【セントミリオン・スクール】#3

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ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「アバーッ!」「アイエエエ!?」中庭の菜園の土を押し退け、地中から少女が上半身を現した。偶然居合わせた栽培係のヒナタが悲鳴を上げる。「…ハァーッ…ハァーッ…危うく花壇の肥やしになるところでした…」埋まっていた下半身を引き抜いたのは、校長とのイクサに敗れた探偵、アリサであった。

2015-11-07 20:10:08
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

彼女は如何にしてあの窮地を凌いだか?それはマッタキ死を装うシニフリ・ジツである。然り、彼女はアイドルであった。「しかし秘密は奪いました。あとはトモカ=サンと合流するだけですが…」そこでアリサは震えながら彼女を凝視するヒナタに気が付いた。「イヤーッ!」「アイエエエ!?」SNAP!

2015-11-07 20:15:06
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

アリサは突然ヒナタにカメラを向けると容赦なくシャッターを切った!SNAP!SNAP!SNAP!「アイエエ!?」ヒナタは顔を背けるが、全方位からカメラが襲う!ハヤイ!「アイエエエ!?」やがて満足そうにアリサはカメラを下ろし、怯える女生徒に告げた。「私は実際恐ろしいアイドルだ」

2015-11-07 20:20:07
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「アイエエエ…アイドル?アイドルナンデ?」「お前に役目を与えよう。断ればまた写真を撮る」「分かりました…なんでもするからぁ…」半ば放心状態のヒナタに催眠術めいて耳打ちし、アリサは人の気配から逃れて建物の暗がりに消えた。……アリサは校長の重大な秘密を暴いた。あとはトモカの出番だ。

2015-11-07 20:25:07
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」神秘的な護りを奪われてもなおルーントリガーは屈しなかった。恐るべきシナイ斬撃がディティクティブから数ミリの空間を薙ぎ、彼女の前髪が数本散った。探偵はサイリウム・ダートで牽制しつつ距離を取る。その背後からマリアトラップが飛び掛かる!

2015-11-07 20:30:10
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「イヤーッ!」「イヤーッ!」マリアトラップが目を開いた時には、既に得物の鞭は両断され手中からバラバラと零れ落ちた。「オドーッ!」返す刀で鋭い斬撃が腹部に襲い掛かる。聖母のニューロンが加速する。辛うじてバックステップでシナイを躱し、ワンインチ距離で空振りした校長にチョップした。

2015-11-07 20:35:09
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「イヤーッ!」「ンアーッ!」「イヤーッ!」「ンアーッ!」「イヤーッ!」「ンアーッ!」ルーントリガーがシナイ・ブレードを取り落とす!「イヤーッ!」「ンアーッ!」「イヤーッ!」「ンアーッ!」「イヤーッ!」「ンアーッ!」校長は吹っ飛びキリモミ回転し落下!探偵のダートが突き刺さる!

2015-11-07 20:40:07
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「ンアーッ!」イクは悲鳴を上げ、襟首を締め上げるフラワーガールの手から逃れようとした。だがアイドルの腕力からは逃れられない。フラワーガールはイクを片手で吊り上げて、残る手に深紅の果実を乗せた。「これがあの聖樹が実らせた、アイドルの力を秘めた禁断の果実です。新しい同胞のための」

2015-11-07 20:45:05
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

タカネはうっとりと果実を眺めた。「美しいでしょう。幾人もの生徒の血を啜った実ですよ」「…なに、それ…じゃあ、退学した皆は…」「この学園に集められた生徒は皆、実験のモルモットに過ぎません。神を蘇らせる素晴らしき礎となったのです」イクの顔が蒼褪めた。恐怖ではなく…怒りによって。

2015-11-07 20:50:07
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

目の前の怪物は人の命を何とも思っていない。それは瞳の中の冷たい輝きを見れば明らかだ。私達が学園で暮らしている様を、彼女は飼育箱の虫か何かを見る目で観察していたのだ。きっとこれからも犠牲者は出続けるだろう。…イクの愛するアズサも。その可能性に行き当たった瞬間、イクの瞳が揺れた。

2015-11-07 20:55:05
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

遥か昔、アズサに読んでもらった絵本に出てきたアイドル。優しい歌と踊りで人々に笑顔をもたらす存在。アズサはいつか自分もそんな人物になりたいと言った。だから自分は。「…ので、この学園から撤退するにあたり、せめて手土産の一つでも欲しくて」「……アイドル……アイドル!」「……なに?」

2015-11-07 21:00:16
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ルーントリガーの両腕に刺さったダガーが引き抜かれ、傷口からぼたぼたと血が流れる。「ファハハハハハ!」ルーントリガーが哄笑する。すると、突如その傷から白色の炎が溢れ出した!「ライアールージュ・ジツ!イイイヤアアアアア!」床を、壁を、空間を炎が嘗め尽くす!木の根にさえ炎が絡む!

