ギガベース日誌 ACT06「SEA OF BLOOD」 02

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すふん @suhn_Akvavit

谷風は困惑した。 オーメルに保護された艦娘達が連れて来られた場所は、紛れも無い、あの横須賀第一軍港の巨大な地下施設であった。 ボロボロになった提督を抱きかかえながら、谷風は言われるがままに施設の奥へと案内されていった。 #ギガベース日誌

2014-08-29 23:09:25
すふん @suhn_Akvavit

以前谷風と提督が入った場所より更に奥深く、まるで何かを隠そうとするかのような深さに、その施設はあった。 入口の真上には、どこか見覚えのあるロゴマークが。そして大扉の横には、冷たそうな鉄板にこう記されていた。 『Aspina』と。 #ギガベース日誌

2014-08-29 23:14:02
すふん @suhn_Akvavit

それを見た隼鷹が、驚きを隠せないといった表情を露わにし叫んだ。 「アスピナ?!どうして!壊滅したはずじゃ……?!」 アスピナ機関。かつてオーメルサイエンス直下にあった研究機関であり、ネクスト操縦システムAMS関連の雄であった組織である。 #ギガベース日誌

2015-12-29 20:13:09
すふん @suhn_Akvavit

言われてみれば、入口の真上に掲げられていたロゴは、アスピナ機関のそれであった。 しかし、隼鷹の言う通りアスピナ機関は壊滅した。2,3年前、突如現れた不明ネクストと第二世代ノーマルに本部を徹底的に破壊されたのだ。アスピナ壊滅の情報は全世界に瞬く間に広がった。 #ギガベース日誌

2014-08-29 23:31:34
すふん @suhn_Akvavit

「君達の言う通りだ。確かにアスピナは一度壊滅した。だが、アスピナの技術はありとあらゆる方法で受け継がれ、保護され、進化し続けている。本部が機能しなくなった程度で、どうという事は無いのだよ」 彼女達の前に現れた白衣の研究員は淡々と告げた。 #ギガベース日誌

2014-08-29 23:38:26
すふん @suhn_Akvavit

「自己紹介が遅れたな。アスピナ機関主任研究員、サウード・マクトゥームだ。単刀直入に言わせてもらう。君達と君達の提督には我々の研究の為の被検体になってもらう」 訳が分からなかった。いきなり壊滅した筈の機関に連れて来られたかと思えば、被検体になれと言われたのだ。 #ギガベース日誌

2014-08-29 23:43:08
すふん @suhn_Akvavit

「ちょ、ちょっと待ってくれ。話が読めない。そもそも、どうして横須賀の地下にアスピナ機関の本部があるんだ」 日向の質問に対し、サウードは変わらない調子で返す。 「横須賀は艦娘研究の最先端にある。我々としても、本部を移すのに都合がよかったのだよ」 #ギガベース日誌

2014-08-29 23:45:56
すふん @suhn_Akvavit

アスピナが艦娘の研究をしているなんて、聞いた事も無かった。日向が続けて質問をする。 「じゃあ、どうしてこんな戦争が起こった直後にこんな……。なんで私達が被検体なんだ。どうして……」 日向は頭を抱えていた。無理も無かった。 #ギガベース日誌

2014-08-29 23:50:27
すふん @suhn_Akvavit

「いいさ。君達の気持ちはわかる。全て包み隠さず話そう。まず一つ。海軍解体戦争は、我々の研究に海軍の一部が介入を試みた事が発端となって勃発した。民間提督に対して出された特攻じみた命令は、表向きの開戦の理由を彼等の救済とする為のものだ」 #ギガベース日誌

2014-08-29 23:53:14
すふん @suhn_Akvavit

「彼等は知りすぎたんだ。この戦争は一部の知りすぎた連中を消す為に起きたに過ぎない。横須賀が有していた高度な艦娘技術の全ては、既に我々に引き継がれた。よって、地表が吹き飛ぼうが何の問題も無い。超重力砲には驚かされたがね。あれを失ってしまったのは残念だ」 #ギガベース日誌

2014-08-29 23:58:28
すふん @suhn_Akvavit

「次に、君達を被検体として選んだ理由を説明しよう。我々の研究に艦娘が必須だが、普通の艦娘では駄目だった。君達のような、高い練度と優秀な提督を持つ艦娘と、提督本人が必要だった。君達以外にもかなりの数の候補を調査したが、我らが要求する水準を満たすのは君達だけだった」 #ギガベース日誌

