平成27年 司法 論文 刑法 答案例

出題趣旨等も踏まえて
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羽廣政男 @m_hahiro

(ア) 客観的要件としての窃盗罪の「窃取」について,ベンチに置かれた甲のかばんを抱え,待合室を出た丙の行為は,占有移転による占有取得行為なので,「窃取」に当たる。

2015-10-26 08:28:51
羽廣政男 @m_hahiro

甲のかばんにつき,占有(事実上の支配)は,甲にあった。以下,窃盗罪の成否を検討する。 イ 窃盗罪の検討 (挿入) 甲所有のかばんは,時価約2万円相当なので,「財物」に当たる。

2015-10-26 08:28:40
羽廣政男 @m_hahiro

甲のかばんから財布を取り出して手に持ち,新薬の書類のみが入った甲のかばんを同ベンチに置いたまま待合室を出て,自動券売機に向かっているので,支配意思という主観的要件(占有の意思)も失われていないから,

2015-10-26 08:28:13
羽廣政男 @m_hahiro

の,自動券売機と待合室の出入口とは直線距離で20メートル離れているにすぎないので,財物に対する支配という客観的要件(占有の事実)があり,また,甲は,某年12月15日午前11時15分,自動券売機で切符を買うため,

2015-10-26 08:27:59
羽廣政男 @m_hahiro

主観的要件(占有の意思)を総合して,社会通念に従って判断されるところ,待合室は四方がガラス張りだが,自動券売機に向かって立つと待合室は見えないもの

2015-10-26 08:27:46
羽廣政男 @m_hahiro

そこで,ベンチに置かれた甲のかばんの占有は,甲の占有を離れた物となったか否かが問題となる。 (イ) 刑法上の占有とは,事実上の支配(横領罪の占有は法律上の支配をも含む)を意味し,占有の存否(事実上の支配の存否)は,財物に対する支配という客観的要件(占有の事実)と支配意思という

2015-10-26 08:27:29
羽廣政男 @m_hahiro

(ア) 待合室は,出入口が1か所であるものの,B駅の始発時刻から終電時刻までの間は開放されて誰でも利用できるので,待合室内に物を置いた者がその場を離れた場合,その物の占有は,B駅駅長の占有に帰属するに至るのではなく,占有離脱物になると考える。

2015-10-26 08:27:15
羽廣政男 @m_hahiro

第2 丙の罪責 1 甲に対して (1) ベンチに置かれた甲のかばんを抱え,待合室を出た行為について ア 甲のかばんの占有の帰属

2015-10-26 08:27:02
羽廣政男 @m_hahiro

(3) 上記ア及び上記イは,刑法第45条(併合罪)前段「確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。」により,併合罪となる。

2015-10-26 08:26:47
羽廣政男 @m_hahiro

その最も重い刑により処断する。」により,観念的競合となる。

2015-10-26 08:26:27
羽廣政男 @m_hahiro

(2) 甲は,Cに対して,①かばんを取り上げた行為につき窃盗罪,②加療1週間を要する傷害を負わせた行為につき傷害罪が成立し,両罪は,刑法第54条(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)第1項前段「一個の行為が二個以上の罪名に触れ、・・・るときは、

2015-10-26 08:26:23
羽廣政男 @m_hahiro

因果関係を肯定できるから,乙の傷害結果は甲に帰責される。 3 罪数 (1) 甲は,A株式会社に対して,新薬の書類(A3サイズのもの)10枚を取り出した行為につき窃盗罪が成立する。

2015-10-26 08:26:09
羽廣政男 @m_hahiro

Cが,引っ張られた弾みで転倒するなどして傷害を負う危険性を有するものであって,したがって,Cが,甲からかばんを引っ張られた弾みで通路に手を付き,手の平を擦りむいて,加療1週間を要する傷害を負ったという結果は,甲の行為の危険性が結果へと現実化したと認めることができるので,

