- DD_LUNAKICHI
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「元気でやっているか?」 「あ、ああ…今の司令官もいい人だ…」 菊月は動揺しており、なんとか平静を保っている状態だった。なにしろかつて死んだはずの婚約者が目の前にいるのだ 「ここは、なんなんだ」 混乱する意識をなんとか整理し、彼に問うた
2015-11-30 19:53:04「ここは、軍艦「菊月」の魂が眠る場所。俺は死んだ後、「菊月」に魂を守って貰っていたんだ。いつかお前がここに来ると信じてな」 「…菊月」 森の背後から別の声が聞こえた。白く輝く何かがそこにいた。菊月には直感的にその正体を見抜いた 「お前が…「菊月」か」
2015-11-30 19:55:51「そうです。菊月…やっと会えましたね」 「…そうだな。私も会いたかった」 菊月は森を押し退け、「菊月」と対峙し、疑問をぶつける 「お前は何者だ?何故私の中にお前の魂がある?」 「菊月」は優しくこちらを見据えている…ように見えた
2015-11-30 19:57:15「私は軍艦「菊月」に宿った魂。貴方の中に私の魂が宿っているのは、この力を後世に残すため。私の魂はもう、長くはありません」 「そうらしいな」 菊月はトゥンヌスの言葉を思い出す 「魂が消滅する前に、誰かに継承させておく必要があった。それで選ばれたのが貴方なのです」
2015-11-30 20:02:30「私が…お前の魂を?」 「清き心と、勇敢な精神を持つ者。貴方こそがこの魂を受け継ぐに相応しいと判断しました」 「菊月」の魂の輝きが段々弱々しくなっていくのが菊月にもわかった。本当に時間がないようだ 「菊月。今から私の力を全て、貴方に託します。この魂が消滅する前に」
2015-11-30 20:03:40「…わかった。それが貴方の望みなら」 菊月は頷き、「菊月」に腕を伸ばす。だが、森の手が両者の間に割り込んできた 「ちょっと待った。「菊月」、あなたが消えたら俺も消えてしまう。その前に少し、菊月と話をさせてくれ」 「森…」 菊月は森を見つめた。彼の表情は決断的だ
2015-11-30 20:04:31「これが最後の別れになるんだ。少しくらいいいだろ?」 「もちろんです。どうぞ」 森は「菊月」に礼を言うと、菊月の前に立った 「というわけだ。ちゃんとお別れを言えてなかったからな。また会えてよかった」
2015-11-30 20:07:15「私もだ…お前と再び話せるとは。未だに実感が沸かないが」 「無理もないさ。死人と話すなんてイカれてるだろ?」 菊月は首にかけたネックレスに通してある二つの指輪を片方外し、森に渡した 「お前の指輪だ。ずっとこうして、肌身離さず持ち歩いていた。冥土の土産に持っていけ」
2015-11-30 20:07:49あまり気が利いたことが言えない自分をもどかしく思いながらも、菊月は清々しい気分だった。森もそれを知ってか知らずか、何も言わずに指輪を受け取った 「ありがとな。指輪、しないのか?」 菊月は指輪のついたネックレスを首にかけ直す 「ああ。お前との約束を果たすまでは、このままだ」
2015-11-30 20:09:03「平和な世界を作るまで、か?律儀なやつだな。ま、それがお前らしい」 菊月は森とハグを交わし、「菊月」に手を伸ばした 「お前にちゃんと別れを告げられるだけでも、私は幸せだ」 「菊月」の魂の光が、菊月を優しく包み込んでいく
2015-11-30 20:10:24「そうだな。今の提督さんによろしく言っといてくれ。じゃあな」 「…さよなら」 菊月は強く頷く。次の瞬間、菊月の意識は途絶えた
2015-11-30 20:11:12「…イ。オイ。起キロ」 トゥンヌスの声で、菊月は目を覚ます。そこは「菊月」の機関部。横たわる菊月の顔をトゥンヌスがペシペシ叩いている 「ここは…?」 「何ヲ寝ボケテイル。何ガアッタ?」 菊月は首元に手を当てた。ネックレスに通っている指輪は一つだけ。あれは夢ではなかったのだ
