「石田三成の青春」第８話　「思惑　石田三成襲撃事件」

松本匡代@早耳屋お花事件帳＆試衛館の青春＆独白新選組＆夕焼け土方歳三はゆく＆石田三成の青春 @mk106732

この時点で、はっきりと意識をしている者は少なかったと思うが、将来を考えれば、そこに行きつく。 #思惑

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家康とても、豊臣家を無理に滅ぼそうとは思っていない。それにもし、家康が秀頼に害を加えようとしたならば、今、家康に好意的な豊臣恩顧の者たちが一斉に反旗を翻すだろう。さしずめ今回の七将あたりが、真っ先に襲ってくるにちがいない。 #思惑

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それに家康も後世に謀反人という名を残したくない。できれば織田から豊臣への時のように、上手く事を運びたい。 #思惑

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しかし、当時とは、状況が違う。 信長は、まだ、天下統一を成し遂げてはいなかった。志半ばで凶刃に斃れた。秀吉は信長の志を受け継ぎ、天下統一を成し遂げた。今、少なくとも表面上は、豊臣公儀に反旗を翻す者はいない。 #思惑

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この状態での平和的な政権交代は難しい。 そしてその安定は、政権内に家康がいることに負っているという、家康にとってまことに皮肉な状態なのだ。 #思惑

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とはいえ、平和的な政権交代が絶対不可能かと言えば、そんなこともないだろう。 これから先、家康が安定した政を続け、粘り強く時間をかけて、多数派工作をしていけば、豊臣公儀から徳川公儀への移行が、諸将や諸士、民百姓に至るまで、自然に認識されるのではないか。 #思惑

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しかしそれには、しゃかりきになって豊臣公儀を守ろうとする三成のような人間は邪魔だ。 三成が、 「天下人は秀頼君」 　と叫ぶごとに、人々の意識に、薄れかけ、忘れかけた、豊臣公儀が蘇る。 　なんとかせねばと思っていたところ、今度の騒動が起きた。 #思惑

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騒動を起こした七将は、ただただ三成憎しの一念だけだ。前田利家という歯止めがなくなったのを機に、日ごろのうっぷんを晴らしたにすぎない。 　しかし、家康から見れば、自分の手を汚さずに、むしろ三成を助ける形で失脚させることができた。 #思惑

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七将たちをけしかけた覚えはないし、したがって、黒幕などと思われるのは、とんでもなく迷惑な話だが、 それにしても、何とも都合よく事を起こしてくれたものだ。 　三成のことを惜しい惜しいと言いながらも、知らず知らずに口元の綻ぶ家康だった。 #思惑

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「石田三成の青春｣　第８話 「思惑　石田三成襲撃事件」第７回 これにて終了です。 今宵もお付き合いくださり、どうも有難うございました。 明日も、どうぞお楽しみに！ #思惑

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お待たせいたしました。 「石田三成の青春」第８話 「思惑　石田三成襲撃事件」第８回 ぼちぼち始めさせていただきます。 #思惑 pic.twitter.com/jwkCYbxiTd

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（六） 　さて、いよいよこれからが勝負だ。 　家康、首を洗って待っておれ。 　三成は坂道を駕籠に揺られながら、家康に向かい、心の中で叫んでいた。 #思惑

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奉行職を解かれ国許・近江佐和山で隠居することになった三成は、伏見からの道中、七将に襲われる可能性もないわけではないと、家康の次男・結城秀康に護衛されて、逢坂山に差し掛かった。 #思惑

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駕籠に揺られて坂道を行く三成は、失脚したというのに敗北感は全くなかった。それどころか、仕事に忙殺されていた今までよりも、家康打倒の策を練るのに時間がとれると、その境遇を歓迎していた。 　三成は、駕籠の中で、もう、家康との決戦の時を考える。 #思惑

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総大将は、毛利か、上杉か。前田、宇喜多は、年齢的にも、石高からいっても無理がある。待てよ、上杉には国許で兵を上げ、挟み撃ちにしてもらう方がよい。すると、やはり毛利を総大将とするしかないか。 #思惑

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毛利には今度のことで裏切られた。しかし、そんなことはお構いなしだ。決戦の日までに、説得すればいいと考える。説得が失敗するなどということは、まるで考えていない。 失脚しての国許への道中。 石田三成、見事な自信だ。 #思惑

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あの馬鹿者どもが。 　自分の中で家康との決戦の総大将が決まった三成は、意識を七将に移した。 　うまく家康にまるめこまれやがって。 三成は、従五位下治部少輔と殿上人となった今でも、昔の仲間のことを思う時、つい当時の口調に戻ってしまう。 #思惑

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仲間？ あの連中が仲間なのだろうか？ ふと、三成は考える。 とんでもない。仲間なんかであるはずがない。宿敵だ。 たぶん、福島正則、加藤清正、蜂須賀家政、その他誰もが、吐き捨てるように言うだろう。 それは三成も同じだった。 あんな馬鹿どもとだけは、絶対に一緒にされたくはない #思惑

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太閤殿下のご恩も忘れて、家康ごときにしっぽをふって。 と、怒りと蔑み以外の何の感情もない。 しかし、ふいに何の脈絡もなく、少年の頃が蘇ることがある。 #思惑

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あの連中とはそりが合わず、喧嘩ばっかりしていたし、その喧嘩もやがてなくなり、いつの間にか、殆ど口もきかなくなった。 けれどもごく偶に、お互いの虫の居所がすこぶる良いときなど、一緒に菓子を食べながら、話をすることがあったのだ。 #思惑

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その時の話題と言えば、決まって、秀吉の偉大さと、そんな偉大な主人に仕えられる幸せ。そして、なんとしてもそのご恩に報いねばならぬというものだった。 　最後には、どちらが殿の御為を思っているかで言い争いになり。けんか別れに終わってしまう。そしてまた、何日も口をきかない。 #思惑

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そんな、日々を送っていた。 それは、大人になっても変わらない。 ただ、子供のころよりも、顔を合わせる回数が減り、言葉を交わすことは稀で、話し合うことは皆無になった。 #思惑

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ただ、三成は、彼らとの距離が、どれほど大きく開こうとも、彼らについて、 いちいち腹の立つ連中だが、太閤殿下と豊臣のお家を大切に思う気持ちは、自分のそれと比べても遜色はないはずだ それだけは信じている。 理屈ではない。秀吉のもとで成人したもの同士、それだけは、はっきりわかる #思惑

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だからこそ、 秀頼君の御為を思うなら、なんで家康なんかにつく。 歯痒く、腹立たしく、悔しい。 あの馬鹿どもめが。 結局いつも、そう吐き捨てて終わるのだ。 やはり戦い、斃さねばならぬか。 #思惑

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駕籠が三成の屋敷の前にとまった。 駕籠を降り、腰を伸ばした三成は、目の前に在る佐和山を見上げた。三成に過ぎたるものの一つと謳われる佐和山城が、威風堂々そこに在った。城を見つめ、三成は、 #思惑