ニンジャカタナ 『Location No.93』 #9

@Fw009による小説ニンジャカタナ 『Location No.93』の#9まとめです。 連載中アカウント @NJkatana 続きを読む
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ニンジャカタナ! @NJkatana

◆親愛なる読者の皆さんへ◆ いつもニンジャカタナをご覧になって頂きありがとうございます。念願の感想もちらほら頂戴しており、途轍もないモチベーションになっております。本当にありがとうございます。

2015-10-29 14:50:57
ニンジャカタナ! @NJkatana

現在連載中のLocation No.93はあと三つか四つほどのセクションで終了予定です。予想以上に文章量が多くなってしまったにもかかわわらず読んで頂き重ねて感謝感謝です。どうか今後もお気軽にお立ち寄りいただければ幸いです。

2015-10-29 14:52:35
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ニンジャカタナ ―Location No.93―◆ #9

2015-10-28 14:53:37
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辺り一帯を濃淡のグラデーションで塗り潰すオーロラの極光。その光を切り裂くように力強い緑光の一閃が奔る。人智を超えたエネルギー同士の激突。双方の力の源泉たる輝ける粒子が凄まじい勢いで放射されていく。その圧倒的な放射光に弾かれるように、一つの人影が弾丸のように弾き飛ばされた。1

2015-10-28 14:53:58
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その人影は一瞬で後方の巨大な石柱に叩きつけられる。一つめの石柱ではその勢いは止まりきらずに貫通粉砕、そのまま二つめ、三つめの石柱を貫通したところで粉々になった粉塵を纏わせながらゴムボールのようにバウンド、停止する。「ゲホッ――ゴホッ――!」激しく咳き込むその人影は――カタナ。2

2015-10-28 15:33:26
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カタナは両手両膝を地面について倒れそうになる体を支えると、先程まで自分が握っていたブレードに視線を向ける。カタナのブレードは持ち手部分から僅かなパーツを残して完全に削り取られ、消し飛んでいた。ブレードの破損部分から緑光がゆらゆらと立ち上り、弱々しくカタナの周囲に浮遊する。3

2015-10-28 15:33:40
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「少々、取り乱しました」極光も緑光も消え、再び闇に包まれた塔の最上層に、メダリオンの声が響く。「なにしろ、初めての体験だったもので。まさかこの私が、貴方達と同じ座標に引きずり降ろされるとは」メダリオンの声が朗々と、淡々と、暗闇の中に響き渡る。先程見せた動揺の影も最早無い。4

2015-10-28 15:33:53
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「……」カタナは冷静に自分に残されたミドリムシの数を確認する。先程の一撃はカタナに残されたミドリムシの総力だった。背後からの斬撃を弾かれた際、メダリオンを覆う極光が相当な防護力を持つことを確かめたカタナは、あの一閃に残された全てのミドリムシを叩きつけた。だが―― 5

2015-10-28 15:34:06
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無限とも思えるエネルギーを持つメダリオンの極光との正面からの激突は、研ぎ澄まされたカタナの緑光ですら相当に力を減衰された。だがそれでもカタナは吹き飛ばされる寸前、自身の光刃が確かな殺傷力を持ったままメダリオンを捉えようとするのを視認していた。緑光はメダリオンに届いていたはずだ。6

2015-10-28 15:34:29
ニンジャカタナ! @NJkatana

((ヤバイな――みんなどっかいっちまった))カタナは薄っすらと光る掌の上のミドリムシを霞む視界で見つめる。その光が今のカタナの力の全てだった。さらに、一切の防御すら捨てて放った渾身の一撃、そしてその後の予想外のメダリオンの反撃は、カタナに無視出来ぬ甚大なダメージを与えていた。7

2015-10-28 15:34:46
ニンジャカタナ! @NJkatana

「どうやら――そこまでのようですね」暗闇の中、メダリオンの声と靴音が近づく。カタナは無様に震える自身の膝に手を当てて立ち上がろうとする。粉塵がもうもうと揺らぎ、衝撃でひび割れた地面に血が滴る。「もし、艦隊との交戦でその光を消耗していなければ、もう少し長く戦えたのでしょうが――」8

2015-10-28 15:34:54
ニンジャカタナ! @NJkatana

カタナは揺らぐ視界の向こう、暗闇の先――メダリオンに対して、その刀身の殆ど全てを失ったブレードを構える。ブレードを持つ手が震え、呼吸が乱れる。既にカタナの緑光は完全に消えている。「艦隊に戻った際には、キアラン将軍に御礼を言わなくてはなりませんね」メダリオンの声。姿は見えない。9

2015-10-28 15:42:16
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「――!」カタナは震える足に残った力を漲らせ跳躍――先程までカタナが居た場所が音もなく歪に消し飛ぶ。「おや?良くその状態で反応できましたね。例の光は見えませんが、薄く拡大して気配を探っている――といったところですか」カタナは受け身もろくに取れずに地面に手をついて転がり起きる。10

