スペアキー

ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【Shingo story⑫】 直に触って欲しくて、ベルトを緩めると… 照れた指先が釦を外し、チャックを下ろした 『は、ぁ…っ』 暖かい手のひらに包まれ、昇りつめる感覚 『も、イきそ…っ』 俺の声を合図に、口に含んで扱きだす 『…っあ、かん…っ、出る…っ』

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【Shingo story⑬】 口内に吐き出した欲を 「んんっ、ふ…ぅっ」 喉を鳴らして飲み下した 苦いハズやのに飲むやなんて… ぎゅっと抱き締め 「信ちゃ…んぅ…っ」 キスを落とす …こいつの隣に居りたい そんな想いが一層強なった

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【Shingo story⑭】 あれからやな… いつでも来れるようにって、アイツから〝スペアキー〟もろたんわ 初めは通う程度やったのに 『帰ったでー』 「お帰りなさーい」 いつの間にか、半同棲するまでになっとった ベランダに出る時は同んなじ靴履いて

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【Shingo story⑮】 アイツが買うた写真立てに、俺らの写真飾って 色違いの歯ブラシを洗面台に並べた 少しずつ増えていくお揃いの物たち …何気に嬉しかったんやで？ たまに実家に帰る時やなんて、玄関まで見送りにきて 『ほな、またな』 「…ね、ギューッは？」

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【Shingo story⑯】 寂しそうに上目遣いで俺を見る 『しゃーないな、ほら』 腕を広げると 「ん…」 躊躇いなく抱きつく 普段甘えて来ぉへん分、愛しさが増した 「信ちゃんなんか、もう知らないっ！」 喧嘩したり 『すまん、俺が悪かった…』 仲直りしたり

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【Shingo story⑰】 「しん、ちゃん…ゴメンなさい…っ」 泣かせてまう事もあったけど 「今度ここ行きたいなぁ」 『ん？ええやん、行こか』 一緒に同じ景色を見る楽しさのが多かった もしかしたら… アイツだけちゃうか？

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【Shingo story⑱】 同んなじ空間に居んのに、お互い無言でちゃう事しとっても心地良く感じれた奴は… 寝る時も隣にひっついてくるから、つい手を出したい欲求に駆られてしまう 「…ぁ、っ…」 軽く胸を撫でるだけで、身体を小さく震わせ 「ひゃ、あ…っ、んん…っ」

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【Shingo story⑲】 指を秘部に沈めると、腰をくねらせた 「は、あ…っ、も、ここに…ちょうだい…っ」 はだけた服からのぞく白い肌と、甘い吐息が俺を誘う 「ん…ふ、ぅ…っ」 慎重に自身を奥へと沈め 「あ…っ、んっ、あぁ…っ」 ゆるゆると攻めていく

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【Shingo story⑳】 「…や、ぁ…っ、んっ」 乱れる髪 「しん、ちゃ…っ、もっと、シて…っ」 上気する頬 『っ！そない煽んな…っ』 脚を抱え、更に奥へ自身を捩じ込む 「あぁっ、や…っ、んあっ」 シーツを掴み、快感に耐える彼女 『は…っ、好きや…っ』

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【Shingo story 21】 こんな時しか言えんけど…好きやねん 腕を伸ばし、俺にしがみつくと 「…私、も…っ、信ちゃんが、好き…っ」 彼女の言葉ごと身体を抱き締めた 「は、あ…っ、んぅ、あぁ…っ」 最後に大きく突き上げて 『…ぅあ、イく…っ』

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【Shingo story 22】 中へ欲を吐き出す 「んあっ、ふ、…っぁ」 彼女の胸に倒れ込み ちゅ… キスを１つ 余韻に浸りながら、漠然と このまま〈今〉がずっと続くんやろうなぁって思ってたんや そんなん、ある訳ないのに 多少なりとも変化は付きもんやからな

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【Shingo story 23】 せやけど、俺は忘れとってん 「信ちゃん…」 このメールが来る 『ん？どないしてん』 この瞬間まで 「…出来た、みたい…」 『…は？何が？』 常に〈今〉は変わり続けるってことを 「…赤ちゃん…」 忘れてたんや…

