空想の街・ハンツピィの宴2015　2日目

こみや@空想の街 @Ne2_co

@nowhere_7 目前の娘の瞳が見開かれている。この薄闇の中でも、ヒキフネの眼はしっかりとその表情をとらえていた。帽子を脱いで、首を傾げる。片目に掛かった髪を払うように面を上げると、彼女の身体がびくりと跳ねた。 #空想の街 #赤風車 #曳舟荘 「なるほど、大きなおめめだ」

不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

@Ne2_co 目の前に現れたのは、肩幅のしっかりした、長い黒髪で洋装の者だった。 見られた。黒い髪の、…誰だ、まるで相手は柘榴でも自分自身でもあるようで、 ――瞠目は閉じ回転する。そのまま背から地面へと倒れこんだが徒華本人は意識を飛ばしていた。 #空想の街 #赤風車 #曳舟荘

こみや@空想の街 @Ne2_co

@nowhere_7 急激に動くものに視線を奪われてしまうのは、生まれ持ってきて結局捨てきれない、さが、というもののせいだっただろう。ぐらりと姿勢を崩した娘に手を伸ばす。「――っ、と、」片腕にその肩口を受け止める。 #空想の街 #赤風車 #曳舟荘 「……ちょいと、しっかりおしよ」

不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

@Ne2_co 気絶していたのは数秒ほどだ。不安定に、併し力を込めて肩を支え込まれ、徒華のぼやけた視界で宵闇より黒く流れる川と象牙の服が濁る。 柘榴さん、見ないでくれ――そんなことを口走りそうになった徒華は跳ね起きた。→ #空想の街 #赤風車 #曳舟荘

不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

@Ne2_co ふらつく足を何とか地にとどめ相手を改めて見る。初対面の、恐らくは男性だろう、後ろめたさから視線を下げ徒華は乾いた口を開いた。「――すみません、その、」続きは出ない。「私は旅の者で、失礼を、」 ――やがて、忘れてください、と頼み込む。 #空想の街 #赤風車 #曳舟荘

こみや@空想の街 @Ne2_co

@nowhere_7 ――忘れてください、と俯きがちに言ったとき、乱れた髪に隠れてその瞳は見えなかった。それをなぜだか惜しい、と思った。背中やら羽やらについた落ち葉を払ってやりつつ、何か気付けになるものでもいるかい、と問うてみる。 #空想の街 #赤風車 #曳舟荘

不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

@Ne2_co 思ったよりも優しく返された言葉に、徒華は睫毛を揺らす。背の翼も揺れたがそれは気にしないふりをした。身を整えられ、大人しくしていたが、謝らねばなるまいとぼんやり思う。「その、お心遣い、感謝いたします。けれど私は酒に弱くて」 #空想の街 #赤風車 #曳舟荘

こみや@空想の街 @Ne2_co

@nowhere_7 声が堅い。けれどしっかりとした言葉遣いが好もしくて、ヒキフネは小さく笑った。「――そうかい」そしてそのまま無遠慮に、彼女の白い片頬にかかるほつれた黒髪を掻きあげてしまう。途端、先程のそれによく似た驚きの視線がこちらを射竦めた。 #空想の街 #赤風車 #曳舟荘

不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

@Ne2_co 「な」それに続ける間もなく小さい顔が夜の森にむき出しになった。常も顔色はよくはないが、秋の外気にふれ、徒華の頬は透き通っている。 目を逸らすこともできず暫し見合っていたが、徒華はすっと静まった。「――買いますか。今の私は夜鷹ですよ」 #空想の街 #赤風車 #曳舟荘

木船田ヒロマル @hiromaru712

因縁の敵、朱雀の罠に敢えて乗り込む七篠。 #空想の街 に最悪の敵が再臨するーー ネームハンター6 〜 The amnesia capriccio 〜 25日夜までを更新しました ncode.syosetu.com/n1233cy/ ＊小説投稿サイト「小説を読もう！」へのリンクです

日魚ときお @tokyosanfish

「眠っていますか」 「そのようですね」 「毛布一枚でいいのかしら。寒さは感じますの？」 「わかりません。彼女の声を、私はまだ聞いたことがありませんから」 「やれやれ、本当にお姫様のようだ」 「親指姫ですか」 「ノッポの君と比べたらな」 #空想の街 #喫茶馬頭琴

こみや@空想の街 @Ne2_co

@nowhere_7 おそらく自分は今、ひどく剣呑な顔をしているだろう、と思う。それに輪をかけて物騒な彼女の物言いに、あえて見当違いな言葉で答える。「――梳るのはお嫌かい？たいそう綺麗な髪なのに」でも、と言って冷めたように見えるその瞳を覗き込む。→ #空想の街 #赤風車 #曳舟荘

