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(21)これに関連して、有力者のために貴金属を加工する技能を持った職人も史料から確認できます(Od. 3.425-38; Hdt. 1.25.2; 1.51.3.)。
2015-12-22 01:29:12(22)神々への奉納についても言及しておきましょう。非常に古い事例ですと、ミケーネ時代の王国のひとつ、ピュロス王国から出土した線文字B粘土板文書から、当時の人々がポトニア女神など複数の女神に黄金の杯を奉納していたことがうかがえます(Tn 316)。
2015-12-22 01:30:01(23)また、アーケイック期には、オリュンピアのゼウス神殿(Paus. 5.2.3.)、デルフォイのアポロン神殿(Hdt. 1.14; 1.25; 1.50-51)、サモスのヘラ神殿(SEG 12.391.)に金銀が収められたなんて記述があります。
2015-12-22 01:33:11(24)ここが重要なところですが、奉納の場合、シキュオンからオリュンピアへ、またペリントスからサモスへといったように、【貴金属が長距離を移動する】こともあったようです。
2015-12-22 01:35:11(25)奉納に関してはもう一つ。ギリシア世界の出来事ではありませんが、フラウィウス・ヨセフスはイスラエル王ヨアシュ(在位前798-前782)が神殿修復の為、人々に銀の供出を求めたと伝えています(Josephus, Antiquitates Judaicae 9.191-5.)
2015-12-22 01:36:12(26)あとこの頃、リュディア王国で人類史上初の貨幣が作られました。若干の時を置いて、ギリシア世界でも貨幣が導入され、貴金属は貨幣に使用されるようになりました。 pic.twitter.com/l7Nb8G5oCo
2015-12-22 01:37:52(27)古典期になると文献史料も増えますから、いろいろなことが言えるようになります。お金持ちが蓄財をするケース、戦争による略奪・徴用・兵士への給与の支払いなどなど…。
2015-12-22 01:38:33(28)長くなったのでまとめましょう。イソップが生きた時代、貴金属は有力者間の贈与、時に長距離の移動を伴う奉納、威信財としての使用が史料から確認できます。古典期に比べると史料僅少の為、言えそうなことは少ないですが、アーケイック期には以上のような使われ方が行われていたのでしょう。
2015-12-22 01:39:38【主な参考文献】 ・岡田泰介「古典期ギリシアにおける貴金属の流通と戦争」『歴史学研究』(761) 19-33, 61頁 2002年 ・岡田泰介「古代ギリシアにおける戦争と貨幣」『古代文化』(54-1) 1-14頁 2002年 ・中務哲郎(訳)『イソップ寓話集』岩波文庫 1999年
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