2015-10-26 08:25:58
羽廣政男 @m_hahiro

これを本件についてみるに,Cが持っていたC所有のかばんの持ち手を手でつかんで引っ張ってそのかばんを取り上げるという甲の行為は,「甲(53歳,男性,身長170センチメートル,体重75キログラム)」「C(35歳,男 性,身長175センチメートル,体重65キログラム)」を踏まえると,

2015-10-26 08:25:32
羽廣政男 @m_hahiro

言い換えれば,この問題は,主観的要件の問題ではなく,客観的要件である因果関係の問題であり,結局,行為の危険性が結果へと現実化したか否か(危険の現実化)という問題であると考える。

2015-10-26 08:25:02
羽廣政男 @m_hahiro

ウ 結果的加重犯の法的構造について,責任主義の観点から,故意犯プラス過失犯という立場があるものの,基本となる犯罪行為から当然予想されるその射程範囲内の波及効果が生じたものである限りは,重い結果を生じたことにつき行為者に責任を帰せしめることは当然であると考える。

2015-10-26 08:24:50
羽廣政男 @m_hahiro

暴行の故意(人に対して有形力(物理力)を行使する認識認容)があ れば足りるところ,本件の場合,Cが所持していたかばんの持ち手を手でつかんで引っ張っているので,これを満たしている。

2015-10-26 08:24:39
羽廣政男 @m_hahiro

イ 傷害罪の主観的要件である故意につき,甲には,乙に傷害を負わせる認識はないものの,刑法第208条(暴行)は,「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」と規定しているので、反対解釈をすると,暴行罪の結果的加重犯の面もあるので,

2015-10-26 08:24:14
羽廣政男 @m_hahiro

これを満たす。②結果につき,傷害とは,人の生理的機能を害することであるところ,Cは,甲からかばんを引っ張られた弾みで通路に手を付き,手の平を擦りむいて,加療1週間を要する傷害を負ったので,これを満たす。③因果関係は,結果的加重犯の法的構造を検討する際に,後述する。

2015-10-26 08:24:01
羽廣政男 @m_hahiro

(3)  加療1週間を要する傷害を負わせた行為について ア 傷害罪の客観的要件である①行為,②結果,③因果関係は満たしている。①行為につき,暴行(人に対する有形力(物理力)の行使)で足りるところ,甲はCが所持しているかばんの持ち手を手でつかんで引っ張っているので,

2015-10-26 08:23:47
羽廣政男 @m_hahiro

自救行為の客観的要件(急迫不正の侵害の終了後において,公的機関の保護を求める余裕がなく,即時になされなければ権利の実現が困難な場合)の充足を欠くので,違法性阻却事由の錯誤に基づく責任故意阻却を理由とする責任阻却事由はない。

2015-10-26 08:23:29
羽廣政男 @m_hahiro

そうだとしても,誤想自救行為の可能性は問題となるが,ここでも,甲が向かっているB駅は,通勤・通学客を中心に多数の乗客が利用する駅なので,駅職員に立会人となってもらうことが容易なので,

2015-10-26 08:23:25
羽廣政男 @m_hahiro

確かに,窃盗の既遂時期と侵害の急迫性の終了時期とは必ずしも一致しないが,窃盗の既遂後においても,侵害の急迫性が失われない場合は,たとえば,被害者が逃走する犯人を追いかけている場合であるが,本問はそのような事案ではない。

2015-10-26 08:23:15
羽廣政男 @m_hahiro

Cが甲のかばんを盗んだものと思い込んだところ,これは,誤想防衛を基礎づける事情なので,責任故意を阻却するようにもみえる。しかし,既に,急迫性は失われているので,誤想防衛の前提(正当防衛の客観的要件の充足)を欠く。

2015-10-26 08:23:01
羽廣政男 @m_hahiro

(挿入) なお,甲は,切符の購入を済ませて待合室に戻る途中で,甲のかばんと同じブランド,色,大きさのかばんを持って改札口を通過するCを見たことから,甲のかばんのことが心配になって待合室のベンチを見たところ,甲のかばんが無くなっていたので,

2015-10-26 08:22:49