュギ・ジキと呼ばれるパターンで、十二枚のタタミから構成されている。四方は壁であり、それぞれにはオイラン、茄子、トリイ、リキシャーの見事な墨絵が描かれていた。17

2015-10-24 22:13:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

もはや先へ進むためのフスマは見当たらない。では、あの死体と紙片は何を意図していたのか。(((フジキド。警戒を怠るな)))この謎を解くべく、ニンジャスレイヤーは右手にスリケンを握り、物音ひとつ立てぬ精緻な足運びで、部屋の中心部へと進んでいった。額の汗を右手の甲で拭った。18

2015-10-24 22:16:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはついに部屋の中央へと達する。……(((その位置だ!フジキド!)))ナラクの声が響いた。ニンジャスレイヤーはぴくりと眉を動かした。そして足下めがけ、カワラ割りの拳を振り下ろしたのである!「イヤーッ!」KRAAAAAAH!タタミが爆ぜ、彼らは真下へ落下した! 19

2015-10-24 22:19:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シュコン!シュコン!シュコン!シュコン!狭い井戸めいた竪穴を垂直落下するニンジャスレイヤーを、壁の四方八方から飛び出すバンブー槍トラップが襲った。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは木人拳めいた手捌きでこれを回避!20

2015-10-24 22:22:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」やがてニンジャスレイヤーは穴の底に回転着地した。闇の中、彼は高速で接近する轟音と光に反応する。プアアアーン!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは側転し、地下鉄の電車の衝突を危うく回避した。プアアアーン!「イヤーッ!」逆側のレールからも電車!回避!21

2015-10-24 22:26:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「これは……何だ?」(((攻撃に備えよフジキド)))ゲン・ジツの類いか?否、ここは彼自身のローカルコトダマ空間……彼自身のニューロンの狭間の筈だ。彼はレールの方向を見やった。遠くに光が見える。彼はレール沿いに走り出す。やがて、「サツキ」と書かれた地下鉄駅ホームに辿り着いた。22

2015-10-24 22:30:41