浜風の小さなクリスマスプレゼント

竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬい二次創作です。 今回は浜風のクリスマス時のお話。 ほのぼの小市民主婦な浜風の一幕と愉快な仲間の情景をお楽しみください。 続きを読む
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竹村京 @kyou_takemura

艦娘は軍人である以上、基地内での化粧は褒められたことではない。 「あくまでリップクリームやけ、堂々と使ったらええんよ」 とはいえ、若い女性のこと。この程度の抜け道はあるし、上官の方もある程度は見逃しているのだ。 「それもそうですね。じゃあ、これ買ってきます」#落ちぬい二次

2015-12-25 23:59:08
竹村京 @kyou_takemura

色付きリップクリームを一本だけ握りしめてレジに向かう浜風を、浦風は娘が初めての化粧をするのを見る母親のような目で見ていた。#落ちぬい二次

2015-12-25 23:59:40
竹村京 @kyou_takemura

そうこうしていると待ち合わせの時間になっていた。待ち合わせ場所の屋内噴水広場の前にはもう磯風と谷風が待っていた。 「お待たせ。ってどしたんね亮子?」 谷風はがっくりと肩を落としていた。亮子とは谷風の変名である。谷風だから谷亮子、という安直さである。#落ちぬい二次

2015-12-26 00:00:51
竹村京 @kyou_takemura

「まさかでっかいパフェ三つも食べるなんて思わなかったよ……」 「女子の本懐というやつだな!」 胸を張る磯風とうなだれる谷風が面白く、浦風と浜風は思わず笑ってしまった。 「もー、ひどいよー!おかげで欲しかった靴買えなかったんだかんねー!」 浜風は笑い涙をぬぐう。#落ちぬい二次

2015-12-26 00:03:23
竹村京 @kyou_takemura

「二人はもう買い物したの?」 「ああ。私はこれだ」 磯風が取り出したのは繊細な細工が施された小さなピアスだった。 「ホールがすぐに治ってしまうのが難点だが、このくらいは嗜みだからな」#落ちぬい二次

2015-12-26 00:04:21
竹村京 @kyou_takemura

「あたしはセクシーランジェ……」 「しまって!」 いかがわしいブツを堂々と衆目に晒そうとする少女型アラサーを手分けして取り押さえ、それをしっかりと荷物の一番奥に押し込んだ。#落ちぬい二次

2015-12-26 00:05:20
竹村京 @kyou_takemura

それからまだ何も買っていなかった浦風と一緒に雑貨屋を何件か回った。浦風は季節もののスノーグローブを、他の三人もめいめいに小物などを買っていた。 その後、モールの片隅にある落ち着いた雰囲気のカフェで休憩する。それぞれの前にはコーヒーとケーキが並んでいた。#落ちぬい二次

2015-12-26 00:06:57
竹村京 @kyou_takemura

「そういえばピアスなんてしてましたっけ?」 浜風が問う。磯風の容姿は整っているが、あまり飾り気はなくアクセサリーもほとんど持っていなかったはずだ。 「ついこの間からだな」 そう言って髪をかき上げると、耳たぶには透明のピアスが付けられていた。#落ちぬい二次

2015-12-26 00:07:52
竹村京 @kyou_takemura

「ちょっと意外だね。なんかあった?」 興味津々に谷風。 「提督のやつがな。私を女として見ないんだ」 「ふんふん」 「私だって女だ、洒落たレストランで食事というものに憧れくらいある」 「そんで?」 段々と盛り上がってきたとばかりに谷風は身を乗り出す。#落ちぬい二次

2015-12-26 00:08:56
竹村京 @kyou_takemura

「外食に誘われて少しばかり、ああ、少しばかりだが浮かれていたのに、着いてみればデカ盛りの店だぞ!信じられるか?」 あー、と浜風。 「だから決めたんだ。意地でもあの提督に私を女として意識させてやる!」#落ちぬい二次

2015-12-26 00:10:04
竹村京 @kyou_takemura

「悪気はなかったんですよね?」 「ああ、だからこそタチが悪い。ナチュラルにこの私を男扱いしていたんだからな」 むふん、と思い出し憤慨をして腕を組む磯風。 「ほんで、もし提督さんが女として意識してくれたらどうするん?」#落ちぬい二次

2015-12-26 00:12:00
竹村京 @kyou_takemura

「さあ、その時はその時だ。こっぴどく振ってやったら面白そうだとは思うぞ」 「でもちゃんとしたレストラン連れてってもらったんでしょ? いーなー、あたしなんか牛丼屋だよ?」 「それは仕方なかろう」 「ひどーい!」#落ちぬい二次

