イマニュエル・ウォーラーステイン『ヨーロッパ的普遍主義』

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田家 康 @tangeyasushi

社会学者のイマニュエル・ウォーラーステインが問いかける。他の地域・他の民族に干渉する権利をわれわれは有しているのだろうか?16世紀に新大陸を侵略した征服者は、野蛮な先住民に対するキリスト教普及は彼らの利益になるとした。(続)goo.gl/LuS21c

2015-10-27 20:27:34
田家 康 @tangeyasushi

(承前)19世紀に欧米列強はアジアの大国を植民地化した。その行為を正当化した理屈は、ヨーロッパ「文明」のみが「近代」を生み出したとし、他の高度文明はその発展の軌跡が凍結してしまい、外部の指導がなければ、どのみち近代へと自己を変革していくことはできないという見解であった。(続)

2015-10-27 20:28:12
田家 康 @tangeyasushi

(承前)第二次大戦後、干渉する側の錦の御旗は「人権」と「民主主義」になった。各国政府は、知識人やNGOから国外であっても人権を尊重すべしとの圧力を受けてきた。しかし、バルカンでもイラクでも、少数の人を救う行動が膨大な数の人々の苦難を招いているとの懸念は消えない。(続)

2015-10-27 20:28:43
田家 康 @tangeyasushi

(承前)かくして、干渉する側の正当性を担保するヨーロッパ的普遍主義にとって、最後にしてもっとも強力なものが科学的普遍主義となった。人文主義的な見解を反証可能性がないと退け、価値中立性を強調することで道徳的批判を希薄化したことは、結果として為政者にとって好ましかった。(続)

2015-10-27 20:29:42
田家 康 @tangeyasushi

(承前)しかし、ウォーラーステインは科学的普遍主義の権威が揺らいできたとみる。複雑性研究では、未来は線形ではなく不確実性が増しているとの認識がある。そして、価値中立的とは幻想であり、分析の責務・道徳的責務・政治的責務の三者は、単純には融合できず、同時に分離もできないという。(終)

2015-10-27 20:30:23