“マカロニウエスタン生誕50周年”『荒野の用心棒』雑学コラム「マカロニ・マシンガンは弾切れしないんだぜ。」蔵臼 金助

イタリア製西部劇研究家による、『荒野の用心棒』Blu-rayコレクターズ・エディション公式BBS連載・雑学コラムの再掲(一部書下ろし)です。
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

イタリアでは日本と同じく、映画撮影時においてアフレコ方式を用います。撮影したフィルムに合わせて、スタジオで改めて収録した台詞、効果音を後からシンクロさせるのです。

2015-11-23 01:36:33
蔵臼 金助 @klaus_kinske

フランスなどでは同時録音方式が用いられています。撮影時にマイクで台詞、効果音も一緒に収録してしまうのです。ですので、フランス製のアクション映画、フィルムノワールにおいては、銃声は実銃の発射音に近い「パン、パン」という乾いた音になります。

2015-11-23 01:37:03
蔵臼 金助 @klaus_kinske

例えばフランス資本の入ったセルジオ・コルブッチの『スペシャリスト』は、フランス方式のアフレコで撮りましたので、ジョニー・アリディーの撃つコルトの音は、「パン、パン」という響きとなり、レオーネのウエスタン映画に見られる「ズギューン」といった誇張された銃声とは趣が異なってきます。

2015-11-23 01:37:26
蔵臼 金助 @klaus_kinske

『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』がイタリアでレストアされ、DVD化された時に、制作チームは音声もデジタルで加工し、残響音を加えたりして“リアルな”銃声に変えました。それをマカロニウエスタン・ファンは不満に感じます。劇画的な銃声でないと、何か違和感があるんです。

2015-11-23 01:37:48
蔵臼 金助 @klaus_kinske

逆に『ウエスタン』において、レオーネは意図的に銃声をリアルなものに変えてますよ。微妙にではありますが、“ドル三部作”よりも実際の銃声に近づける工夫を施しています。作品のテーマに即して変えたのでしょうね。 pic.twitter.com/lbw9ANf0Hc

2015-11-23 01:38:43
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

「ライフルと.45口径が戦えば、ライフルを持った者が勝つ」…ラモンは自信たっぷりに言い放ちます。ラモンは“ガンマン”でなく、“ライフルマン”なんです。西部劇には、拳銃でなくライフルを愛用する賞金稼ぎやアウトローも登場します。

2015-11-23 01:41:22
蔵臼 金助 @klaus_kinske

何といっても、『ライフルマン』のチャック・コナーズ、それとウインチェスターを切り詰めた“メアズ・レッグ”を愛用する、『拳銃無宿』のスティーヴ・マックイーン。『駅馬車』等のジョン・ウェインもライフルマンです。 pic.twitter.com/pQx2orLCdI

2015-11-23 01:46:44
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

マカロニウエスタンでも『盲目ガンマン』のトニー・アンソニーがM66改造ライフルを愛用、『さすらいの一匹狼』のクレイグ・ヒルはテレスコープ付きM66を駆使しました。 pic.twitter.com/NOrJvgvbHf

2015-11-23 01:50:27
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

『さすらいのガンマン』のバート・レイノルズはインディアン仕様のM73を手足のように使いこなします。 pic.twitter.com/jzaD403PMX

2015-11-23 01:50:58
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

ハリウッド製西部劇に出てくるウインチェスターがもっぱらM92であるのに対し、マカロニウエスタンでは小道具調達事情から、初期作品にはM94が、後にM92とM66が多用されるようになりました。『荒野の用心棒』のラモンはウインチェスターM94を使っています。

2015-11-23 01:53:40
蔵臼 金助 @klaus_kinske

最後の決闘の際にはウインチェスターがM92に変わりますよ。銃器の扱いに長けてなかったジャン・マリア・ヴォロンテのために、弾丸を込めやすいM92を用意したのかな?(『さすらいのガンマン』でも、チネチッタのロケセットではM94が使われ、屋外の発砲シーンではM73に代わりました)。

2015-11-23 01:53:54
蔵臼 金助 @klaus_kinske

女っ気のないことで知られるセルジオ・レオーネのウエスタン映画ですが、『荒野の用心棒』には珍しくヒロインが登場いたします。 pic.twitter.com/zefisWt6nE

2015-11-23 01:58:49
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

ヒロインと言うか…黒澤の『用心棒』を正確にトレースして西部劇に置き換えた『荒野の用心棒』でありますので、そのキャラクターは『用心棒』での司葉子演じる土屋嘉男の女房役そのままなんですね。置き換える際にあまり工夫をしていない。 pic.twitter.com/AqSYPlIure

2015-11-23 01:59:18
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

演じるのは、ドイツ生まれのマリアンネ・コッホです。代表作は主題曲「アフリカの星のボレロ」が有名な、『撃墜王 アフリカの星』でしょうか。マカロニウエスタンでは未公開作のぱっとしない数本しか出演作がありません。 pic.twitter.com/wmV8Kj1b7W

2015-11-23 01:59:46
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

1984年に女優を引退後、女医として活躍。こんな女医さんでしたら、腕の2~3本でも折って、治療を受けたいものです pic.twitter.com/tVqvmmRlDT

2015-11-23 02:01:55
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

セルジオ・コルブッチの描く主人公たちがよく女に惑わされ、運命を狂わせていくのに対して、レオーネの描く主人公たちは女にはまったく興味がなく、主人公と絡むシーンはおろか、恋愛感情すら滑り込む余地を与えません。

2015-11-23 02:02:19
蔵臼 金助 @klaus_kinske

『荒野の用心棒』のロビーカードで、まるでヒロインを守ろうとするかのように銃をかまえた“名無しの男”の絵柄も見られますが、なんとなくぎこちなく見えます。 pic.twitter.com/gimpW9ikHL

2015-11-23 02:03:05
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

ここでも製作者側の「ハリウッドの本場の西部劇風に見せたれ」戦略 対 「ストイック命、女無用」のレオーネ演出サイドとの葛藤が垣間見えるようです。 pic.twitter.com/YaJGgtKaSA

2015-11-23 02:03:37
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

1836年にアラモの砦に立てこもった義勇軍に対し、サンタ・アナ将軍率いるメキシコ共和国軍は連夜「デグェジョ」を演奏、砦の守備隊を心理的にまいらせようとしました。勇猛果敢なことで知られるオスマン・トルコ軍が演奏する軍楽“メフテル”と同じです。

2015-11-23 02:06:36
蔵臼 金助 @klaus_kinske

メフテルの有名な楽曲「ジェッディン・デデン」が聞こえてくると、敵は武器を投げ捨てて遁走したと聞きます。

2015-11-23 02:06:55
蔵臼 金助 @klaus_kinske

「デ・グェジョ(Deguello)」とは、英訳すると「Cutthroat(喉を掻き切る)」。『リオ・ブラボー』でディミトリ・ティオムキン作曲の音楽が効果的に使われて、日本では「皆殺しの歌」として知られています。 pic.twitter.com/9NNBjr9Mhu

2015-11-23 02:11:27
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