2015-12-26 00:13:56
竹村京 @kyou_takemura

ぷんすこぷんすこ、という効果音が聞こえそうなほど大げさに怒りを表現する谷風を放って磯風が続ける。 「だがまあ私に靡くならその時は里美に捨てられた駄目男という事だろう。そんな燃えないゴミを拾うほど私は寛容じゃないさ」#落ちぬい二次

2015-12-26 00:15:11
竹村京 @kyou_takemura

「つまり、提督さんを燃えないゴミにはしたいけどゴミ拾いはしたくない、てゆーこと?」 「そうなるな」 「ほんと、根に持つねえ」 「女子だからな」#落ちぬい二次

2015-12-26 00:16:50
竹村京 @kyou_takemura

静かにカップを口に運ぶ磯風は同性から見てもまるで完璧なお嬢様のようで、浜風は少し不安になりつつ精一杯お上品な仕草を心がけながらコーヒーを飲んで、思いっきりむせたのだった。#落ちぬい二次

2015-12-26 00:18:20
竹村京 @kyou_takemura

四人が基地に帰ったのは日が落ちてからだった。ゲートを通ると、すぐ脇の詰所にいた青年が駆け寄ってきた。北原という男である。 「お帰りなさい、浜風さん!」 「ただいまです、北原士長」#落ちぬい二次

2015-12-26 00:19:39
竹村京 @kyou_takemura

「北原さん、うちらもおるよ?」 「あ、浦風さん、磯風さん、あと谷風さんもお帰りなさい」 からかわれて少し赤くなる北原に、浜風はショッピングバッグから引っ張り出した小さな袋を突き出す。 「はい、メリークリスマスです」 「え?」#落ちぬい二次

2015-12-26 00:21:03
竹村京 @kyou_takemura

いきなり目の前に差し出された手の平サイズの袋を見て、北原は戸惑う。 「プレゼントです。いつもよくしてもらってるので」 「俺に、ですか?」 「です」 北原は恐る恐る袋の下に両手を差し出す。そこへ、ぽすん、と袋が載せられた。#落ちぬい二次

2015-12-26 00:22:45
竹村京 @kyou_takemura

「あっ、あ……ありがとうございます!」 おやすみなさい、と挨拶をして四人が去ると、北原の「やったあああああああ!!!」という絶叫がこだました。それを聞いて浦風はくすくすと笑う。#落ちぬい二次

2015-12-26 00:23:54
竹村京 @kyou_takemura

「浜風はわるい女になるかもねえ」 「友達にプレゼントするのが、悪い女なの?」 「そーゆーとこがわるい女の素質なんよ」 「魔性の女ってやつかもね。ま、このあたしには勝てないけどね!」#落ちぬい二次

2015-12-26 00:25:13
竹村京 @kyou_takemura

以前、浜風は北原士長に交際を申し込まれた事があるが、それはすっぱり断って今では立派な友人である。少なくとも浜風はそのつもりでいる。だがもちろん北原は諦めておらず、浜風に見合う男になるべくまずは昇任試験に向けて努力を続けているのだ。#落ちぬい二次

2015-12-26 00:26:52
竹村京 @kyou_takemura

そんな未練たらたらの片思い男に憧れの女性がプレゼントを贈ったらどうなるか。プレゼントは500円の小さなぬいぐるみキーホルダーだとしても、それは北原にとって何物にも替えがたい聖遺物である。#落ちぬい二次

2015-12-26 00:28:00
竹村京 @kyou_takemura

「雪風と不知火さんにも色違いのをあげるんだけどな……」 北原士長の大はしゃぎは何事かとすっ飛んできた先任伍長に拳骨を喰らうまで続いたのだった。#落ちぬい二次

2015-12-26 00:29:20
竹村京 @kyou_takemura

寮に戻って入浴し、十七駆で一緒に食堂で夕食を摂る。着任直後の失敗もあって自炊が習慣になっている浜風だが、十七駆のメンバーと一緒であれば食堂を利用することが多くなってきていた。#落ちぬい二次

2015-12-26 00:38:03
竹村京 @kyou_takemura

食後はもと司令官公室、現磯風たちの部屋でささやかなクリスマスプレゼントの交換会をする。プレゼントといっても各自がお金を出し合って浦風に選んでもらったものをシャッフルして受け取るだけだったが、どれも浦風のセンスが光るものだった。#落ちぬい二次

2015-12-26 00:39:23