2015-11-30 20:12:59「お前の言う通りだったな、トゥンヌス」 菊月は立ち上がり、服の埃を払う 「「菊月」に会った」 「本当カ?」 「本当だ。「菊月」の魂は、今やここにはない。全て、私の中にある」
2015-11-30 20:15:31「デ、ドンナ力ヲ手ニ入レタ?」 菊月は目を閉じ、意識を集中させた。目覚める直前、菊月は新たに覚醒した能力を理解していた 「千里眼だ。ここから南に約20kmの地点にマグロの魚群が見える」 「驚イタ。ソンナ細カイコトマデワカルノカ」 トゥンヌスはわざとらしく驚いた仕草をとる
2015-11-30 20:18:42「元々持っていた力だ。以前は「菊月」の近くのことしかわからなかったが、今は違う」 今の菊月には、世界中、あらゆるモノが見える。世界中に溶けだしたという「菊月」の魂がこの光景を見せているのだろう。菊月の説明を、トゥンヌスは顎に指を当てて聞いていた 「ナルホド、面白イ能力ダナ」
2015-11-30 20:19:54「ナラバソノ力、我ガ貰イ受ケル!イヤーッ!」 トゥンヌスは瞬時に菊月に近寄り、彼女の首を掴む! 「グワーッ!?貴様、何を…」 「ククク、最初カラコノ時ヲ待ッテイタノサ!オマエノ能力ヲ覚醒サセ、ソノ力ヲ奪ウ!」 トゥンヌスは菊月の首を強く締め付け、持ち上げた
2015-11-30 20:21:03「わ、私の力を…奪うだと…?」 「サッキモ言ッタトオリ、コノ身体ハ仮初ノ身体。ソコデオマエヲ殺シ、ソノ身体ヲ奪ウコトニシタノサ!ソウスレバ我ハ完全ニ蘇ル!フハハハハ!」 「ぐっ…貴様…!」 菊月は死に物狂いで腰のロッドを掴み、トゥンヌスの水の身体に突き刺した
2015-11-30 20:23:01「フン、ソンナコトヲシテモ無駄…」 「どうかな…くらえ!」 菊月の武器は電撃ロッドだ。菊月はトゥンヌスの身体に電流を流す! 「「グワーッ!?」」 電撃はトゥンヌスと、水に濡れていた菊月の両者を襲う。だが身体が水でできているトゥンヌスに比べれば、そのダメージは微々たるものだ
2015-11-30 20:25:58菊月はロッドを拾い、機関部室から出ていく 「エエイ…コザカシイ真似ヲ!」 トゥンヌスはそう言うと水溜りに手を触れた。するとトゥンヌスの身体は水と同化し、溶けるように消えていく 「ククク…我カラ逃ゲラレルト思ウナヨ」
2015-11-30 20:26:42「はぁ…はぁ…」 「菊月」から抜け出し外に出た菊月は、すぐ目の前にある小さな陸地を目指し駆け出した。その行く手を阻むように、小さな水マグロが出現する 「くそ!しつこい!」 菊月は単装砲でマグロを吹き飛ばし、トウキョウ・ベイの陸地から「菊月」を振り返った
2015-11-30 20:28:28「ハハハ、無駄ヨ無駄」 菊月の目の前にトゥンヌスが現れる 「やはり敵意がないなど嘘だったな。貴様、私の身体を奪ってどうするつもりだ」 「決マッテイル。オマエノ身体ト能力ヲ使イ、海モ、地上モ、マトメテ支配シテヤルノダ。ツイデニマグロモ食ベ放題ヨ」
2015-11-30 20:29:53「そんなことはさせるか」 菊月は単装砲でトゥンヌスを撃つ。だが弾丸はトゥンヌスにダメージを与えることなく貫通していく。トゥンヌスは不気味に笑いながら、アメーバめいて海に溶けていった 「くそ…どこだ?」 トゥンヌスは海から、いや、あらゆる水源から菊月を狙っている
2015-11-30 20:31:33「ククク、ドウダ。我ノ姿ガ見エマイ。スグニアノ男ニ会ワセテヤルゾ」 「あの男…?森司令官のことか!何故知っている!」 菊月の周囲にトゥンヌスの声が響く 「フン、知ッテイルモナニモ、アノ時アノ男ヲ食イ殺シタ駆逐ロ級ハコノ私ダゾ」 「なんだって…!?」
2015-11-30 20:33:41菊月の前方に水マグロが集まる 「お前が…森を殺したのか?」 「ソノ通リ!ソシテオマエハ、恋人ノ仇に身体ヲ奪ワレルノダ。オオ、ナンタル皮肉」 トゥンヌスの声が菊月を嘲笑う。菊月は単装砲とロッドを握る手に力を込めた 「サア、ソロソロ終ワリニシテヤロウ。イヤーッ!」
2015-11-30 20:35:33