2014-08-30 00:07:35
すふん @suhn_Akvavit

そこは、新しい地獄だった。 彼女達と提督は切り離され、毎日毎日実験の日々が続いた。 実験の過程で力尽き、動けなくなった艦娘は、容赦無く『処分』された。 28隻いた艦娘は、瞬く間に減っていった。 #ギガベース日誌

2014-08-30 00:13:00
すふん @suhn_Akvavit

谷風は幸運だった。 彼女の艦隊の中でも最も高いAMS適性を持ち合わせていた彼女は、アスピナから課せられた拷問のような実験を、全て難なくこなす事が可能だった。 #ギガベース日誌

2014-08-30 00:15:43
すふん @suhn_Akvavit

ある日、サウードは谷風を呼び出した。 提督に会わせてくれると、彼は言った。冷え切っていた谷風の心に一筋の光が差し込んだようであった。 「提督は、提督は元気なのかい?」 「ああ。それなり以上のAMS適性を持ち合わせていたおかげで、我々の要求にも難なく答えてくれた」 #ギガベース日誌

2014-08-30 00:20:42
すふん @suhn_Akvavit

谷風は想像した。自分に笑顔を向け、両腕で抱きしめてくれる提督の姿を。 昔のように、自分の頭を撫でてくれると。 #ギガベース日誌

2014-08-30 00:26:00
すふん @suhn_Akvavit

だが、現実は谷風の想像していたものとは違った。 #ギガベース日誌

2014-08-30 00:26:12
すふん @suhn_Akvavit

「何だよ、これ」 谷風が連れて来られた場所は、ネクスト用の格納庫だった。サウードはそこに鎮座していたネクストを指し、君達の提督だと述べた。 「これに、提督が乗ってるのか」 「いいや、違う。この機体そのものが、君達の提督だ」 #ギガベース日誌

2014-08-30 00:28:42
すふん @suhn_Akvavit

意味が分からない。狂ったのは自分か、サウードか、それとも世界か。 「彼女の肉体と精神はボロボロだった。我々が助けなければ、どちらかが先に死を迎えていただろう」 「なあ、変な事言うなよ。今の谷風さんに冗談通じないぞ、おい」 「だから、我々は彼女にある措置を施した」 #ギガベース日誌

2014-08-30 00:33:53
すふん @suhn_Akvavit

「ファンタズマビーイングと言ってな。人間の精神を完全に電子化させ、肉体という呪縛から解放する手法がある。我々は、間霧叶の精神を電子化、調整し、この機体に搭載した」 「はあっ……?!」 ますます意味が分からない。 #ギガベース日誌

2014-08-30 00:38:30
すふん @suhn_Akvavit

「あんた、冗談きついよ……!いつもこんなふざけた事言わないじゃないかよ!嫌がらせならやめろってんだよ!」 「どうしてそう思う。私が君に、君達に嘘をついた事があるか?」 「だって!人間を、精神を電子化させるなんて、そんな事できるわけ!」 #ギガベース日誌

2014-08-30 00:40:06
すふん @suhn_Akvavit

「どうしてそう思う?既に何回もやっているんだぞ?」 「は……」 「ジョシュア・オブライエン。マクシミリアン・テルミドール。ベルリオーズ。ザンニ。P・ダム。アンシール。サーダナ。アマジーグ。ユージン・ウォルコット。フランシスカ・ウォルコット」 #ギガベース日誌

2014-08-30 00:47:36
すふん @suhn_Akvavit

「全員のクローンを製造し、その教育、洗脳、電子化に成功している。今更一人や二人、電子化するなど訳ない。日本語で言うなら朝飯前ってやつだ。人工的に天才を創り出し、秩序を破壊するイレギュラーに対処する。それが、我等の、アスピナの、世界の意思だ」 #ギガベース日誌

2014-08-30 00:55:40
すふん @suhn_Akvavit

「ああ忘れてた。現ランク1、リリウム・ウォルコットも我々が製造したファンタズマビーイングだ。君達の提督も、人智を超越した存在の仲間い」 「お前えええええええええええええええええええっ!!!!!!!!!!!!!!!」 谷風はサウードに飛びかかった。 #ギガベース日誌

2014-08-30 01:03:45
すふん @suhn_Akvavit

サウードは眉一つ動かさず、谷風を受け流した。その時、格納庫内にノイズ交じりの音声が響いた。 「やめなさい、谷風」 「……え?」 谷風は顔を持ち上げる。忘れもしない、提督の声だった。 #ギガベース日誌

2014-08-30 01:13:56
すふん @suhn_Akvavit

その漆黒の機体から発せられた声は、落ち着いた様子で谷風に告げた。 「大丈夫よ、谷風。私はここにいるから」 #ギガベース日誌

2014-08-30 01:16:08
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