guicheng さんによる「はやぶさ2」地球スイングバイ補足解説

11
guicheng @guicheng

えーと、記憶が薄れないうちに「はやぶさ2」の地球スイングバイについて補足というか解説をしてみたいと思います。

2015-12-03 21:13:20
guicheng @guicheng

本日、2015年12月3日19時08分(日本時間)に、小惑星探査機「はやぶさ2」は地球に最接近し、ハワイ諸島上空約 3,090km を通過しました。現在の探査機の状態は正常であることが確認されています。

2015-12-03 21:15:36
guicheng @guicheng

「はやぶさ2」には様々なセンサーが搭載されており、これらがすべて正常値を返したと言うことですね。この情報が津田プロマネに集約されたとき、管制室では拍手が起こったそうです。

2015-12-03 21:17:22
guicheng @guicheng

ちなみに、数あるセンサーの中でも温度センサーの値が最後に報告されたとのこと。

2015-12-03 21:18:25
guicheng @guicheng

さて「スイングバイ」とは、地球が太陽の周りを公転する力を借りて探査機の速度や軌道を制御する技術です。地球上とは異なり風のような外乱要素がないため、地球に対する進入方向と速度により、その結果はかなり厳密に決まります。

2015-12-03 21:21:50
guicheng @guicheng

裏を返せば、進入方向と速度をどれだけ精密に制御できるかでその成否がすべて決まります。その位置決定精度は「東京から富士山頂にいるダニをのぞき込む分解能」、速度決定精度は「秒速30kmで移動する探査機を秒速1mmで計測」だそうで。business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15…

2015-12-03 21:27:20
guicheng @guicheng

日本が初めてスイングバイを成功させた探査機は MUSES-A「ひてん」です。その後数々のスイングバイを成功させ、現在では世界のトップに立っています。たとえば先代の「はやぶさ」が行った「イオンエンジンのみでのスイングバイ」は世界初の偉業として記録に残っています。

2015-12-03 21:33:25
guicheng @guicheng

まぁ、スイングバイに要求される航行精度をイオンエンジンだけで実現するのはとんでもなく手間がかかるので、「はやぶさ2」では化学推進エンジンで軌道修正しましたが。この軌道修正も当初3回が予定されていたところ、非常に高い精度でクリアできたため、最後の1回はキャンセルされました。

2015-12-03 21:36:52
guicheng @guicheng

スイングバイと言えば、火星探査機「のぞみ」を語らないわけにはいきません。月を利用したスイングバイを行った後、とって返した刀でもう一度月スイングバイを行って加速し、さらに地球パワースイングバイで火星軌道に投入する計画でした。その軌道の形から「バナナンオービット」と呼ばれています。

2015-12-03 21:40:31
guicheng @guicheng

さきほど私は「地球に対する進入方向と速度により、その結果はかなり厳密に決まります。」と書きました。スイングバイでは、近地点前後では基本的に何もしません。しかし近地点付近でエンジンを吹かすとスイングバイの効果がさらに高まります。これが「のぞみ」が行った「パワースイングバイ」です。

2015-12-03 21:45:25
guicheng @guicheng

「のぞみ」はパワースイングバイの途中でエンジンにトラブルが発生し、途中で噴射が止まってしまいました。これにより「のぞみ」は、当初の計画では全く想定していなかった苦難の道を歩むことになります。吉川先生は「のぞみ」にも関わっていたそうですから、脳裏をかすめるものがあったことでしょう。

2015-12-03 21:49:36
guicheng @guicheng

その「のぞみ」と先代の「はやぶさ」は、地上のアンテナから完全にロストされてしまい、迷子の状態になった経験があります。いずれもその後見つかりましたが。今回の記者会見では電波を受信できない時間帯があったことについて何度か質問が出ていますが、おそらくこの経験を踏まえたものですね。

2015-12-03 21:54:00
guicheng @guicheng

しかし吉川先生からの解答にもあったとおり、「はやぶさ2」の通信不可時間帯は最初から計画されていたものです。「のぞみ」や「はやぶさ」はトラブルで迷子になりましたが、今回はこれらと全く異なる状態。管制室の皆さんは、いささかも心配をしていなかったものと思います。

2015-12-03 21:56:22
guicheng @guicheng

「はやぶさ2」は日本からハワイを経て南半球の方向に飛んでいきました。地球は丸いですから、臼田局(長野県)と内之浦局(鹿児島県)から見て、「はやぶさ2」は地平線の下に沈んでいきます。そしてキャンベラ局(オーストラリア)は地平線から上ってくる「はやぶさ2」をとらえることになります。

2015-12-03 21:59:23
guicheng @guicheng

「はやぶさ2」が臼田・内之浦(ともに日本)からもキャンベラ(オーストラリア)からも地平線の下にあった時間帯が20分間あったということですね。その間はキャンベラ局への引き継ぎをする設定変更をしていたわけで、当初の計画通り粛々と作業が進んだと思います。

2015-12-03 22:02:07
guicheng @guicheng

近地点通過後のキャンベラ局が予報された方向にアンテナを向けたら、「はやぶさ2」の電波を受信しました。これにより、「はやぶさ2」の軌道が大きく間違ってはいないことがわかります。しかし位置や速度はさらに厳密に決定する必要があります。でないと、今後の予定を立てられない。

2015-12-03 22:05:59
guicheng @guicheng

そのためには何回かに分けて「はやぶさ2」と通信をしてみて、その結果を積み重ねます。すると、「はやぶさ2」が今どこにいて、どの方向に、どの程度の速度で動いているか正確に決定できます。この積み重ねに1週間程度かかるというわけです。

2015-12-03 22:09:19
guicheng @guicheng

この後「はやぶさ2」は一路リュウグウへと向かいます。今後は軌道決定をした後、4月頃にはイオンエンジンを再点火し、2年半後の2018年夏にリュウグウに到着する予定です。そこに1年半滞在し、地球へ帰る軌道に変更します。地球には2020年末、今から5年後に戻ってくる予定です。

2015-12-03 22:12:41
guicheng @guicheng

以上です。長々と連ツイ、ご迷惑をおかけしました。

2015-12-03 22:13:19
guicheng @guicheng

スイングバイを実感するのにちょうどいいアニメーション twitter.com/TangentDay/sta…

2015-12-03 22:45:07