北野勇作さんの【ほぼ百字小説】

北野勇作さんの【ほぼ百字小説】と関連ツイートをまとめました。 2016年6月30日発売の年刊日本SF傑作選「アステロイド・ツリーの彼方へ」(創元SF文庫)に、2015年にツイートされた1~151から100作が収録されました。 https://www.amazon.co.jp/dp/448873409X/ref=cm_sw_r_tw_dp_5mczxb130CQX9 1001篇以降を「その2」 https://togetter.com/li/1130221 にまとめました。 続きを読む
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北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(24) 気がつくと墓地を走っていた。どっちを見ても、墓石墓石墓石墓石墓石墓石墓石。どう行けば出られるのか。いや、そもそもいつ迷い込んだのか。と、そこまで考えたところで、自分の墓からスタートしたことを思い出す。

2015-11-03 21:55:42
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【ほぼ百字小説】(25) 青空に、ぽん、と蓮の花が咲くようにパラシュートが開く。次から次へと開いて、そのままの形で落ちてくる。白くて丸い花の下にはヒトの形をしたものが無防備に吊られているが、ヒトなのかどうかはまだわからない。

2015-11-05 09:09:19
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【ほぼ百字小説】(26) 定期的に骨を整えてもらわねばならない。こりゃまたずいぶん歪んだことを考えましたね。まあそれが仕事なので。いやあ、これは根元からですよ、仕事っていうよりも。そんなのわかるんですかあ。そりゃあ仕事なので。

2015-11-05 22:08:22
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【ほぼ百字小説】(27) やたらとヘリコプターが降りてくる。用事もないのに降りてくる。その点はヘリコプターも気にはしているようで、えー、ヘリコプターのご用はございませんか、とスピーカーでしつこく言いながら降りてくる。ないのに。

2015-11-05 22:12:46
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【ほぼ百字小説】(28) 運動会の大玉がいつもよりよけいに転がって、いまだ戻らない。何年かにいちどこういうことがあって、決して生徒のせいではなく純粋に確率的な事象ですと校長はコメント。野生化する玉は、白より赤のほうが若干多い。

2015-11-06 23:10:03
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【ほぼ百字小説】(29) 洗濯機が次々に空へ舞い上がる。脱水槽を回転させる力をすべて、飛行に向けたのだ。たっぷりと水を含んだまま地上に置き去りにされた洗濯物たちは、空を見上げて渇きの時を待つしかないが、そこへ雨季がやってくる。

2015-11-07 09:51:02
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【ほぼ百字小説】(30) 青空に、ぽん、と蓮の花が咲くようにパラシュートが開く。次から次へと開いて、そのままの形で落ちてくる。白くて丸い花の下に吊られているのは明らかにヒトの形ではないが、ヒトでないかどうかはまだわからない。

2015-11-07 09:56:41
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【ほぼ百字小説】(31) ぱらりるらりぱらりと降り出しに鳴るのは物干しの半透明波型プラスチックの屋根。すぐに台所の換気扇の上に張り出した小さなトタンがとんたとんたたとんと続くのもいつもと同じだが、今朝の雨はその後が違っている。

2015-11-08 10:52:18
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【ほぼ百字小説】(32) 崖の下に抜け穴があったのは夢で見た通り。なんと抜け穴なのに自転車で走れる、これで距離を稼げるぞ、とそんな場合ではないのに少し嬉しくなったのも夢の通り。ではこうなった理由も夢の通りか。そこが思い出せない。

2015-11-08 20:35:14
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【ほぼ百字小説】(33) 千年ほど前、この坂の下は海で、風の強い日にはここまで波の飛沫がとどいたものだ。隣で亀が言う。まあ亀が座って喋っていることに比べれば、海岸線の後退くらい誤差の範囲内、とは思うが、本当に万年生きるんだな。

2015-11-08 20:36:23
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【ほぼ百字小説】(34) 近所の廃工場の前に金属の枠があって、普段は濁った水が溜まっている。覗くと金魚らしき赤い影が動く。晴れた日が続くと、からからに乾いて底が剥き出し。なのに、雨が降って水が溜まると、また赤い影が動いている。