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【Shingo story 24】 アイツはもちろん〈産みたい〉言うた せっかく出来た命やから 俺の、子供やからって… 薄々、感じてはいたんや 「信ちゃんは、もし子供出来たらどっちが欲しい？」 行為の後に聞いてくる事が多かったから

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【Shingo story 25】 子供欲しいんやろな、って せやけど、俺は〈今〉を変えたなくて…曖昧に誤魔化した 逃げて、逃げて、逃げまくって ずるずると先の事を考えんかった その結果を… 現実を… 目の前に、突きつけられたんや

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【Shingo story 26】 子供は嫌いやない 苦手やねん どう接してええんか分からん 『…俺、は』 それでなくても、彼女には前の旦那との間に子供が居る まだ保育園の男の子が… その子の父親になるって事でもあるんやろ？ 俺の子供と、前の旦那の子

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【Shingo story 27】 分け隔てなく、平等に同んなじ様に愛せるか… 『…堕ろして欲しい…』 そんなん出来る自信がない 自分の子を可愛がってまうかもしれん 差別してまうかもしれん もしかしたら… 鬱陶しく感じるかもしれんやんか

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【Shingo story 28】 経済面でもそうや アイツを、子供を、養っていかなあかん やけど…今の俺には… 養えるだけの蓄えも、仕事もあらへん まだまだ駆け出しの俺には… 「どうしても…ダメなの…？」 目に見えて、酷くなっていく悪阻

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【Shingo story 29】 ご飯も喉を通らず、動くことさえままならない 身も心も弱っていくのを、見てるだけしか出来んかった 堕胎までの期限はあと僅か それを過ぎてしまうと堕ろすことが出来んくなってしまう いよいよ決めなあかん、そんな時 一通のメールが届く

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【Shingo story 30】 「今…病院…赤ちゃん、居なくなっちゃった…」 自分を追い込んで追い込んで どうにも吐き出せんかった、溜まりすぎたストレスが小さな命を奪った 俺の初めての子 何の実感もないまま、消えていってしもた お前の心に深く自分の存在を刻んで…

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【Shingo story 31】 その日を境に、少しずつひらく心の距離 布団に入る度、俺に背を向け、１人肩を震わせて静かに涙を流す 一緒にTVを見とっても 話しかけても どっか素っ気なくて、目も合わしてくれへん様になった 何日も何日も…

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【Shingo story 32】 だんだんアイツの家から足が遠のいて ２日に１日 １週間に１日と 俺も距離を置き始めた 前みたいに戻れる事を願って… せやけど、一向に連絡が来ぉへんから 『今日そっち行く』 痺れを切らして送ったメール

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【Shingo story 33】 「分かった」 いつも通り車で向かって いつも通り一緒に寝る 朝、目が覚めると隣に居て いつも通り抱き寄せた 愛しくて愛しくて 思わず胸に伸びた手 微かに身体を震わせるも、声を漏らすことはなかった …初めて感じた、お前からの拒絶

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【Shingo story 34】 『ほな…また』 後ろ髪を引かれる思いで仕事に行った 翌日 思い切って彼女に１通のメールを送る 『…嫌、やった…？』 「うん、嫌だった…あの子が居なくなってから、性的な事、全部…会話の内容とか行為とか、生理的に受け付けないの…」

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【Shingo story 35】 やってしもた… そう思っても、すでに遅い 「信ちゃん…距離を置かせて欲しい」 もう、あの頃みたいには戻られへんねや ¨時計の音だけが 悲しげに響いている あまりにも静かで 壊れそうで眠れない夜¨ 『なぁ…まだ会われへんか…？』

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【Shingo story 36】 ホンマはな、あの日の朝見てもてん 「うん…ごめん、会えない…」 お前が起きてくる前に 『それって…別れたいってことなん…？』 本棚からはみ出した、日記を… 「…うん」 一緒に病院に行かんかったこと