戦車工学詳解IIを読みつつWarThunder陸を少しひっかいたりしてるのですが、WT始めた人が「戦車が滑る!」とやたらに言う理由がなんとなく判った気がする。もしかすると実態以上に滑りやすく設定されてるかもだけど、それ以上にクラッチ・ブレーキな操向装置の操作感が不慣れなものなんだ
2015-12-27 00:52:06戦車は自動車と違って車輪の向きを変える事ができないんで、左右履帯に回転速度差をつける事で旋回を行う。この回転速度差を自由に変えられれば、自動車めいた無段半径旋回は可能になる。けれど、一つのエンジンからの出力を任意の回転速度差を持つ2つの出力として分ける、なーんて機構は案外に面倒で
2015-12-27 01:10:09だから戦間期~大戦期の一部あたりの戦車では、片側履帯の動力を切って、さらにそちら側だけブレーキをかける事で旋回する操向装置が用いられました。構成要素を取ってクラッチ・ブレーキ式とか呼んだりします。とても単純であるし、そのくせ馬力の小さい車両にも向いてるってんで、よく使われました
2015-12-27 01:15:23しかし……考えてもみましょ。世には遠心力という物があります。普通の自動車でも、タイヤの粘着力を上回るような遠心力が生じるような小回りをしようとすれば、横滑りする事になります。速度が大きい状態でハンドルをあまりに急に切ればそんな事になる。これは直感的にも明らかです
2015-12-27 01:22:38ところで、戦車ではハンドルの代わりに、左右履帯の回転速度差によって旋回半径が選ばれる。ではクラッチ・ブレーキ式でこれは実際どういう事になるか。片側履帯の動力を切ってブレーキを掛ければ、回転差が生じる。これで旋回が始まる。ではそのままブレーキをかけ続けると、一体どういう事になるか?
2015-12-27 01:27:56旋回内側の履帯にブレーキを掛け続けると、これはどんどん減速する。外側履帯との回転数差は増大していく。つまり旋回半径の選択を一層小さくして行く事になる。自動車で言えば、これはハンドルをさらに急角度へと回して行く操作に相当する。ハンドルを一定角で切ったままにする操作、ではないのです
2015-12-27 01:32:33自動車でそのような操作をすれば、走行速度次第ではいずれかの時点でタイヤの粘着力が遠心力に打ち勝てなくなり、車は横滑りを始め、あるいは制御不能のスピンに陥ります。では戦車はそのような事を起こし得るか? あんなに重い戦車が? 面積の広い履帯で地面に張り付いているように見える戦車が?
2015-12-27 01:41:06さて遠心力とは慣性ですから、当然ながら超重い戦車には超大きな遠心力が働く事になります。重いから滑らないように思われる戦車ですが、実際その重さは巨大な遠心力として戦車を外側に滑らせようと働いてしまう。となれば普通の自動車の場合と同様、いずれかの時点で履帯の粘着力はこれに負けるかもで
2015-12-27 01:50:27@FHSWman 戦車は履帯のおかげで接地圧低いでしょ。一般論としていうとタイヤのグリップ力って面圧の二乗根なんで、接地圧低いと滑るんですわね。しかも履帯はタイヤより硬い地面だと食いつかないでしょうし
2015-12-27 01:52:23. @sudo_simoigusa それもまさに……摩擦面が広くなるから滑りにくくなる、みたいなイメージを直感的に持っちゃう人もあるかも知れませんが、そういう事にはならん訳ですね
2015-12-27 01:58:18@FHSWman 面積ほどには大きくないですよね。乱暴に計算して重量30倍で面積100倍、面圧で半減でグリップ力は50倍(重量あたりだと1.7倍)ぐらいになるかな。遠心力に対してなら1.3倍の速度で滑り出すかも(履帯とタイヤで粘着力同じなら)
2015-12-27 02:01:49そういうわけで、戦車もやっぱり横滑りして制御不能のスピンに陥り得るんですわね。これを防ぎたいなら、走行速度に対してあまり小さな旋回半径を選択してはならない。左右履帯の回転数差をあまり大きくしてはならないという事で、つまり高速走行中には操向レバーを強く長く引き続けてはならんのです
2015-12-27 02:01:33結局のところ「急ハンドルをすると滑るぞ」というだけの話なんですが。ただ戦車の場合、ハンドルの旋回角度(というか前輪の操向角度)に相当するものが何であるのか直感的にわかりにくい。だから不慣れなプレイヤーは知らずに急に切ってしまいがちなのでは……という気がしたのです
2015-12-27 02:05:02. @sudo_simoigusa とどのつまり、起きてる現象としては自動車で俯角ハンドル切っての横滑りと似たようなものでしょうからね。これをうまく活かせば戦車だって格好良くドリフトも出来るってものです(履帯が切れなければ!)
2015-12-27 02:10:06実の所車のドリフトもどういう理屈で制御してるのかよく分かっていなあので分からないが、戦車が横滑りし出した時にそれを制御する事って出来るんだろうか
2015-12-27 02:13:57@_morokko_ 旋回外側の履帯も速度を落としてやると車でいう逆ハンドル切る事に相当しますから、ある程度の段階までなら制御を取り戻せるかも知れません。行き過ぎるとどうにもならないスピンになるのは、戦車も同じっぽいですね
2015-12-27 02:18:14ところでクラッチ・ブレーキ式に限ったような話をしましたが、他の方式の操向装置でも小さすぎる旋回半径を選択すれば同じ事になります。例えば大戦期米軍戦車が主用したクレトラック式では、ブレーキを完全にかけた状態の旋回半径は数m程度になる。クラッチ・ブレーキの信地旋回とそう変わりません
2015-12-27 02:08:08そもクレトラックとは、元々こんな装軌牽引車がこういう機動を出来るように作られた装置であるのです。高速走行中にこの半径で回ろうとしたら、そりゃ滑ります youtube.com/watch?v=rnOXkr…
2015-12-27 02:14:51ちいと余談ですがクレトラックの内部はこんな感じ。ブレーキをかけた側の履帯が減速し、反対側がその分増速します(差動機めいて働くのです)。片側履帯の完全停止は機構上できないので信地旋回はサポートされず、自動車めいて最少旋回半径があります youtube.com/watch?v=gxfeXA…
2015-12-27 02:24:10とまあそんな話を、Fleet Girl ArchitectsさんのC88本「戦車工学詳解II」を読みつつWTやってたら思いついた訳なのです。この本ではもうちょっと込み入った解説がされてて、実際超面白いのです。IIでは旋回だけでなく横転とか超堤という問題も扱われております
2015-12-27 02:28:32数式めいた何かも出てきますが、この式は実世界でのどういう事を言っておるのかという事も解説してくれるので、数学的なんかがサッパリな私でも実際読み進められます。さらに式の他に実験定数の類も載ってるので、数学的なんかに自信がある人は自分で計算して遊んだり出来て一層楽しいかも知れません
2015-12-27 02:33:39M3A1 Stuart TANK DRIFT ENGINE SOUND PANZER FARM youtu.be/bMEZIFzgrow @YouTubeさんから M3スチュアートが滑ってますね
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