2015-11-09 11:03:48
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【ほぼ百字小説】(35) 最近、部屋によくブロックが落ちている。子供の頃によく遊んでいた赤と青と黄と緑のブロックだ。持ち込んだ覚えなどないのに。もしかしたら、と思うが、まさかな、とも思う。今朝、風呂場を見ると大量に落ちていた。

2015-11-09 22:28:58
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【ほぼ百字小説】(36) 小学校前の道路が広げられたとき、うかつに切ると祟りがある、とあの大木はそのままにされたのだが、そんなところに頻繁に自動車がぶつかるのは当然で、結局ある夏の朝、ダンプカーが衝突して倒れてしまったそうな。

2015-11-10 21:12:49
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週2つくらいかなと思ってたんですが、今のところはたぶん一日ひとつというか週に7つくらいの感じでしょうか。まあこれからどうなるかはわかりませんが。

2015-11-10 21:10:30
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【ほぼ百字小説】(37) 家の前の道に白いチョークで線路が描かれていて、どこまでも続いているみたいに見える。そんなことを思ったのはこの歌声のせいか。ぐんぐん近づいてきて、そのまま通り過ぎた。歌声だけが線路の上を遠ざかっていく。

2015-11-11 17:48:53
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【ほぼ百字小説】(38) 雨ではなく、ピンク色の象型如雨露による水だったのだ。この時期、大陸から象型如雨露の群れが飛来し、我が国上空で前傾姿勢をとる。分厚い雲で見えなかったその姿が、気象衛星によってついに捉えられた瞬間である。

2015-11-11 18:36:07
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【ほぼ百字小説】(39) 暗闇の中、ずさ、ずさ、ずさ、と畳を擦って迫りくる音で目が覚める。音は、枕元から耳の側を通って首筋へ。そして頸動脈の上にぴたりと当てられるのは、ナイフのように冷たい甲羅だ。秋の夜、亀は熱源を求めている。

2015-11-12 14:40:41
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【ほぼ百字小説】(40) 出番のないままだった石炭ストーブが立ち上がった。達磨型ゆえ、敵も味方もそんな事態は想定していなかったはず。だが今こそ、秘められていた二本の足を伸ばし、すっくと大地に立つ。こいつ、動くぞ。少年が叫んだ。

2015-11-12 20:07:20
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100字×40。原稿用紙10枚分書けました。短いショートショートひとつぶんですね。

2015-11-12 20:12:13
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短いショートショートというのは変ですが、まあ十枚ならショートショートとしても短いほう。

2015-11-12 20:13:13
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【ほぼ百字小説】(41) たとえば、長靴ね。水を通さないってことは、水を入れる器としても使えるでしょ。ものは同じ、矢印の向きだけ変わる。つまりこれからは、あんたたちが食われるの。今まで食われてたおれたちにね。同じさ。同じだろ。

2015-11-12 22:43:14
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【ほぼ百字小説】(42) 滑り台に使用する斜面にするため、山を作ろうとしたのです。しかしこの世界には上限があることがわかったので、掘り下げてみました。でもそちらにも限界があるようですねえ。次は、重力の操作による方法を試みます。

2015-11-13 21:23:06
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【ほぼ百字小説】(43) 高い煙突のある町に住んでいました。いろんな都合の悪いものを粉砕し、飛散させてしまうための町でした。まあいちばん都合の悪いのはその町ですから、最後には自分で自分を砕いて町は跡形もなくなりましたよ。私も。

2015-11-13 21:25:14
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【ほぼ百字小説】(44) 消火器が白い泡を噴きながら倒れた。ごおごおと炎が迫る。消化器が黄色い液を吐きながら倒れた。てらてらと肉塊が迫る。小火器が粗悪な弾を撒きながら倒れた。ぎらぎらと抜き身が迫る。撤退だ撤退だ撤退だ撤退だ。

2015-11-14 15:59:49
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【ほぼ百字小説】(45) 買ったばかりのソファの中には大抵誰かが入っていますから、ソファを傷つけることなく入っている誰かを出すことを考えなければなりません。もちろん、ソファだけではなくその誰かの心も傷つけないよう気をつけて。

2015-11-14 18:42:23
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