2015-11-07 21:05:05
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「イヤーッ!」炎を抱きながら突進してきた校長にディティクティブがダガーを投擲!「イヤーッ!」一直線に突っ込むルーントリガーに直撃!いや、違う!ダガーは校長をすり抜けて彼方へ!校長の姿は掻き消えた!これは如何なることか!?「蜃気楼!?」背中合わせのトモカがチョップしたのも幻影!

2015-11-07 21:10:13
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

床を這う白炎の向こうに揺れる影。それらは幻の姿を伴って二人に襲い掛かる!時折ルーントリガーの実態が奇襲を仕掛けるがすぐに幻影に紛れ区別が付かぬ!地下空洞内に炎の熱気と煙が充満し、このままではジリープアー(徐々に不利)!「トモカ=サン!ここは撤退を…」「…スゥーッ…ハァーッ…」

2015-11-07 21:15:06
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

焦るアリサを他所にトモカは目を閉じ深呼吸を開始した。これは太古より伝わりし神秘的呼吸法、フクシキ!「トモカ=サン、もう時間が」「イヤーッ!」電撃的速度でマリアトラップが弾ける!炎の壁を突き破り、そのチョップはルーントリガーの胸を刺し貫いた!「な、なぜ…」「状況判断です~」

2015-11-07 21:20:12
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「サヨナラ!」ルーントリガーは爆発四散した。アイドルソウルと共に爆炎が巻き起こり地下空洞を飲み込む。ディティクティブとマリアトラップは靴裏を炎に舐められながら礼拝堂地下から脱出した。背後で空洞の天井…礼拝堂の床を、アイドルの断末魔の白炎が引き裂く音が聞こえた。

2015-11-07 21:25:05
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

……「……アイドル……アイドル!」「……なに?」フラワーガールが眉を寄せ足元を見た。地響きめいて床石が音を立て揺れる。「イヤーッ!」フラワーガールはアイドル第六感に従い、イクを手放して跳び退った。次の瞬間、床下から白色の炎が天井目掛け吹き上がった。「ンアーッ!?」

2015-11-07 21:32:29
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

床石が吹き飛び礼拝堂に巨大な穴が開いた。地下に何かあるらしいが、イクはそんなことはどうでもよかった。少女のニューロンが加速し、吹き飛ぶガレキが、燃え盛る炎が、驚愕するタカネがスローモーションに映った。その停滞した刹那の中で、己が取るべき道を手繰り寄せる。生き残る道を。

2015-11-07 21:34:21
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

砕け、バラバラに山積もった床石に目が吸い寄せられた。イクは祈るように手を翳し。「…お願い!」その力を行使した。イクの目に黄色い光が浮かび、伸ばした手と瓦礫に同じ輝きが灯ると、床石の山が意思を持つかの如く積み重なり2メートルを超える巨人の姿を象った。「…なんと」タカネが呟く。

2015-11-07 21:35:06
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

目の位置に黄色い灯を宿すゴーレムは、イクを守るように立ち塞がる。「貴女もアイドルだったのですね」タカネは興味深そうにイクを観察する。「この学園から出て行って!」イクの叫びに応じてゴーレムが威嚇的に拳を振り上げた。「フフ、それではお暇しましょう」タカネの姿を白雪が覆い隠す。

2015-11-07 21:40:10
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

『出来ればまた、お会いしたいですね』最後にそう告げて、タカネは礼拝堂から姿を消した。「…う」イクはよろめきへたり込んだ。ゴーレムが足から崩れ、元の瓦礫に還っていく。極度の精神集中を果たし、彼女の血中カラテは尽き果てていた。煙と熱気が容赦なく少女の体を責め苛む。「ゲホッゴホッ…」

2015-11-07 21:45:06
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ナムアミダブツ…イクはこのまま礼拝堂と運命を共にしてしまうのか。おおブッダよ!まだ寝ているのですか!…「…ク=サン!イク=サン!」何者かが倒れ伏すイクを揺すり、抱きかかえて燃え盛る礼拝堂から逃げ出した。「…アズサ=サン?」アズサは綺麗な顔を煤で汚して微笑んだ。「……よかった」

2015-11-07 21:50:10
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

彼女の無事に安心したイクはゆっくりと眠りについた。その間際、夜空を飛びわたる二つの影を見た気がしたが、コウモリか何かだと考え、瞼を閉じた。

2015-11-07 21:55:04
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

【セント・ミリオン・スクール】終わり

2015-11-07 22:00:19