「普通」という言葉の意味

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深夜だし、たまには言葉の話でもしよう。 #長文書くよ

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「普通」という言葉がありますが、この言葉は不思議な言葉で、大きく分けて２つの意味を持ちます。ひとつ目の意味は「多くの場合」で、ふたつ目の意味は「異常がなければ」です。例えば、

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『普通、哺乳類はくちばしを持たないが、カモノハシはクチバシを持つ。』という文の場合『多くの場合、哺乳類はくちばしを持たないが、カモノハシはクチバシを持つ。』と置き換えることができます。『異常がなければ、哺乳類はくちばしを持たないが、カモノハシはクチバシを持つ。』とはなりません。

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また、『普通、切符を通せば改札を通れる』という文の場合『異常がなければ、切符を通せば改札を通れる』と置き換えることができます。『多くの場合、切符を通せば改札を通れる』となってしまっては困るわけです。このように、「普通」という言葉には、大きく分けて２つの意味を持つわけですが、

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「普通」という言葉が持つ２つの意味は、使い方次第で悪用することもできてしまいます。例えば、『普通、映画Aを見て面白いとは思わない』という文章があったとしましょう。この時、「映画Aが面白いという感想が少なく、『多くの人が面白いとは思わない』」だったとします。が、

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文脈を工夫すれば、『普通、映画Aを見て面白いとは思わない』を『異常がなければ（正常であれば）、映画Aを見て面白いとは思わない』というように読ませることもできてしまいます。こうすることによって、「少数派を異常者として認識させる」ということができてしまうのです。逆に、

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上手いこと文章を整えれば「多数派を正常者として認識させる」ということもできてしまいます。実際は「少数派が正常者」だとしても、「多数派が異常者」だとしても、それをひっくり返すような印象をあたえることができてしまうわけです。

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また、「大きく分けて２つの意味を持ちます」と言いましたが、細かく分けるともう一つの意味があります。そのもう一つの意味こそが、「普通」という言葉を厄介なものにしている最大の意味なのです。それは、「自分は（あるいは「自分がその立場で」）正常なら」という意味です。

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「自分は（あるいは「自分がその立場で」）正常なら」というのは非常に強力です。『普通は男が男を好きになったりしない』というような文で、この意味の使われ方はよくされます。『「男である自分は（あるいは「自分が男だったら」）正常なら男を好きになったりしない』ということです。この、

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個人の意見を「普通」という言葉を使うことによって、さもそれが多数派であり正常であるかのように発言できてしまいます。と同時に、それ以外は少数派であり異常であるという叩きつけもできてしまうわけです。

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何気なく使ったり見たり聞いたりする「普通」の意味は、根拠に基づく多数派でしょうか？規則に基づく正常でしょうか？経験に基づく個人の意見でしょうか？それを意識するだけで、「普通」という言葉に騙されることは大きく減ることになると思います。