稲川淳二の『つぶやき怪談』(2015.10.26)

稲川淳二 @Junji_Inagawa

実に立派な人形で、中には凄い価値のある人形もあるそうなんです。 見るからに綺麗なんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

逆に言うと、綺麗すぎて怖い。 一人で見ているとね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

これ、皆が預かっている物なんです。 色々、込み入った事情があるんですよね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

この神社では、お参りに来る方がいなくなると、 『もう、今日は時間だろうな』 って、その先代さんが、板戸閉めちゃうんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ぜ～んぶ。 そうして、鍵掛けちゃうんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

でね、たまたま何かの用があって夜中、 人形部屋の前を通ったって言うんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「稲川さん、前を通りましたらね、 聞こえてくるんですよ、妙な音が。 板戸の向こうから。はてな？　と思いましてね…」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

って言うんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

鍵は自分が持ってるんです。 家の人間は誰も来ていない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

『妙だな、何だろう？』 と思ったので、 先代さんは板戸に耳を付けて様子をうかがったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「稲川さん、どうやらねえ、 人形っていうのは話をするらしいんですよ。 その瞬間、私、ゾーッ、としましてね」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

って言うんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「何かを言ってる事は分かるんだけど、 一体何を話してるんだろうと思ったら、 稲川さん、大体判ったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

どうやら人間っていうのは、 人形にね、自分の生まれや、自分の運命、 そういったものを話してるようですよ…」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

多分、そうなのかもしれないですよね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

この神社っていうのがまた、 その人形以外に、婦人病だとかにも御利益があるんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

安産の方の神様でもある訳。 だから、女性が沢山集まって来るんですよ、そこに。 お参りしに来る訳です。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その時にその女性達は、 自分の秘密だとか、人に言えない事、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

自分の悩んでる事等の相談事や、 その人形にまつわる話をしていく、 って聞きました。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ある時、結婚してまだ間もない若い奥さんが、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「あのー、人形の、怖い夢みたんです。 なんかとっても気になる事があるんですけど…」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

って、言ったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それはこの奥さんが、 夜中、えらくうなされた時です。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「う～ん、う～ん、う～ん、う～ん」 隣に寝ていたダンナさんが、 ふっ、と目を開いたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

見ると、奥さんは、 ”フウゥゥゥ～” と汗かいて、うなされている訳ですから、