銀座『きよ田』の記録 1985-1987

Pochipress @pochipress

何か月も前に予約してしかも2交代制でおまかせのみ、お代は客単価3万5千円からの銀座の鮨屋というトレンドは自分には理解できません。最近は富裕層もずいぶんと冷遇されているんだなとしか思えなくてね。

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実は昔の銀座の鮨店の詳細な記録があるのだが、散逸せぬうちに公開しておくべきだなと思った。およそ1年半で50回近く通った店の名はしばらくは伏せておこう。さて

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1985年7月19日（金）昼過ぎ、暖簾は扉の内側に出ていると聞いていたのでそのまま入る。予約とかしていない。照明落としていて客はいない、タネケースに白布、口開けの客だ。まず麦茶が出され、粉茶が出る。主人現れた、若い。常連でも予約でもないのに普通に会話が始まった。

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ボート免許の実技で羽田沖に行った話をすると主人、横山隆一からボートの鍵を預かっていていつでも使っていいよと言われていると。ケースには活けのアワビ、アジ、エビ、イカ、アナゴにツマとウニのみ。シマアジはと聞くと嫌いなのでやらない。白身を出して来て、ヒラメではなくカレイと言う。

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ではそれをと握ってもらう。なんと言うべきか、美味しいと言えないくらいの旨さかな。アナゴは炙って、柚子おろしに当てた大ぶりの酢飯二貫に木の芽をのせて角皿で供された。アジ、アオリイカ。茹でエビは大きい。最後に赤身を頼んだら、硫酸紙に包んだブロックを出して来て、サク取りからはじめた。

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もちろん予約必須でお好みで注文は出来ないという評判の店で全部無視したわけだからそれなりの出費は覚悟していたけど、赤身でこんな見せ場作ってもらって出された三貫はもちろんすばらしかったさ。しかしお代は5,000円、まじか。主人出てこないのでごちそうさまと外に出たら、主人も出て来た。

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しばらく立ち話。8月の第2週ごろには新子が入りますと。それではぜひうかがいましょう。玉子焼きは芝エビが仔を持つので7～8月には作らないのだと。 深々と頭を下げる主人にお礼をのべて路地から出てゆくのにあんなに緊張したことはなかった、つまり負けた。

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1985年8月14日（水）この日新子目当てに再訪したら閉まっていたので「次郎」に入った。親方は常連と談笑中で、職人まかせ。のちに独立した水谷さんでしたが、スズキ、イカ、新子、エビ、アナゴ、たまご、蒸しあわび、中トロ、鉄火巻き〆て9,900円。特に感想はなし。

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1985年8月21日（水）予約して17:20~18:00まで。今日入った6,7年物の立派なわさびがカウンター後ろの応接テーブルに山盛りになっていた。席は中ほど、冷酒1本おまかせに。つまみはカレイ、新子、スミイカ、ゲソ、伊達巻き、白髪胡瓜に紅蓼。握りはトロから、カレイ、

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あなごは柚子がきついか。新子は2枚づけ、これはたまらぬ。ウニ。鉄火を頼むとトロで巻かれた。塩蒸し柚子味惜しいが美味い。トイレの洗面に青カエデの一枝が。〆て10,000円也。表で名刺を渡す、この11月で開店17年目だと。

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けっこう書き出すと大変だな、今日はここまで。

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深夜にひっそりと銀座の鮨の話の続き。

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1985年9月4日（水）3回目。予約13時から50分滞在。客4人すぐ帰る。 席は一番奥。赤貝本日解禁初入荷だが、まだ良くないと。ガリ黄味 帯びて容器変わる。おまかせに。いきなりのトロ4貫、スミイカ、 新子2枚づけ、カレイ、イクラ（生イクラ入荷）、ウニ（山葵）、

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再び新子（斜め2枚づけ）、アナゴ。主人と話す、夏の赤貝すべて韓国産、九州で蓄養長いほど 美味くなるが、ヒモだけは並べて見ると全然違う。タネケースの下 を見せてもらう、ガラスのすだれで仕切り、冷却パイプが通る。 台の上は3～4℃くらい。ゲソ（柚子）鮮烈で美味い。伊達巻き一切れ、