こみや@空想の街 @Ne2_co

@nowhere_7 「でもあたしはこの眼の方が好きだよ」そうしておもむろに手を離す。「ちゃんとその眼をひらいてお帰りな。夜道に惑わされないようにサ。それに――」くす、と笑声を漏らす。「ねこが夜鷹を買うなんざ、道理にあわないはなしだろう？」 #空想の街 #赤風車 #曳舟荘

不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

@Ne2_co やけに目を見てくる相手だ、と思えば妙な言葉をかけられ、徒華は表情を消したまま瞬きをする。髪よりも目を褒められることなどなかった。少し考えたあとで、最後の発言を一回呑み込み、もう一度眉を寄せて相手を見遣る。→ #空想の街 #赤風車 #曳舟荘

不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

@Ne2_co 実のせいか、確かに猫の尾があった。――ひっかかりを感じたが徒華はそれに蓋をしてしまう。失礼になる。 奇妙な者の相手なら慣れっこだ、徒華は毅然と放つ。「重ね重ね失礼を。そちらこそ、帰る場所をお忘れになられませんよう」そして背を向けた。 #空想の街 #赤風車 #曳舟荘

こみや@空想の街 @Ne2_co

@nowhere_7 きっぱりと放たれた声が快かった。あんなに震えていた細い背に、今は力が入っているのが分かる。あの様子なら大丈夫だろう。少なくとも、今夜は。 「それじゃお休み。――いい夢を」 ヒキフネは遠のいていく背中に小さく手を振った。 #空想の街 #赤風車 #曳舟荘

日下 昊@Creemaショップ開店 @sola_Dante

行き交う人も殆どいないこの時間に、瑛は星草の補充と他の薬を作り始めた。主に胃腸系の具合を良くする薬だ。ハンツピィ・ナイトで飲食した人の中には食べ過ぎ・飲み過ぎの胃腸薬を求めてくる数も少なくない。生薬を薬研を回しゴリゴリと砕いて行く。#空想の街 #花心亭

日下 昊@Creemaショップ開店 @sola_Dante

黒板消しでスタンド黒板の昨日のお品書きを消し、 ミルフィーユ フラン ガトーショコラ シブースト マカロン と書換えた。定番の三色スミレの花押しクッキーは毎日焼かれている。#空想の街 #花心亭

日魚ときお @tokyosanfish

自分で描いといてなんだが、でかい。 #空想の街 #喫茶馬頭琴 pic.twitter.com/mgknyVHjR8

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不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

どこかの爵位持ちの男性のようだった、と夜道を進みながら徒華は思い返す。 考えてみれば随分と、自分自身もおかしな真似をしたものだ。相手が何だかんだで紳士であったからよいものの、今頃どうなっていたのやら分からない。 #赤風車 #空想の街

不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

――宴には行けなかったが、街に来た意味はあった。弟のことはもう心配しなくていいのだ、孔雀荘の少年に教わった祭りへ思いを馳せる。姉にも伝えればいいだろう、そう考えて、朝に姉から言われたことをむざむざと呼び起してしまった。 #赤風車 #空想の街

不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

言いつけは守る。今、故郷の町は確かにおかしい。ひとりで遊び続けるわけにはいかない、汽車には早く乗るつもりだ。そこは分かっているのだ、併し――、 「結婚などするものか」それも癸となど無理だ。確かに仲は悪くはないが、姉たちは、癸と徒華の間にあったことを知らない。 #赤風車 #空想の街

不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

言うべきことは全て言い切った、とでもいうようにそっけなく、上の空のような対応をする櫻子のこと、そして、この体に変化をもたらした実と似たものの名を持つ女性……、 柘榴の面影が消えない。先ほどの男性の前でもそうだった、結局徒華の思考は柘榴の許へ戻るのだ。 #赤風車 #空想の街

不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

もう手の届かないひとを想い、徒華は星空を仰いだ。 姉も義兄もできうることを尽くしている。徒華の縁談の件は別としても何かに立ち向かっている、恐らくは千草もそうだったろう、これで自分がこんなざまでいられるわけがない。 ――一文字もこの街でうまくやっているのだ。 #赤風車 #空想の街

不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

一文字には二度と会うつもりはないが、千草の風車を売らないでいてくれたこと、そして彼がここで生きていることを垣間見れただけでもよかった。憎んでいるわけでも許したわけでもなかったのだが、一年前、この背を押したのは確かに一文字の言葉だった。 #赤風車 #空想の街