黄昏町(九板)二十日目

竜との再会。 初日/一日目→http://togetter.com/li/883761 前日/十九日目→http://togetter.com/li/892824 翌日/二十一日目→http://togetter.com/li/893033
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@hiiragi_r_t_d

【二十日目】 【魂6/力4/探索2】 【喪失】名前(後ろ半分) 【異形】三ツ目(力+1、探索+2)、牙(力+2)、鱗(水耐性、力+1) #hollytk

2015-10-28 21:57:33
@hiiragi_r_t_d

わたしが目を覚ますと、目の前に純白の鱗に覆われた腕。 「うわっ……って、わたしの腕でした」 のけぞった勢いのまま、打ちっ放しのコンクリートの上に寝転がる。夕陽を浴びた地面は僅かに暖かい。 夕焼け空に、左腕をかざす。夕陽が、白い鱗を紅く染めた。 01 #hollytk

2015-10-28 21:57:45
@hiiragi_r_t_d

「アッ、ハハ」 笑いが漏れる。綺麗な鱗だ、とわたしは思った。 どうして鱗が生えたのだろう、とか。 異形以外に殺されても生き返るんだな、とか。そんな事はどうでも良かった。 「もっと。もっとです」 他にも、この町には色々な異形があるのだろう。 02 #hollytk

2015-10-28 21:59:11
@hiiragi_r_t_d

美しいもの。醜いもの。恐ろしいもの。強いもの。それらをもっと見なければならない。そしてわたしは、夢に見たバケモノになるのだ。強くて、美しくて、自由なバケモノに。 「……あれ?」 わたしは、どこでそれを読んだのでしたっけ? 03 #hollytk

2015-10-28 22:01:17
@hiiragi_r_t_d

強くて、美しくて、自由なバケモノ。その物語が書かれた、一冊の古びたノート。 「……?」 わたしは首を傾げる。頭の中に浮かんだヴィジョン。覚えのない記憶。 「……まあ、思い出すこともあるでしょう」 思い出してから考えればいい。そう割り切って、立ち上がる。 04 #hollytk

2015-10-28 22:03:23
@hiiragi_r_t_d

「とりあえず、ここから出ましょうか」 運がいい事に、校門は既に見える距離。あそこから出れば、町に戻れるはずだ。 わたしは雑草の生い茂る荒れ放題の校庭を横切り、校門を目指す。 また、どこかで地鳴りがした。 05 #hollytk

2015-10-28 22:05:15
@hiiragi_r_t_d

古びた校門は、堅く閉ざされている。 「……開かない」 わたしが力一杯引いても、全体重をかけて押しても、錆び付いた車輪はギシギシと音を立てるだけで欠片も動こうとしなかった。 「乗り越えるのも難しそうですね……」 06 #hollytk

2015-10-28 22:07:19
@hiiragi_r_t_d

校門の脇のフェンスに穴が無いか探してみよう。 そう思って右を向いたわたしの背後から、雷鳴のような唸り声が聞こえた。 「なっ……!」 後ろを振り向こうとしたわたしは、すくい上げるような衝撃に見舞われた。細い体が、木の葉のように宙を舞う。 07 #hollytk

2015-10-28 22:09:19
@hiiragi_r_t_d

上へ向かう猛烈な加速度が、内蔵と脳を激しく揺らす。 放物線の頂点で下を向いたわたしの目の前に、迫る鈍色の長大な尾。 咄嗟に胸の前で交差させた腕の中心点を、重い一撃が捉える。 「がっ、は」 鱗が砕け、腕の骨が小枝のようにぽっきりと折れ、胸骨に鋭い痛みが走る。 08 #hollytk

2015-10-28 22:11:12
@hiiragi_r_t_d

肺から空気が押し出され、わたしは再び天高く打ち上げられた。 高く、高く。下方に、尾を構えてわたしを見上げる竜が見える。 空中ではどうすることもできず、わたしはなすすべなく竜の待つ校庭へと再び落下する。 竜の尾がしなり、今度は横腹に痛烈な一撃が入る。 09 #hollytk

2015-10-28 22:13:10
@hiiragi_r_t_d

わたしは横向きに吹き飛ばされる。端に設置された鉄柵をぶち破り、校舎の屋上に叩き込まれた。床で数度バウンドした後、貯水タンクに背中から打ち付けられてズルズルと崩れ落ちる。 「痛っ……たいですね……」 両腕は微塵も動かない。足は痙攣していて立てそうもない。 10 #hollytk

2015-10-28 22:15:06
@hiiragi_r_t_d

竜が屋上に降り立つ。ごう、と一陣の風が吹き、屋上に溜まっていた埃と落ち葉を吹き飛ばした。 貯水タンクを背に座り込んだわたしに、竜の大きな頭が迫る。 「ああ、あの時の竜なんですね、あなた」 最初にわたしを、文字通りズタボロにして殺した、懐かしい竜。 11 #hollytk

2015-10-28 22:17:16
@hiiragi_r_t_d

「あなたに殺されても、異形が貰えないのは何故ですか?」 わたしの問いかけに竜は答えない。枝分かれした角の間で、雷光が瞬く。 「……言ってもしょうがない、ですか。言葉は分かるんですかね?」 竜が首を傾げる。通じないようだ。 12 #hollytk

2015-10-28 22:19:19
@hiiragi_r_t_d

「まあいいです。言葉が通じないならそれで」 竜が舌を伸ばす。どうやらコイツ、食べる前に舐める習性があるらしい。気持ちの悪い奴。 「わたしが強くなったという証拠を、見せてあげますよ」 わたしは大きく口を開けて、竜の舌を喰い千切った。 13 #hollytk

2015-10-28 22:21:28
@hiiragi_r_t_d

雷が連続で落ちたような大音声を放ちながら、竜が仰け反る。 わたしは口の中で跳ね回るピンク色の肉塊を吐き出し、宙に浮かぶ竜へ向けて吐き捨てた。 「ざまあみろ、です」 竜が怒る。角の間を走る雷光がその量を増し、唸り声が地鳴りになる。 14 #hollytk

2015-10-28 22:24:03
@hiiragi_r_t_d

竜の尾が、視界から掻き消える。 気付いた時には、わたしは宙を舞っていた。数十メートル上から、血を吹き上げて倒れる自分の体が見える。……自分の体? わたしは体を動かそうと試みる。動かなかった。 「アッ、ハ」 わたしは笑った。それしかできなかったから。 15 #hollytk

2015-10-28 22:25:53
@hiiragi_r_t_d

首だけになったわたしは、竜に食べられる自分の体を見ながら地面に叩きつけられた。 すぐに何も見えなくなったから分からないけれど、きっと西瓜みたいに潰れて、中身をぶちまけて死んだのだと思う。 16 #hollytk

2015-10-28 22:27:08
@hiiragi_r_t_d

あの竜も、いつか殺してやる。 17 #hollytk

2015-10-28 22:29:18
@hiiragi_r_t_d

──────── 【二十日目】 【死亡】 【魂-2】 【魂4/力4/探索2】 【喪失】名前(後ろ半分) 【異形】三ツ目(力+1、探索+2)、牙(力+2)、鱗(水耐性、力+1) 18 #hollytk

2015-10-28 22:31:08
@hiiragi_r_t_d

[学校]校門は堅く閉ざされている。背後から迫る竜が、君ごと鉄柵を突き破る。《力6以上で竜に勝利【異形『竜尾(力+5)』を入手し[町/説明文参照]へ移動(診断は翌日から)】、力5以下は死亡【魂-2】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541542 #hollytk

2015-10-28 22:31:46