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伊達巻は握りにもするとのこと。塩蒸しあわびまだ出来ていないので生あわびで〆て10,000円お茶で。主人に齢を聞かれ、聞き返すと 昭和21年の戌と聞いて腰抜けるほど驚いた。修行して独立したわけではないと。 客からはよく美家古へ行ってみろと言われる、銀座の鮨屋に行ってもしょうがない。

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本場の赤貝はひとつ600円、東京では料理屋入れて10軒くらいしか扱っていないだろう。昨日まで台風のせいで魚高かった、ホシガレイが2万以上になった。現代の寿司の仕事の話の中で、ここは煮物に柚子がなくても美味しいと偉そうなことを言ってしまう。

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1985年9月11日。4回目。予約17:30席は中ほど。酒2本。つまみはスミイカ、 カレイ、額縁のしめ鯖、ゲソ（ツメ）、塩蒸し身と肝。お茶。トロは 先週よりすばらしく、桜色×2。赤身も×2。赤貝、スミイカ、サバは半身 を山葵と海苔ではさんだ酢飯をさらしに巻き簾で巻いて4つ切りに。

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これがまたすてきな味わいなんだ。今日のアナゴは柚子なしで出た。 新子、ひも。再びトロが出て鉄火巻きでおさめて13,000円。カウンターは10席、 洒落たおばあさま、ちょいとつまんでさっと帰る格好いい。 主人に、一人なら別に予約しなくてもなんとでもなりますと言われる。

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＊エビ、シャコなくなる。ケースにかんぴょうと伊達巻き見えず。 スミイカは酢飯に煮キリが塗ってあった、格別の味。タネケースの 中の赤貝は身の下にヒモを包むように置いてある。ヒモはすばらしいが、 身はまだ本領ではない。それでも格別の美味さではある。

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1985年9月25日（水）6回目。17:20-18:28 中ほど席。酒1本。つまみはなんとも言えない奄美のえんがわ、ゲソ、サバ、生イクラ、白髪大根。握りはトロ3貫からカレイ、赤貝、イカ、ウニ、小柱軍艦、サバ2貫、穴子（柚子）、ヒモ。海苔巻き（カンピョウ）とたまご頼んで終わり。

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12,000円。他の客は男性2人女性2人。主人にNSビル69番ブース、キクシマのディスプレーの件で愚痴。あす波除神社にお参りしますよ。カツオは5月の連休前後1週間くらいしか出さない。ケースにはアワビとタイラギあった。ヒラメはまだ身が薄くて使えない。赤貝先週が最高。外挨拶。

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1985年10月2日（水）7回目。18:15-19:20 予約いっぱいで、奥は取材か対談で使われている。なんとかあけてくれた。酒2本。つまにはサバ、イカ。握り桃色大トロ4貫、カレイ、スミイカ、ウニ。イクラは職人のみっちゃんの手で。ゲソ、穴子、大トロ2貫。

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ハマグリと活エビがあったので頼む。頭は焼いて出た。エビはいつもある。小柱はケースには出ない。辻邦生の連れが背後の応接セットに座っていたくらい混んでいたので食べ終わったらさっさと出た。12,000円、外での挨拶はなし。

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1985年10月16日（水）9回目。12:30-13:10。男性客2人（帝国ホテルの犬丸副社長だ）、若い女性1人。のち初めての男女。日曜の風吹いてからサバ入らない(大きいものしかない)ので新子置いている。小柱、アワビ2枚ありトコブシはない、ミル貝すこし。マグロ4貫、カレイ、イカ、

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赤貝、ウニ、ゲソ、アナゴ。追加でハマグリ、イカ柔肌のように美味、えんがわ、たまご、マグロ3貫。13,000円。一昨年は魚よかった。今年はサンマがいい、ひかりものいいときはマグロもよるので今年はいい。お茶運びの若い子正月は海外でサーフィン。年末は28日まで、正月明けは8日から。