2015-10-28 15:48:29
ニンジャカタナ! @NJkatana

メダリオンの姿は見えない。辺りは闇だ。「一つ、聞かせてくれ」カタナが荒い息をつきながら口を開く。メダリオンの返答はない。「なんでこのコロニーの子供を殺そうとするんだ?その子は、あんたの親父さんにとっても子供みたいなものなんだろ?あんたにとっても兄妹になるんじゃねえのか?」11

2015-10-28 15:55:57
ニンジャカタナ! @NJkatana

カタナは再び闇の中を跳躍する。背にしていた巨大な石柱ごと地面が削り取られる。その破壊は欠片すら残さない完全な消滅だ。「……一つだけ、お答えしましょう」闇の中に響くメダリオンの声は近い。しかしその姿を視認することはできなかった。カタナのミドリムシですらその座標を特定できない。12

2015-10-28 16:00:38
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「七人の教皇のうち、盟父の実子は私だけです。私以外は全て、今回の勅命と同様にして他のコロニーから見出された者達です」闇の中に響くメダリオンの声からは感情は読み取ることはできない。「盟父の愛――虐げられし、偉大なる技術の産物を拾い上げる――」闇が鳴動する。カタナは再度跳躍―― 13

2015-10-28 16:11:40
ニンジャカタナ! @NJkatana

カタナは全身を襲う激痛に堪え、その激痛によって途切れそうになる意識を繋ぎ止めながら回避を繰り返す。((――なんだ?))正に暗中模索の体をなす絶体絶命の状況。だが、カタナはメダリオンの異変に気付き始めていた。「なぜ――私では、私だけでは足りないというのですか――父上!」14

2015-10-28 16:17:54
ニンジャカタナ! @NJkatana

カタナの足が、腕が、周囲の闇に絡め取られる。まるで意識を持つかのように闇の中で闇が蠢く。「私だけでいい――父上を癒やし、愛するのはこの私だけでいい――!」闇に囚われ身動きの出来ないカタナを激しい突風が襲った。否、風ではない。煮詰まり、極限まで圧縮された闇が、通り過ぎたのだ。15

2015-10-28 16:25:07
ニンジャカタナ! @NJkatana

カタナは見た。闇に蠢く闇の先に姿を表したメダリオンを。「お前――それでいいのか?」万色のメダリオン――先程までの神々しい姿は見る影もない。今の彼は、深淵の闇の中に埋もれていた。恐らく彼にとってもこの力は禁忌だったのだろう。蠢く闇の中に浮かぶ彼の顔は、怒りと悲しみに満ちていた。16

2015-10-28 16:33:55
ニンジャカタナ! @NJkatana

「これ以上、増やすなど――もう駄目だ、限界だ!私の無力、私の至らなさがいけないのですか――?それとも、この眼の前の敵を消し去れば、父上の心は癒やされるのですか」メダリオンは支離滅裂な言葉を発してカタナへと歩みを進めた。カタナは僅かに動かせる左手で再度ブレードを握りしめる。17

2015-10-28 16:38:55
ニンジャカタナ! @NJkatana

「――俺には、あんたの気持ちも、事情もわからねぇ。だから何も言わねぇよ」メダリオンからの攻撃を回避するために周囲に散っていた残り全てのミドリムシがカタナの元に集まる。空間全てが闇に飲み込まれた漆黒の世界で、闇に拘束されたカタナとミドリムシだけが柔らかな緑光を発していた。18

2015-10-28 19:59:52
ニンジャカタナ! @NJkatana

カタナは暗闇の中で、自分の周囲を照らす弱々しい緑光を見た。今にも消えそうなその緑光は、僅かに震えながらも必死にカタナに寄り添おうとしている。((わかってる――大丈夫だ。俺が守ってやる))カタナは闇に怯えるミドリムシに傷だらけの顔で微笑むと、眼前に迫るメダリオンを見据える。19

2015-10-28 20:00:09
ニンジャカタナ! @NJkatana

「――だけどな、俺にもこれだけは言えるぜ!怖がらせたら駄目だ!人も、虫も、あんたが使うその力だって、怖がらせたら――どっかいっちまう!」カタナはメダリオンに向かって力の限り叫んだ。拘束された四肢が軋み血が溢れる。そしてその叫びと共に――闇の中に一筋の緑光が天に昇った―― 20

2015-10-28 20:01:27
ニンジャカタナ! @NJkatana

目まぐるしく変わり続ける多元連結機関の重力伝達予測への反応、そして重力の偏向に必要な多次元の同時認識と同時干渉――余りにも過大な処理だ。これだけの負荷が同時に掛かれば、いかに機械のサポートがあったとしても、まずパイロットの知覚は増大する処理に耐え切れず重大なダメージを受ける。22

2015-10-28 21:30:39